ブプレノルフィン新製剤承認およびオピオイド依存症治療薬の改革と利用促進
FDA長官Scott Gottlieb医師の声明
速報
本日、オピオイド使用障害の治療に対するブプレノルフィンの月1回投与製剤が承認された。これにより、患者は長時間作用が持続する新たなオピオイド依存症治療薬の利用が可能になる。数百万人もの米国人がオピオイド依存に苦しみ、さらにそれを上回る数の人々が、過剰摂取の蔓延によって友人や大切な人の命が奪われるのではないかと危惧している。オピオイド使用障害患者が通常の生活に戻れるように、われわれは直ちに行動を起こさなければならない。
質の高い、有効な治療を広く利用できるようにすることが急務である。薬物中毒・オピオイド危機に対する大統領諮問委員会は、薬物療法を含むオピオイド依存症の治療が、「過剰摂取による死亡の減少、治療の継続、ヘロイン使用の減少、再発の減少、および感染症の拡大防止と関連する」ことを明らかにした。
オピオイド依存に対する薬物補助療法(MAT)は、薬物を用いて脳内物質を安定化し、オピオイドの陶酔効果を低減または阻害し、生理的な渇望を軽減し、身体機能を正常化する。オピオイド依存の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)が承認している薬物は、ブプレノルフィン、メサドンおよびナルトレキソンの3つである。これら3つの治療薬はすべて、カウンセリングや心理社会的支援を併用することで安全かつ有効に使用できることが証明されている。オピオイド使用障害の治療を希望するすべての人が、これら3つの選択肢を利用できるようにすべきである。そうすることで、治療提供者は患者と連携し、患者個々のニーズに最も即した治療薬を選択することができる。
FDAは何よりもまず、新薬承認の任務を通してオピオイド依存の薬物療法に重要な役割を果たす。しかし、蔓延の規模を考えれば、これだけにとどまらないさらなる取り組みが必要である。FDAの公衆衛生上の権限と危機の重大性を踏まえ、これらの安全で有効な薬物が、広く、適切に使用されるように後押ししなければならない。FDAは、これらの取り組みを推進するために新しい対策を講じることを表明する。
新たな治療薬の開発を促進
FDAは、オピオイド使用障害の治療に用いる新薬と、患者個々のニーズに即した既存薬の新しい剤形の開発を促進するため、対策を講じている。同時に、他の保健機関と連携し、包括的治療プログラムの一環としてこれらの薬物が広く導入されるように積極的な支援を行っている。
既存のMATの新しい剤形と新薬の開発を同時に支援するため、FDAは二つの手引き文書を発行する予定である。一つは、オピオイド依存に対するブプレノルフィンの徐放性製剤の承認に関するFDAの最新ガイドラインを詳述したものである。もう一つは、これらのガイドラインを展開し、より良い治療薬の開発を促す追加の評価項目をいかにして確立するかについて述べたものである。
これらの手引き文書の中で、二つの新たな指針を示す予定である。この指針は、新たなMATの開発をより効率的に進めるための道筋を提供すると考えられる。
新しい手引きでは、曝露量を、既存薬を新たに改良した長時間作用型製剤の安全性および利益につなげるための枠組みを提供する。モデル化とシミュレーション技術に多くの投資を行い、その治療効果を証明することにより、改良製剤の承認に向けた新たな枠組みの開発が促進されると考える。
次に、FDAは、製品承認の基盤となる新たな臨床評価項目の開発を促す枠組みを提供する。たとえば、依存治療に関連する評価項目の一つに、薬物の持続的な使用を引き起こす渇望がある。渇望は、FDAが禁煙製品の添付文書に記載している評価項目の一つであるが、違法オピオイドに対する「渇望」または「使用したいという衝動」の測定に有効な方法の開発を支援することで他の評価項目を補完し、自制の持続という目標を反映しているかどうか評価する予定である。
有効な治療薬の幅広い適用を促進
残念なことに、適切な薬物治療の機会が提供されているオピオイド依存患者はあまりにも少ない。その理由の一つには、民間保険の薬物療法への補償が不十分なことがあげられる。何らかの治療を利用できる人であっても、FDAが承認した依存治療薬を利用することはきわめてむずかしい。公的保険制度では、新たな法律や資源によって補償の対象範囲を広げる州が増えてきてはいるが、まだ多くの州はFDAが承認した3つの依存治療薬すべてを対象にしていない。
この治療格差の解消に向け、FDAはいくつかの対策を講じている。まず、専門家や利害関係者を招集し、治療薬の集団レベルでの利益を示すエビデンスを検討する。たとえば、治療薬の利用が広がることで地域全体の過剰摂取が減少することを示した研究などを検討する。MATの利益を示すエビデンスの土台はすでに堅牢だが、FDAは特に、適応症の拡大、さらには保険の補償範囲の拡大にもつながるような研究を重視する。FDAが策定を進めているプロトコルでは、ポイントオブケア、すなわち患者に過剰摂取がみられた時点でMATが利用できるように支援することを目指す。これにより、集団全体の死亡を減少させることができる。
これは、FDAにとって初の試みである。
この考え方には、保険の補償範囲の拡大に加え、救命治療への確実なアクセスが緊急に求められていることが反映されている。
たとえば、驚くべきことに、この3つの治療薬を選択肢に含む治療を、それを必要としている拘留中の全患者に対して定期的に提供する刑事司法制度はほとんど存在しない。結果として、刑事司法制度が過剰摂取のリスクを劇的に減らすことができる絶好の機会にオピオイド耐性の低下した状態を作り出し、釈放と同時に死亡リスクが大きく上昇する。大統領諮問委員会は、この失敗に終止符を打つよう適切に勧告した。
また、FDAは承認済みの治療薬について現行の添付文書を再評価し、利用可能な科学が反映されているか確認を行っている。関心領域の一つが使用期間である。臨床的なエビデンスによると、持続的な回復を達成するためには長期間の薬物療法が必要となる可能性がある。一部の患者では、一生涯の治療が必要になる。最近、FDAは、ブプレノルフィン製品の添付文書を改訂し、この内容を反映させた。同様に他の二つの薬物についても添付文書の評価を行っている。
最後に、MATの利用拡大を促進するため、FDAはこれらの製品の使用にまつわる悪いイメージを払拭する措置を引き続き講じていく。治療薬の適切な使用を促進することは、FDAに与えられた公衆衛生上の権限の一つである。
これらの製品の特性をめぐる誤解は、医療分野や依存症分野においてさえ、使用への悪いイメージを植え付けている。このような悪いイメージは、通常の生活に復帰したいと望んでいる患者の目標達成を阻み続けることになる。公衆衛生上の危機にある今、薬物補助療法をめぐる固定観念を打破するため、FDAはより積極的な役割を果たす義務がある。
この悪いイメージは、患者が完全に回復した状態にあっても、病気の治療に薬物を必要とするため、依存によって苦しんでいるとする一部の見方を反映している。 この見方は、身体依存と精神依存の違いに対する大きな誤解から生じている。人体は生物学的に、有効量のオピオイドをわずかな期間使用すると誰でも身体依存を生じる。これは、薬物の使用を中止すると離脱症状が起こることを意味する。転移部痛に対する適切な治療としてオピオイドの長期投与を必要とするがん患者でも、オピオイド治療に対する身体依存が形成される。オピオイドに対する身体依存は、オピオイドに対する精神依存とはまったく異なる。
精神依存は、生命に有害な影響があるにもかかわらず、オピオイドを継続して使用することを欲求する状態である。精神依存では、身体依存を越えたオピオイドの入手および使用に対する没頭が認められる。しかし、痛みの治療の結果としてオピオイドに対する身体依存が形成されてたとしても、オピオイドに対する渇望がみられなければ精神依存ではない。オピオイド依存の治療薬、つまり置換療法にも同じ原則が当てはまる。オピオイド依存に対し長期の薬物療法(オピオイド部分または完全作動薬で、身体依存を形成し得る薬物を含む)が必要な患者は、これらの薬物に対する精神依存ではない。
今回の承認は、オピオイド依存患者の治療選択肢を広げる第一歩となる。FDAは、処方が適切かつエビデンスに基づいた臨床的検討を慎重に反映しているかを確認する対策を通じて、オピオイド製剤への曝露を制限する措置を講じることを表明している。われわれはFDAには、現在の処方に影響を及ぼすことで新たな依存患者の発生を減らすという大きな責務があると信じている。われわれは、オピオイド依存に対する新規治療薬の創出に向けたさらなる製品開発を歓迎し、そのような治療薬はFDAの迅速承認制度の適用対象となる。
しかし、現在非常に多くの人がオピオイド依存に陥っていることから、FDAは、救命治療を直ちに必要とする人の支援にも同じように力を注いでいる。具体的には、新しい形のMATと既承認薬の改良された製剤の開発を促進する取り組みである。関連する社会福祉、医療および精神衛生サービスを併用したMATが広く利用されるようになれば、利用可能なオピオイド依存治療法の中で最も有効な方法になる可能性が高い。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
FDAニュースに関連する記事
FDAが標的IDH1/2変異のあるグレード2星細胞腫または乏突起膠腫にボラシデニブを承認
2024年9月25日
FDAが、非小細胞肺がんにラゼルチニブとアミバンタマブ併用を承認
2024年9月4日
FDAが切除不能/転移性滑膜肉腫にアファミトレスゲン オートルーセルを迅速承認
2024年8月5日
FDAが再発/難治性のBRAF変異陽性小児低悪性度神経膠腫にトボラフェニブを迅速承認
2024年5月12日