FDAが化学療法による悪心・嘔吐の予防にrolapitantを承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

米国食品医薬品局(FDA)は、9月2日、化学療法誘発性の遅発性悪心・嘔吐を予防するrolapitant(商品名:Varubi)を承認した。Rolapitantは、嘔吐を誘発する(催嘔吐性、高度催嘔吐性の)初期または反復のがん化学療法による悪心・嘔吐を予防する薬剤(制吐剤)との併用が認められ、使用は成人に限られる。

悪心・嘔吐は、化学療法中のがん患者が経験する一般的な副作用である。症状は、化学療法の薬剤投与後、何日間か持続する場合もある。化学療法開始後24時間以上120時間以内に発現した悪心・嘔吐は遅発性とされ、重篤な合併症を引き起こす可能性がある。がん患者で悪心や嘔吐が長引くと、体重減少、脱水、栄養不良につながり、入院に至ることもある。

FDA医薬品評価研究センターの医薬品評価Ⅲ副室長のAmy Egan医師(公衆衛生学修士)は、「化学療法誘発性の悪心・嘔吐は依然として大きな問題であり、患者の生活や治療を妨げる場合があります。今回の承認は、がん患者に対し、化学療法による遅発性の悪心・嘔吐を予防する新たな選択肢を提供することになります」と述べている。

Rolapitantは、サブスタンスP/NK-1受容体拮抗薬である。NK-1受容体の活性化は、特定のがん化学療法の特に遅発期に発現する悪心・嘔吐において中心的な役割を担う。Rolapitantは錠剤で提供される。

Rolapitantの安全性と有効性は、3つの二重盲検ランダム化対照臨床試験で立証された。試験では、高度催吐性の化学療法剤(シスプラチンとアントラサイクリン+シクロホスファミドの併用など)および中等度催吐性の化学療法剤を受けた2800人の患者を対象に、rolapitantとグラニセトロン+デキサメタゾンの併用と対照治療(プラセボとグラニセトロン+デキサメタゾンの併用)とを比較した。Rolapitantを投与した患者群では、対照群と比較し、遅発期の嘔吐、および悪心・嘔吐に対するレスキュー薬の使用が大幅に減少した。

Rolapitantは、特定の薬剤を代謝するCYP2D6酵素を抑制する。チオリダジンはCYP2D6酵素によって代謝されるが、このチオリダジンとrolapitantの併用は、チオリダジンの血中濃度を増加させ、重篤な不整脈の原因となる可能性があるため、禁忌である。

Rolapitantを投与した際の最も一般的な副作用は、白血球数の低下(好中球減少)、しゃっくり、食欲不振、めまいである。

Rolapitantは、マサチューセッツ州ウォルサムに拠点を置くTesaro社が販売している。

FDAは、連邦政府保健福祉省内に設けられた機関で、国民の健康を増進しこれを守るために医薬品、動物用医薬品、ワクチンおよび生物製剤や医療機器の安全性と有効性の確保に努めている。FDAは、米国の食糧供給の確保や食品安全、化粧品、健康補助食品、電磁波を放出する製品の安全性を保証し、たばこ製品を規制する責務も担っている。

翻訳担当者 白石 里香

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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