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2008/11/18号◆特別レポート「癌ゲノムの塩基配列決定から非常に珍しい変異が判明」

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2008/11/18号◆特別レポート「癌ゲノムの塩基配列決定から非常に珍しい変異が判明」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年11月18日号(Volume 5 / Number 23)

日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特別レポート

癌ゲノムの塩基配列決定から非常に珍しい変異が判明

急性骨髄性白血病(AML)に関連する遺伝子変異を発見するため、AMLで闘病中の女性から採取した正常細胞と癌細胞のゲノム塩基配列が決定された。この研究では、癌細胞にのみ存在する10個の変異を特定した。このうち8つは、もともとAML関連遺伝子でなかったにもかかわらず疾患に影響を与えている遺伝子であった。この遺伝子変異がAMLになんらかの役割を果たしている場合、その役割を決定するにはさらに研究する必要があると述べられている。

この研究は、癌患者の全DNA塩基配列を初めて解読した研究ということになる。ワシントン大学医学部(セントルイス)がこの研究を開始する以前は、標的塩基配列解析法を用いた研究はどれも、研究も治療も困難な白血球の癌であるAMLの遺伝学に対して新たな洞察を加えることができなかった。

「次世代の」全ゲノム塩基配列決定法が利用できるようになり、そのコストも下がったことで、研究チームはひとりの患者の正常細胞ゲノムと癌細胞ゲノムを横並びに比較することを計画し、それによってサンガー法などでは見落とされていたであろう遺伝子変異を発見するに至った。

その結果から、新規の癌関連遺伝子変異を発見する上での全ゲノム塩基配列決定法の力が証明されたとDr. Richard K.Wilson氏は述べた。博士はワシントン大学ゲノムシーケンスセンターの代表である。

研究者らは11月6日付けのNature誌上でこの結果を報告し、得られた研究成果を理論的に解明して臨床ツールを発展させるには、数千とはいかないまでも、さらに数百の正常細胞ゲノムと癌細胞ゲノムの塩基配列を決定することが必要であると勧告した。

「癌ゲノムの塩基配列が1つ決定しただけでは患者の治療法はわからない。この研究の一番重要なところは、遺伝子中の変異を全て見つけ出すには、ヒトゲノムの塩基配列をどのように決定すればよいかがわかった点である。これはこれまでできなかったことで、技術的に極めて困難な挑戦である」と主席研究者のDr. Timothy J.Ley氏は述べている。

別のタイプの白血病を対象疾患とした薬剤であるイマチニブ(グリベック)の開発を率いたDr. Brian Druker氏は、この研究を「偉業」と称し、誰も予想していなかった少数の遺伝子における変異を発見したことが癌ゲノムの大規模塩基配列決定法の足場を整えたと述べている。同氏は現在オレゴン健康科学大学癌研究所の所長であり、今回の研究には関わっていない。

研究対象となった細胞は、50歳代でAMLを発症し、再発後に亡くなった女性から採取したものである。(この女性は、自分のゲノム塩基配列を公表した初めての女性でもある) ゲノム変異10個のうち9個が、調べた癌細胞全てに存在していた。「これはこの遺伝子変異全てに関連性があることを示唆している」とLey氏は述べた。

この変異は疾患が再発した時にも存在した。「この患者の場合、基本的に同一の癌が再発したということは、われわれにはごく明らかなことである」とLey氏は述べている。元々の癌組織にあった癌細胞の一部が最初の治療を生き延びた可能性が考えられた。

新たに見つかった8つの遺伝子変異は、さらに187人の患者を調べても検出されず、非常に希な変異とみられている。

これまでの解析は遺伝子に限定されていたが、研究者らは現在、ゲノム上の別の部分に注目している。遺伝子はゲノム上の小さい割合しか占めておらず、遺伝子を制御する隠れた要素を持つ他の領域が、癌細胞において重要であるという科学的根拠がさらに増えている。

全てのゲノムプロジェクトと同じく、塩基配列を生成し解析する作業は、ほんのはじめの一歩にすぎない。しかし、完全な塩基配列を入手し、将来、ゲノムがどう機能しているかがさらに明らかになった時に、研究者たちは再度立ち返って新たな疑問を投げかけることができると共同責任研究者であるDr. Elaine Mardis氏は述べた。

現在、2人目である寛解状態のAML患者のゲノム塩基配列決定に取りかかっている。さらに3人目のゲノム塩基配列決定の計画もある。

AMLに関係した生物学的経路についての情報を統合することで、おそらくは診断、予後診断ツールの開発や、最終的には標的療法をとおして、患者に利益をもたらすことを希望している。

「詰まるところ、この研究の目的は患者への医療ケアの向上である」とMardis氏は述べている。

—Edward R. Winstead

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関谷 昇 訳

大藪 友利子(生物工学) 監修

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