2009/09/08号◆クローズアップ「がんに対する陽子線治療:新技術の概要」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/09/08号◆クローズアップ「がんに対する陽子線治療:新技術の概要」

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2009/09/08号◆クローズアップ「がんに対する陽子線治療:新技術の概要」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年09月08日号(Volume 6 / Number 17)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf ____________________

クローズアップ

がんに対する陽子線治療:新技術の概要

2009年にがんと診断される推定147万人の米国人のうち、60~75%がその治療法として放射線療法を受ける。治癒の可能性を高め、かつ長期にわたる放射線治療による副作用を最小限に抑えたいと願う患者らのうち、米国内の限られた都市で、陽子線治療と呼ばれる比較的新しい形態の放射線療法で治療を受ける人々がいる。

2001年に米国食品医薬品局(FDA)が陽子線治療を承認して以来、本治療法に対する一般の関心は大いに高まっている。しかしながら、一部の医療および研究界では、この有望な治療法への大いなる期待が研究より先行してしまっているのではないかと懸念されている。

「特定のがんに対する治療法として、陽子線治療は素晴らしい可能性を持っています」と米国国立癌研究所(NCI)放射線腫瘍学支部長のDr. Kevin Camphausen氏は述べた。同氏は、患者の腫瘍タイプに効果があるかもしれないと考える場合にこの治療を患者に勧めてきた。「しかし、必要とされる場所および患者にとって最大の効果があると考えられる部位が確認できるまで、その使用を普及させるべきではないと考えています。」

医療用として最初の陽子線加速装置は、1990年にカリフォルニア州ロマリンダ大学で稼働を開始した。現在では、米国内の合計7つの陽子線治療センターで患者の治療が行われており、その他多数のセンターが現在建設中もしくは計画段階である。本治療法は、前立腺、脳、頭部、頸部、膀胱、肺、もしくは脊椎などの臓器に小さくて境界明瞭な腫瘍がある成人だけでなく、さまざまながん種のほとんどの小児に対しても使用されている。陽子線治療センターでは、それ以外のがんに本治療を使用する試験を継続的に行っている。

精度は優れているが、その正確性は?

X線は電荷を帯びていないため、腫瘍に向けて照射されると、X線は身体を通り抜けるまで身体の表面と標的の間の健常組織だけでなく、腫瘍の先の組織にも均等な減少率でそのエネルギーを付与してゆく。

一方、陽子線ビームは正の電荷を帯びており、計算された目標に送りこまれる水中爆雷のように、ブラッグピークと呼ばれる領域内で、エネルギーのほとんどを一定の深さに送りこむ。標的に陽子線が到達すれば健常組織は治療による副作用のほとんどが避けられ、腫瘍に対してはより大きな損傷をもたらす。このことによって、再発もしくは周辺組織におけるその後の新たな腫瘍発生の危険性が抑えられる可能性がある。

「理論的に言えば、陽子線ビームはX線よりもはるかに精度が高いのです」とNCIの放射線研究プログラム(RRP)副所長のDr. Norman Coleman氏は述べた。「コンピューターの画面では、計算が合っているように見え、期待する気持ちも理解できます。しかし、それが患者に実際に起こっていることなのでしょうか?」

陽子線治療が患者に害を及ぼすことを示すエビデンスは発表されていない。しかし、「とても精度の高い鋭い刃を手にしたのであれば、それが実際にそうなるかどうかの正確性も確かめる必要があります。画像診断における不確定要素、患者のセットアップ再現性、臓器運動などを克服した上で、コンピューター上の計画通りに標的に命中するということが求められるのです」とColeman氏は述べた。

RRPの臨床放射線腫瘍学支部長のDr. Bhadrasain Vikram氏は、患者に陽子線ビームを照射する専門家はビーム幅についてはかなり自信を持っているが、最終的な停止ポイントに関しては、「コンピューターの画面で見ている状態が患者に起こっていないかもしれない、というある種の不安感を抱いています」と語った。従って、例えば、脊髄前部の腫瘍に対しては、陽子線ビームが行き過ぎて神経組織を損傷するリスクを最小限に抑えるために、治療中はビームを横から照射する、と説明した。

患者に対する有用性を評価する

NCIおよび米国内の専門家も、患者の生存期間の延長もしくは生活の質の改善において、陽子線治療が一般的な放射線治療よりも効果があることを明示するランダム化比較試験(RCT)が発表されていないことを指摘している。

フロリダ大学陽子線治療研究所医長であるDr. Nancy Mendenhall氏は、研究所では臨床研究を通して陽子線治療の最善利用についてより多くのことを学ぼうと取り組んでいるが(同氏によると、当施設が2006年に開設されて以来、約1500人の患者が治療を受け、95%が観察研究に登録された)、陽子線治療に関するRCTの実施を妨げる数々の実質的かつ倫理的な障害があると説明した。

「陽子線治療は施設が非常に少なく、この治療を受けることができるのは国内の患者の1%未満です」とMendenhall氏は述べた。これは、治療を提供するセンターが非常に少なく、またそこで1日に治療できる患者数が限られているためだと同氏は説明している。フロリダ大学陽子線治療研究所には、3つの陽子線治療室があり、1日に110人から120人の患者が治療を受けている。

「RCTの1つの治療群には800人以上の患者登録が必要ですが、それだけの患者数と試験期間があれば、4つのパイロットスタディを完了できるでしょう。それによって、病勢の制御率をより高めるための放射線治療での基礎的な手段である線量増加、線量強度の増加、そして少分割照射に対する陽子線治療が持つ可能性についてのわれわれの理解が深まるでしょう」と同氏は述べた。「X線治療ではこれらの限界に到達したと考えていますが、陽子線治療ではまだ未知です。3つのパイロットスタディはすでに完了しており、陽子線治療の可能性を最大限に引き出す方法を見いだすためにこのような研究を継続することが重要だと考えています。」

さらに、陽子線治療のためにフロリダへ来るほとんどの人は、臨床試験で対照群にランダム化割り付けされることを承諾しないでしょう、と同氏は説明した。「この人たちは、極めて十分な情報を得た非常に特別な患者グループです。治療について調査し、技術を理解し、その上でこの方法がベストであるという判断に至っているのです」と述べ、多くの場合、彼らは治療を受けるために数千マイルも移動してきていることも付け加えた。

Mendenhall氏は、陽子線治療の治療能力をさらに詳しく調査し、より多くの治療枠が利用可能になり、比較群の結果評価に用いる技術およびツールに対する信頼性がより高まるまで、今のところは、陽子線治療の結果とX線治療に関するこれまで報告された試験を比較することで十分であると考えている。

最終試験:実薬対照

NCIの専門家の見解は、この技術は非常に有望であるが、それでもなお研究に対する究極の判断基準はランダム化比較試験(RCT)であるとしている。「特定の疾患に対する陽子線治療を検討している患者には、治療を提供している施設でNCIが支援する臨床試験を希望することを奨励します」とVikram氏は述べた。

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターとマサチューセッツ総合病院では、技術開発だけでなく肺癌と小児がんに対する陽子線治療の共同RCT研究に資金を提供する、NCIの大規模P01「Research Project Program」助成金によって、近いうちにさらに多くの試験を利用できるようになるであろう。

Children’s Oncology Groupを通して研究も進行中である、とRRPの医学物理学プログラムディレクターであるDr. James Deye氏は言及した。同氏はさらに、施設全体でデータを確実に比較できるように、RRPは支援する臨床試験のガイドラインを最近発表した、と付け加えた。

医療保険制度改革についての国家的議論のさなかに、陽子線治療は間もなくもう一つの理由で注目を集め始めるかもしれない:効果比較研究(comparative effectiveness research)に対する陽子線治療の適合性についてである。

「放射線科医および放射線腫瘍医にとって、電子データの集積は簡単です;日常業務を行っていく中の一部のようなものです」とColeman氏は述べ、炭素イオン治療などのその他の新たな放射線療法だけでなく、陽子線治療に関する効果比較研究を行う準備がこの分野では十分に整っている、と説明した。

「画像とデータはすぐ目の前にあります」と同氏は述べた。「それに結果を加えれば、長期的に見て、すでに利用している治療法よりも新しい治療法が実質的に有効であるかどうかについての詳しい情報が入手できるのです。」

—Brittany Moya del Pino

患者を治療するための陽子線ビームを発生させるサイクロトロンは、大型の高価な装置で、9万フィート以上のスペースを必要とし数百万ドルの費用がかかる。しかし、複数の企業が、より小型でより低価格のモデルの開発に取り組んでおり、近いうちに米国内のより多くの患者が陽子線治療を利用できるようになり、かつ有効性を比較するランダム化比較試験への患者募集がより容易になる可能性がある。

******

豊 訳

平 栄(放射線腫瘍医/武蔵村山病院)監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  3. 3コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  4. 4リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  5. 5BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  6. 6若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新...
  9. 9手術後に放射線治療を受けない非浸潤性乳管がん患者の長...
  10. 10免疫療法薬の併用はタイミングと順序が重要

お勧め出版物

一覧

arrow_upward