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2010/07/13号◆癌研究ハイライト

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2010/07/13号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年7月13日号(Volume 7 / Number 14)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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癌研究ハイライト

・早期乳癌患者の術後ホルモン療法への遵守率が低い
・DNA修復酵素を抑制する薬剤が乳房腫瘍や卵巣腫瘍を縮小
・米国で大腸癌検診の受診率は上昇、マンモグラフィの受診率はわずかに低下
・テロメアの長さが一部の癌発生リスクと関連
・マーシャル諸島の被曝による癌症例を推定する研究
□その他のジャーナル記事:ASCOが術後補助乳癌治療でアロマターゼ阻害剤の使用を推奨
早期乳癌患者の術後ホルモン療法への遵守率が低い

この分野で過去最大規模の試験の一つから、早期乳癌女性、特に若い女性では、5年間の術後ホルモン療法終了前に治療を中止する傾向があることが示された。この結果は、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌6月28日電子版で発表された。また、まだ文献発表されていない同試験の解析が米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で先月発表され、治療を終了していない場合は生存率も不良であることが示されている。

JCOで発表された知見では、タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤3剤のうち1剤で治療を開始した約8800人の試験参加女性のうち32%が、4年半以内に治療を中止していたことが明らかになった。また、治療を継続した患者も、全治療期間4年半の投薬計画を遵守(処方された薬剤をほぼすべて服用)したのは72%のみであった。

本試験は、統合管理医療プログラムである北カリフォルニア・カイザーパーマネンテ(Kaiser Permanente of Northern California:KPNC(非営利医療団体))の一部の女性を対象に行なわれた。研究チームは、KPNC癌登録者から被験者を特定し、KPNC薬剤情報管理システムの処方薬の補充からアジュバント療法の使用を追跡した。処方薬の補充が180日間行なわれない場合を中止、服薬が指定した処方薬の80%未満の場合に不遵守と定義した。

全体として、処方通りに投与計画を完了したのは患者の49%のみであった。不遵守患者の多くは40歳未満や75歳超の女性であったが、40歳未満の女性202人の追跡記録が最も悪かった。50%が治療を中断し、40%は他の集団よりも不遵守率が高かった。

他の複数の試験でも、術後ホルモン療法を受けている女性の治療中止や服薬遵守に関する問題が指摘されてきた。しかしながら、その「乳癌再発率低下を証明した追跡記録」を踏まえて、試験の著者らは、特に若い女性において遵守しない割合が高いことに驚いた。コロンビア大学医療センターの主著者、Dr. Dawn Hershman氏は、「患者が最大限に治療の利点を得るためには、治療期間を守って時間通りに服薬する必要があることを理解してもらえるよう、私たちはもっと良い方法を考えなければならないようである」と記者発表で述べた。

ASCO総会で発表された解析では死亡率リスクとの関連も示され、治療の早期中断で36%、服薬不遵守では40%死亡率は増加した。Hershman氏の電子メールによる説明では、Dr. Alfred Neugut氏主導のコロンビア大学研究チームが、女性患者がなぜ治療を中断したり、服薬を遵守しないのかを調べるプロスペクティブコホート研究を実施中とのことである。

DNA修復酵素を抑制する薬剤が乳房腫瘍や卵巣腫瘍を縮小

ふたつの小規模第2相試験で、PARPと呼ばれるDNA修復酵素を阻害する薬剤オラパリブが、遺伝性BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有する女性の進行した乳癌や卵巣癌の腫瘍を縮小、または進行を停止させた。BRCA変異を有する癌細胞はもう一方のDNA修理経路に欠損があり、そのためPARPが関与する経路などに依存していることからPARP阻害に特に感受性が高いと考えられている。2試験の結果は、Lancet誌7月6日電子版で発表された。

乳癌臨床試験において、キングズカレッジ・ロンドン医学部の研究者Dr.Andrew Tutt氏らは、局所進行性または転移性乳癌を有し、BRCA1またはBRCA2変異が確認された女性患者54人を試験に組み入れた。患者は全員、それまでに1種類以上の化学療法を受けていた。患者の半数に、オラパリブの最大耐用量である400mgを1日2回投与し、残る半数には予備試験で抗癌効果がみられた最小用量であるオラパリブ100mgを1日2回投与した。予備結果は2009年ASCO年次総会で発表された。

400mg群では27人中11人に、100mg群では27人中6人に腫瘍縮小が認められた。この反応の持続期間中央値は、400mg群で144日間、100mg群では141日であった。本試験に参加した患者のうち12人に一時的な病勢安定がみられた。

無増悪生存期間の中央値は、100mg群では3.8カ月であったが、400mg群の患者では5.7カ月であった。400mg群患者の41%および100mg群の33%に倦怠感、嘔気、嘔吐などの重度の副作用がみられた。

BRCA1またはBRCA2変異を有する再発性卵巣癌患者で平行して行われたオラパリブの第2相臨床試験でも同様の結果がみられた。この試験は、ロサンゼルスのシダーズサイナイ医療センターでDr. M. William Audeh氏主導で実施され、患者33人にオラパリブ400mを1日2回、24人に100mgを1日2回投与した。400mg群では11人に腫瘍縮小が(反応期間中央値は290日間)、100mg群では3人に縮小が認められた(反応期間中央値は269日間)。

この乳癌の論文の著者らは、乳癌試験および卵巣癌試験に参加した患者はいずれも、それまで受けた化学療法レジメン数の中央値は3で、疾患の治療に対する抵抗性が非常に高かったことを述べた。今後の試験では、オラパリブの有効性や毒性を従来の細胞毒性化学療法と比較するとのことである。

米国で大腸癌検診の受診率は上昇、マンモグラフィ受診率はわずかに低下

2006年〜2008年の間、米国予防医療作業部会(U.S. Preventive Services Task Force)により推奨された方法で大腸癌検診を受けた50〜75歳の成人の割合は51.9%から62.9%に増加した。同じ期間に、過去2年に乳房X線撮影を受けたことのある50〜74歳の女性の割合は81.5%から81.1%とわずかに減少した。

これらの所見はCDC(米国疾病対策センター)が実施している行動危険因子サーベイランスシステム(BRFSS)によるものであり、週刊疾病率死亡率報告(Morbidity and Mortality Weekly Repor)電子版に7月9日付で掲載された。

50〜59歳の成人、ヒスパニック、低所得者、高等学校教育を受けていない人、医療保険のない人は、大腸癌検診の受診率が最も低かった。 50〜59歳の女性、高等学校教育を受けていない女性、アメリカおよびアラスカ先住民、医療保険のない女性、年収1万5千ドル未満の者では乳房X線撮影の受診率が最も低かった。

この報告書は地域の癌検診実施率を上げるため、最近勧告されたCDCの地域予防医療ガイド(Guide to Community Preventive Services)のように科学的根拠に基づく介入の必要性を明示していると著者らは結論している。同氏らは患者に対し検診医療を推奨する医師の重要性についても強調している。「乳房X線検査を受けない女性たちが挙げる最も多い理由は、この検査を勧めてくれる人がいなかったことであった」と著者らは論述している。「そのため医療提供者は、米国女性に最新のマンモグラフィを普及推進する上で最も重要な役割を担っている」。

テロメアの長さが一部の癌発生リスクと関連

欧州の研究者らは、この種の最初のプロスペクティブ研究の1つにおいて、染色体末端にあるDNA-蛋白複合体(テロメアとして知られる)の長さと癌発生リスクおよび癌死亡率との関連を明らかにした。オーストリアのインスブルック医科大学Dr. Peter Willeit氏らは米国医学会誌(JAMA)7月7日号でその知見を発表した。

テロメアは老化の生物学的指標である。テロメアは、細胞が分裂するたび少量のDNAを消失し短くなる。これらの構造はゲノムを保護するのに役立つが、短くなるかまたは損傷したテロメアは癌に関連する染色体を不安定にすることがある。

テロメア長と癌の発生および死亡の関連についてプロスペクティブに検討するため、研究者らはイタリアの小都市ブルーニコで実施されたアテローム性動脈硬化症集団をベースとした横断調査であるブルーニコ試験で、男女787人から採取した白血球のテロメア長を測定した。最初の調査は1995年に実施され、当初参加者は癌に罹患していなかった。10年間の追跡調査の結果、787人中92人(11.7%)が発癌し、44人が癌で死亡していた。

過去の研究で明らかにされているように、初期値でテロメアが短い患者は癌発生リスクがより高かった。 癌発生リスクは、テロメア最短群で最も高く、テロメア最長群で最も低かった。また最終的な癌死亡率とも関連が認められた。

Willeit氏らは、テロメア長と癌のタイプ別の関連性を正確に評価するには患者数が少なすぎた、と述べた。今後の研究では地理的地域のみならず他の人種および民族の参加者を含む必要があるだろう。また、これらの研究を行う場合 容易に入手できる白血球よりむしろ各種の組織におけるテロメア長による試験が可能であろうと同氏らは語った。

マーシャル諸島の被曝による癌症例を推定する研究

NCIの研究者らは、1940年代から1950年代にかけて12年以上にわたった米国の核実験による放射能に起因したマーシャル諸島の放射能関連癌のリスクを推定した。研究者らは、1948〜1970年の間に生存していたマーシャル諸島の住民に生じた全癌種のうち1.6%はこの被曝が原因であると結論し、2万5千人を超えるマーシャル諸島の住民で放射能関連癌が170人に発生すると推定した。この結果は実験された核兵器、天候パターン、人口統計、およびその他の要因の有用な情報についての最新分析に基づいている。

この推定は、Health Physics誌電子版に7月7日付で掲載された8つの論文シリーズの一部として発表されたもので、詳細に当研究の方法および知見を記述している。この研究では1946〜1958年に行われた66件の核実験による放射性降下物(死の灰)の沈着を検証したが、このうち20件が島内で測定できる放射性降下物と関連していた。また研究者らは島民が経験した内部(例、汚染食品の摂取による)および外部(例、核実験による放射能被爆)の放射能の量を解析した。

当知見は、マーシャル諸島の議会と保健局の役に立つであろうとNCI癌疫学・遺伝学部門(DCEG)の主著者Dr. Steven L. Simon氏らは記した。 核実験の「影響」を研究するために用いられた方法は、「戦時中の、あるいはテロリストによる事故または故意による」核爆発など「さらに広範な状況にも利用できる実例である」 と同氏らは続けた。

2004年に議員たちは、DCEGの研究者らに即刻入手できるデータを用いてマーシャル諸島の住民の癌リスクを推定するよう要請した。これらの当初の「概略の推定調査」は、専門家による精査の対象にはなっておらず、「一般的には保守的で、生じうる癌の実数を意図的に過小評価しないようにしている」と研究チームは説明した。

推定した170人を超えた癌症例のうち、65人を除くすべてにすでに発症した可能性が高いと研究者らは報告した。 放射能に関連する癌で最も多いのは甲状腺癌であり、続いて大腸癌、白血病であった。初期の2カ所の実験地(ビキニ環礁およびエニウェトク環礁)に一番近い北東環礁すなわち北東部の島民たちは最も高い(平均で数百から2千mGyを超える)被曝量を受け、推定癌症例以上の約30%が発症した。実験前、ビキニおよびエニウェトクの住民たちは移動させられていた。実験地から最も離れた諸島南部の住民は被曝量は最も低い(平均で5〜12 mGy)と考えられた。

「初めてNCI の研究者たちは、故国で実験されたすべての核兵器によって放射性降下物に曝されたマーシャル諸島の住民の被曝総量と癌リスク評価を完了した」とSimon氏は述べた。「これは技術的に困難な業であったが、成果は放射線疫学と地域の曝露評価に役立つであろう」。

その他のジャーナル記事:ASCOが術後補助乳癌治療でアロマターゼ阻害剤の使用を推奨米国臨床腫瘍学会(ASCO)の最新のガイドラインでは、ホルモン受容体陽性乳癌患者は、治療期間のいずれかの時点でアロマターゼ阻害剤(AI)処方を受けることを推奨している。このガイドラインによると、AI治療は最長5年間継続で、その治療方法はいくつかある。初回術後補助療法として服用、2〜3年のタモキシフェン治療後服用、または5年間のタモキシフェン治療後の服用である。最新のガイドラインは、Journal of Clinical Oncology誌7月12日電子版で発表された。ガイドライン改訂のためにASCOが召集した専門委員会の委員長Dr. Harold Burstein氏は、「われわれの委員会は、抗エストロゲン剤の出現で急増した過去5年間の研究を慎重に再評価し、こうした新治療薬を最大限有効に使用するにはどうしたらよいか、またどのような副作用や不都合があるのかについて理解のギャップを埋めた」と、記者発表で述べた。

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snowberry、福田 素子 訳
原 文堅(乳腺腫瘍科/四国がんセンター)
辻村 信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)監修
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