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ASH2022:白血病患者に有望な新規多剤併用療法と分子標的療法

MDアンダーソンの研究者が米国血液学会(ASH2022)で複数の白血病に関する重要な進歩を発表

2022年米国血液学会(ASH)年次総会で、3件の臨床試験から得られた説得力のある知見をテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が発表している。これらの口頭発表は、高齢および若年の高リスクおよび新規診断の急性骨髄性白血病(AML)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ球性白血病(ALL)など、複数の種類の白血病に対する分子標的療法と新規併用療法の使用を進める心強い結果を強調している。MDアンダーソンが発表するすべてのASH年次総会の内容に関する詳細情報は、MDAnderson.org/ASHで閲覧できる。

1)高齢または高リスクの新規診断AML患者が3剤併用療法に良好な反応を示す(アブストラクト番号:61)

新たに急性骨髄性白血病(AML)と診断された高齢または高リスクの患者に、第1b/2相試験においてアザシチジン(販売名:ビダーザ)、ベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)およびマグロリマブの3剤併用療法を実施したところ、期待の持てる寛解率が認められた。この新規診断コホートでは、追跡期間9.2カ月で寛解率(ORR)が80%、全生存期間(OS)中央値は未到達であった。白血病学の准教授であるNaval Daver医師が12月10日に試験結果を発表した。

Daver医師は、「高齢AML患者や強化化学療法に不適応なAML患者に対する治療選択肢として、この3剤併用療法の有望なエビデンスを心強く思っています。われわれは、より多くの患者さんを対象に試験の拡大を継続し、3剤併用療法とアザシチジン-ベネトクラクス2剤併用療法を比較評価する国際共同第3相ランダム化試験を開始しました。この試験が成功すれば、これらの患者さんに対する新たな標準治療としての一次治療を確立できるかもしれません」と述べた。

AML患者の約50~55%は高齢であるか、強化化学療法に不適応とみなされる。アザシチジンとベネトクラクスによる一次治療により、新規診断患者における寛解率は65~70%に達するが、ほとんどの患者は再発し、TP53変異を有する患者では全生存期間中央値が6カ月未満と、依然として予後不良である。マグロリマブは、白血病細胞の「私を食べないで(don’t eat me)シグナル」を阻害する働きを持つ抗CD47抗体である。以前の試験では、新規診断AMLにおいてアザシチジンと併用で有効性を示し、特にTP53変異陽性AMLの一次治療において、寛解と生存の有望なシグナルが示された。

今回の試験では、2つのコホートで74人の患者を登録した。第1のコホートには、75歳以上で強化化学療法に不適格な合併症が記録されている、あるいは年齢を問わず、予後不良因子もしくはTP53変異、またはその両方を有する一次治療患者45人を登録した。このコホートには、TP53変異のある患者27人と、TP53変異のない患者14人が含まれていた。第2のコホートには、再発/難治性のAML患者29人を登録した。

3つの治験薬のいずれかを少なくとも1回投与されたすべての患者を、治療効果と有害事象の評価対象として含めた。グレード3以上の貧血を発現した患者は18人であり、主な非血液系副作用は発熱性好中球減少症、肺炎、高ビリルビン血症、高トランスアミナーゼ血症、クレアチン上昇および低カリウム血症であった。

新規診断コホートにおいて、TP53遺伝子変異がある患者とない患者の客観的奏効率は、それぞれ74%と93%であった。全生存期間の中央値は、いずれの患者群でも未到達であった。ベネトクラクスによる治療歴のある再発/難治性のAML患者における治療効果はわずかであり、このコホートは無益性のため中止された。ベネトクラクス投与歴のない再発/難治性のAML患者については、現在も登録を継続している。

本試験はギリアド社から資金提供を受けた。Daver医師はギリアド社のアドバイザーの役割を担っている。共著者の全リストは、こちらのアブストラクトに掲載されている。

2)化学療法を行わないポナチニブとブリナツモマブ併用療法が、新規診断フィラデルフィア染色体陽性ALL患者に有効(アブストラクト番号:213)

フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)急性リンパ性白血病(ALL)と診断された患者に対して、化学療法フリーのレジメンであるポナチニブ(販売名:アイクルシグ)とブリナツモマブ(販売名:ビーリンサイト)の併用療法が高い寛解率を達成し、同種造血幹細胞移植の必要性を低減したことが、第2相試験の結果で明らかになった。臨床試験責任医師の1人である白血病学助教のNicholas Short医師が、12月10日にこの結果を発表した。

「従来、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病は標準的な化学療法に対する反応が悪く、再発のリスクが高いため、今回の生存率の結果と幹細胞移植の必要性の低減は非常に心強いものです。この投与方法は安全で有効な、化学療法を行わない選択肢であるだけでなく、これらの患者さんで、これまで示されてきたような移植の必要性を克服すると思われます」とShort医師は述べた。

従来、フィラデルフィア染色体陽性のALL患者は、長期生存率が低かった。ポナチニブのようなチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を化学療法に加えることで、生存率が劇的に改善することを研究者らは見出した。ポナチニブは、BCR-ABL1を標的とする第3世代のチロシンキナーゼ阻害薬であり、これまである種の慢性骨髄性白血病の治療に使用されている。ブリナツモマブは、CD3-CD19二重特異性抗体であり、再発または難治性のフィラデルフィア染色体陽性ALLに対して単剤で有効である。

本試験では、フィラデルフィア染色体陽性ALLと診断された患者40人を登録した。コントロールされていない心血管疾患や臨床的意義のある中枢神経系の併存疾患のある患者は、本試験から除外した。参加者の平均年齢は56歳であった。

血液学的寛解の評価が可能であった患者の96%は完全寛解または血液学的回復が不完全な完全寛解であった。分子遺伝学的完全寛解(CMR)の評価が可能であった38人の患者の68%は1回の治療サイクル後に分子遺伝学的完全寛解を達成し、87%は試験期間中に分子遺伝学的完全寛解を達成した。分子遺伝学的寛解は迅速で、治療開始後2週間以内に大多数の患者が末梢血で分子遺伝学的完全寛解を達成した。第一寛解期に造血幹細胞移植を受けた患者は1人のみであった。

追跡期間中央値15カ月の時点で、無イベント生存率および推定全生存率は95%であった。本試験では移植率が非常に低かったにもかかわらず、治療成績は心強いものであった。この治療法は忍容性が良好であり、ほとんどの毒性はグレード1~2で、2つの薬剤の既知の副作用と一致していた。

本試験は、Amgen社とTakeda Oncology社から資金提供を受けた。Short医師は、Takeda Oncology社のコンサルティングまたはアドバイザリーの役割を担っている。共著者の全リストは、こちらのアブストラクトに掲載されている。

 

監訳:吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

翻訳担当者坂下美保子

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