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研究が遅れている乳がん(浸潤性小葉がん)に着目した多施設共同研究

浸潤性乳がんの組織学的亜型として米国で2番目に多い浸潤性小葉がん(ILC)を有する患者を対象とした多施設解析により、ILCはその有病率の高さにもかかわらず、浸潤性乳がんで最も多く一般的である浸潤性乳管がん(IDC)よりも発見が遅れ、転帰も悪いことが明らかになった。

Journal of the National Cancer Institute誌の10月14日号に掲載された本研究は、以下の3大がんセンターの患者33,000人以上の記録を用いて行われ、ILCとIDCが生物学的には異なることを示し、2つの疾患の重要な違いおよび小葉がんに特化した検出方法ならびに治療選択肢の必要性を強調している。患者記録はUPMCヒルマンがんセンター、クリーブランド・クリニックがんセンター、オハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC-ジェームズ)からのものである。

「小葉がんは乳がん症例の約10~15%を占めていますが、これまで研究者から軽視されてきたため、あまり知られていません。ILCとIDCは別物であるという認識が広まっていますが、この大規模多施設共同研究は、これらが異なる管理を必要とする2つの疾患であるという説得力のある証拠を示しています」とUPMCヒルマンがんセンターがん生物学プログラムの共同リーダーであり、ピッツバーグ大学医学部薬理学・化学生物学教室の教授である共同筆頭著者のSteffi Oesterreich医師は述べた。

共同上席著者である、クリーブランド・クリニックの乳腺腫瘍内科専門医であるMegan Kruse医師とOSUCCC-ジェームズの乳腺腫瘍内科医であるNicole Williams医師は、Oesterreich医師と協力して、1990年から2017年の間にILCまたはIDCの治療を3大がんセンターで受けた患者の記録を分析した。

「これらの結果は、おそらく小葉がんの発見が遅れていることを示しています。これらの腫瘍がようやく発見されたとき、腫瘍は大きく、すでにリンパ節に転移しています。これは、がんが広がっていることを示すものです。新しい画像技術や他の方法を開発することで、ILCの早期発見を推し進めることにもっと力を入れる必要があります」とKruse医師は述べた。

この研究は、Oesterreich医師が、欠席したLobular Breast Cancer Allianceの電話会議の録音を皿洗いをしながら聴いていた時に着想を得たものである。クリーブランド・クリニックの研究者が同センターの乳がん登録を分析するプロジェクトを始めている旨を、クリーブランドの小葉がん対策の支持者であるSusan MacDonald氏が話したとき、Oesterreich医師は耳をそばだてた。

「私たちUPMCでは全く同じことをやってきている、協力し合うのは意味があるはず、と思ったのです」とOesterreich医師は言う。

ILCの最大の特徴は、細胞の相互結合を助けるE-カドヘリンと呼ばれる遺伝子が欠損していることである。その結果、小葉がん細胞は線状に増殖し、IDCでよく見られる丸いしこりではなく、蜘蛛の巣のような腫瘍ができる、とOesterreich医師は説明する。ILCは、この蜘蛛の巣のような巻きひげ形状ゆえに、増殖してしばしば進行期となるまでマンモグラフィーでの発見が困難となる。

解析の結果、ILC細胞はIDC細胞よりも悪性度が低い、つまり、より正常細胞に近い外観であることが判明した。しかし、ILC腫瘍との診断がつくのは、がん細胞が乳房組織を越えてリンパ節に広がり、身体の他の部分に転移している進行期であるステージIIIまたはIVの時点になる場合がIDCの2倍多くとなることが判明した。また、腫瘍の大きさは、小葉がんが乳管がんよりも大きかった。

研究者らは、エストロゲン受容体を有しHER2受容体を欠く腫瘍を有する患者に限定して、次のステップの解析を行った。その結果、小葉がん患者は無病生存期間と全生存期間が短いことがわかった。また、ILC患者はIDC患者よりも再発が多く、晩期再発となる傾向があった。

「つまり、ILC患者では、腫瘍の再発は多いですし、晩期再発となるのです。このことは、腫瘍細胞が再び目を覚ますまで身体のどこかで潜伏していることを示唆しています。これらの細胞がどこで潜伏し、なぜ再び目覚めるのかを解明する必要があります」とOesterreich医師は説明した。同医師は、乳がん研究所のシャー・ファミリー寄付講座教授かつUPMCヒルマンがんセンターとマギー・ウイメンズ研究所との協力関係にあるウイメンズがん研究センターの共同所長でもある。

オンコタイプDXと呼ばれる市販の先端ゲノム検査を用いて、エストロゲン受容体陽性HER2陰性の早期乳がん患者の再発リスクと化学療法の効果を予測した。

解析の結果、IDC患者ではオンコタイプDXスコアとがん再発との間に有意な相関があることがわかった。ILCでは、晩期再発が多いにもかかわらず、高再発リスクに分類された症例はごく少数で、小葉がんの再発予測を向上させる特別な分子検査の必要性が浮き彫りになった。

「小葉がんと乳管がんは異なる疾患です。本研究は、小葉がんでは診断が進行期となり再発の頻度が高いことを示しています。しかし、浸潤性小葉がんは、一般に使われている遺伝子検査では高再発リスクと分類されにくかったのです。これらのがんは違いがあるにもかかわらず、同様なものとして治療される場合が多いのです。本結果により、小葉がん患者の転帰を改善させるための新たな診断ツールや薬剤の開発を目的とした研究に拍車がかかることを期待しています」とWilliams医師は述べた。

 

監訳:下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)

翻訳担当者松谷香織

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