[ 記事 ]

初回治療での自家造血幹細胞移植は多発性骨髄腫の無増悪生存期間を改善

ASCOの見解

「多発性骨髄腫患者さんの予後はこの10年間で大幅に改善しています。この間に得られた知見をもとに、多発性骨髄腫患者さんの治療成績は全体的に改善の傾向を示しています。さらに、造血幹細胞移植を行う最適なタイミングに関する情報も得られるようになっています」と米国臨床腫瘍学会(ASCO)副会長および最高医学責任者Julie R. Gralow医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は話す。

多発性骨髄腫と新たに診断された非高齢患者について、初回治療として自家末梢血造血幹細胞移植を実施した群は、初回治療に移植を行わず化学療法を用いた群よりも無増悪生存期間が有意に長く、その差は21.4カ月(中央値)であった造血幹細胞を保存しておくのに比べ、早期に自家末梢血造血幹細胞移植を施行することによる全生存期間延長の有益性については、これまでのところ確認されていない

初回治療として患者を (1) 造血幹細胞の採取を効率的に行うためにメルファランを投与後自家末梢血造血幹細胞移植を行い、その後レナリドミド(販売名:レブラミド)、ボルテゾミブ(販売名:ベルケイド)、デキサメタゾンの3剤併用療法(RVd)を2サイクル行う群と (2) RVdを3サイクル実施後に、造血幹細胞動員(病勢進行を認めた場合に用いる幹細胞を採取する)を行い、その後RVdを追加で5サイクル行う群に無作為に割り付けた。いずれの治療群にも病勢進行または不耐容な毒性が認められるまでレナリドミドの維持療法を継続した。この新たな研究は米国臨床腫瘍学会年次総会2022(ASCO22)で発表される。

[試験要旨]

目的

レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン(RVd)+造血幹細胞の動員とRVd+自家末梢血造血幹細胞移植の有益性の比較

対象者

新たに多発性骨髄腫と診断された18~65歳の722人を米国の臨床試験実施機関46施設に登録した。

結果

76カ月間にわたる追跡期間(中央値)の結果:

・76カ月時の無増悪生存期間(中央値)は、非移植群が46.2カ月、移植群が67.6カ月であった。

・これまでのところ、いずれの群も全生存期間の延長に対する有益性は確認されていない。

意義

本試験の結果は、多発性骨髄腫と診断された患者の転帰改善について明るい見通しを示すとともに、造血幹細胞療法の実施時期について理解を深め、またがん治療の新しい時代に造血幹細胞療法がその進展に果たす役割をより深く知ることができる。

[主な知見]

患者を2つの治療群に無作為に割り付けた。1つ目の群には、RVdを3サイクル行い、造血幹細胞を動員したのち、再度RVdを5サイクル実施した。2つ目の群には、化学療法としてメルファランを投与後に自家末梢血造血幹細胞移植を施行したのち、RVdを2サイクル実施した。両治療群とも病勢進行または不耐容な毒性が認められるまでレナリドミドの維持療法を継続した。

無増悪生存期間の中央値は、非移植群の46.2カ月に対し、自家末梢血造血幹細胞移植群は67.6カ月であった。非移植群の63%、自家末梢血造血幹細胞移植群の53%が、それぞれの試験治療後に追加の治療を必要とし、非移植群の28%が二次治療以降に移植を受けた。

死亡数は、非移植群が90人、自家末梢血造血幹細胞移植群が88人であり、4年全生存期間はそれぞれ84%および85%となった。以上の結果から、2群間に統計的有意差は認められなかった。5年全生存期間の推定値に群間差はなく、現在、追跡期間の中央値は6年を超える。

有害事象は、非移植群が自家末梢血造血幹細胞移植群に比べて少なく、全体の発現率は非移植群が78%、自家末梢血造血幹細胞移植群が94%であった。非移植群の61%、自家末梢血造血幹細胞移植群の90%に血液由来の有害事象が認められた。非移植群の10%、自家末梢血造血幹細胞移植群の11%が二次性悪性腫瘍を発症し、自家末梢血造血幹細胞移植群では二次性の急性骨髄性白血病または骨髄異形成症候群の発症割合が有意に高かった。

造血幹細胞移植に関連したQOLスコアの初回評価は、自家末梢血造血幹細胞移植群が非移植群よりも低かったが、移植後にはQOLの回復がみられた。

「DETERMINATION試験により、新たに多発性骨髄腫と診断され移植適応となった患者さんが治療法を選択するうえで、医療提供者と患者さんが同じように考慮すべき重要な点を知ることができることから、本試験の結果は多発性骨髄腫を患う非高齢患者さんの実臨床での診療・治療において重要であり、今後の研究にも重要な意義をもつでしょう」。試験の筆頭著者であり、ダナファーバーがん研究所(ボストン)Jerome Lipper多発性骨髄腫センターの臨床プログラム主任および兼臨床研究長であるPaul G. Richardson医師はこう話し、また、本試験がこれまで行われた同じ条件の第3相試験のなかで、参加者に占めるアフリカ系アメリカ人の割合が最も高かった(18%)ことにも言及した。

米国では2022年に34,470人が多発性骨髄腫と診断され、12,640人が同疾患により死亡すると推定される。発症数、死亡数はともに男性の方が多い

多発性骨髄腫は臨床像が極めて多彩な疾患であり、この10年間に適応となる数多くの新薬と治療方法が承認されている。この疾患は全生存期間が比較的長いため、多くの臨床試験において、治療方法の間で全生存期間の延長に対する有益性の違いはまだ示されていない。

[試験について]

この試験は米国の臨床試験実施機関46施設で行われ、18~65歳の722人を2つの治療群(357人を非移植群、365人を自家末梢血造血幹細胞移植群)に無作為に割り付けた。年齢の中央値は非移植群が57歳、自家末梢血造血幹細胞移植群が55歳であった。この試験では、造血幹細胞移植の際に患者に再輸注する細胞を採取するため、造血幹細胞の動員を行う。自家末梢血造血幹細胞移植群では、造血幹細胞の動員は試験治療中の次の段階として行う。動員(非移植)群では、採取した造血幹細胞は病勢進行時に使用できるよう保存しておき、移植を行う代わりに、RVdを5サイクル追加し計8サイクル実施する。自家末梢血造血幹細胞移植群の患者には、移植から回復後にしかるべき強化療法としてRVdを追加で2サイクル実施する。その後、両群とも病勢進行が認められるまでレナリドミドの維持療法を継続する

過去の試験では、自家末梢血造血幹細胞移植を一次治療として予定していない患者を対象に、2剤併用療法にボルテゾミブを追加投与したところ、2剤のみを併用した場合に比べ生存期間が改善することが示されている。造血幹細胞移植を一次治療として受ける患者もいるが、治療手順に長い時間を要するうえ重篤な副作用を生じるおそれがあるため、移植は二次治療以降とするかまたは移植を受けない患者もなかにはいる。

本試験は、もともと第3相IFM/DFCI 2009試験の並行試験であった。IFM/DFCI 2009試験では、レナリドミドによる維持療法期間は1年間であったが、DETERMINATION試験では病勢進行が認められるまで全患者にレナリドミドを継続投与した。両試験の比較では、DETERMINATION試験にてレナリドミド投与を病勢進行まで継続した非移植群の患者は、IFM/DFCI 2009試験でレナリドミド投与を1年間実施した患者よりも、無増悪生存期間が約12カ月延長したことから、レナリドミドによる維持療法の臨床効果が確認された。

[次のステップ]

本試験では、全生存期間および長期安全性評価項目への影響を評価するために追跡調査を継続しており、現在、全ゲノムシーケンスQOLの再評価、相関解析を行っている。

本試験は、Blood and Marrow Transplant Clinical Trials Networkに対し、米国の国立心肺血液研究所および国立がん研究所から助成金#U10HL069294、#U24HL138660の支援を受けたほか、RJ Corman Multiple Myeloma Research Fund、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ、Millennium/Takeda Pharmaceutical/Biotech Companyから助成金を受け実施された。

翻訳担当者伊藤美奈子

監修佐々木裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)

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