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2021年ASCO年次総会——MDアンダーソンによる注目の演題

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが実施した複数の第2相臨床試験において、メラノーマ、乳がん、HER2陽性腫瘍、卵巣がんの患者で有望な結果が示されている。2021年米国臨床腫瘍学会(ASCO)バーチャル年次総会で発表されるこれらの試験結果は、患者の転帰を改善する薬物療法研究の新たな進歩を示している。

メラノーマに術前・術後のニボルマブ+relatlimab[レラトリマブ]併用療法が有効(アブストラクト#9502

免疫チェックポイント阻害薬であるPD-1阻害薬のニボルマブとLAG-3阻害薬のレラトリマブを用いた術前および術後療法のレジメンが、切除可能な臨床ステージ3メラノーマ患者において安全かつ有効であることがMDアンダーソンの研究者らが第2相試験で示された。

試験には30人の患者が登録され、ニボルマブとレラトリマブを術前に2回、術後に最大10回追加投与された。本レジメンにより、59%の病理学的完全奏効(pCR)率と66%の病理学的著効率を達成した。奏効率(ORR)は57%であった。観察期間の中央値は16カ月で、本レジメンにより、90%の無イベント生存率、93%の無再発生存率、95%の全生存率を達成した。

ステージ3メラノーマに対する術前療法でイピリムマブとニボルマブを併用した先の研究では、手術で切除された組織中に活発に増殖するがん細胞がないことを示す高いpCR率が示されているが、術前療法を受けた患者の30~40%に高グレードの毒性が認められた。今回のニボルマブとレラトリマブの試験では、術前にグレード3または4の有害事象はみられず、手術の延期もなかった。術後療法では、26%の患者がグレード3、4の有害事象を経験した。

「ステージ3のメラノーマ患者は、先に手術を受けるというのが従来の標準治療でしたが、これらの患者にとって術前療法が明らかに有効であることが示されました」と、演者のメラノーマ腫瘍内科准教授Rodabe Amaria医師は述べている。「私たちの研究が、転移メラノーマ患者の新たな治療パラダイムにつながることを期待しています」。

Amaria医師らの研究チームは、患者転帰の追跡を継続しており、さらなるトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)を実施し、この併用療法に対する反応や耐性のメカニズムを解明する予定である。

生殖細胞系列BRCA1/2変異陽性、HER2陰性の早期乳がん患者にtalazoparib[タラゾパリブ]による術前療法が効果(アブストラクト#505

生殖細胞系列BRCA1/2変異陽性、早期HER2陰性乳がん患者で、PARP阻害薬のタラゾパリブが有効であることが、MDアンダーソンの非ランダム化非盲検第2相試験で示された。

試験には、ステージ1~3の乳がんおよび生殖細胞系列BRCA変異を有する患者61人が登録され、術前の24週間、タラゾパリブを投与された。タラゾパリブは、評価可能集団で45.8%、治療意図による(intention-to-treat)集団で49.2%の病理学的完全奏効(pCR)率を達成した。このpCR率は、アントラサイクリン系抗がん剤ベースおよびタキサン系抗がん剤ベースの化学療法レジメンの標準併用療法で観察されたものと同等であった。

「この試験は、私たちが以前行った単一施設試験に基づいていますが、複数の施設から生殖細胞系列BRCA変異および早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を有する患者を登録しました。PARP阻害薬タラゾパリブの1日1回の経口投与により、試験に参加した患者のほぼ半数で病理学的完全奏効が得られたという試験結果が引き続き示されました」と、演者で臨床試験の統括責任者である乳腺腫瘍内科教授Jennifer Litton医師は述べている。

BRCA1/2遺伝子変異は、全乳がんの5~10%、TNBCの9~15%を占め、他の種類の乳がんに比べて悪性度が高く、予後不良である。治療選択肢が限られるため、治療が難しいこの集団の標準治療は依然として術前化学療法である。しかし、新たに登場した分子標的治療薬は、この種の乳がんの治療に新規の手法を提供する。

タラゾパリブの忍容性はおおむね良好であり、試験治療下で発現した有害事象は、確立されている安全性プロファイルと一致した。標準化学療法と直接比較するさらなる研究が検討されている。

HER2陽性腫瘍を有する特定の患者を対象とした臓器横断的試験でHER2標的療法が有効性を示すアブストラクト#3004

第2相My Pathwayバスケット試験の結果から、HER2標的薬であるペルツズマブとトラスツズマブが、HER2増幅またはHER2過剰発現を特徴とするさまざまな腫瘍の患者で持続的な活性を示すが、KRAS変異を有する患者では反応が限定的であることがわかった。

ペルツズマブとトラスツズマブは、HER2に結合してその活性を阻害する抗体医薬である。HER2は全固形腫瘍の2~3%で増幅または過剰発現するが、HER2に対する治療薬は、乳がん、胃がん、胃食道がんでしか承認されていない。

試験には、治療薬がすでに承認されている腫瘍を除くさまざまな種類の腫瘍の患者258人が登録された。最も多く登録されたがん種は、大腸がん、胆道がん、非小細胞肺がんであった。試験でみられた副作用は、これらの薬剤について過去に報告されているものと一致した。

腫瘍退縮を示す客観的奏効が確認されたのは60人(23.3%)で、うち5人が完全奏効であった。病勢コントロール率は44.6%で、奏効期間は7.9カ月であった。注目すべきは、KRAS変異を有する患者の奏効率は高くなく、客観的奏効は26人中わずか1人であった。

「この試験では、腫瘍の種類を越えた有効性の評価におけるバスケット試験デザインの有用性、そして共変異の影響がまさに証明されました」と、演者の実験的がん治療部門教授Funda Meric-Bernstam医師は述べている。「これらの薬剤は、KRAS野生型腫瘍、HER2増幅腫瘍またはHER2過剰発現腫瘍といったさまざまな種類の腫瘍で活性があり、大腸がんと唾液腺腫瘍では顕著な活性を示しました。しかし、KRAS変異腫瘍では活性が限定的であったことから、精密腫瘍学では治療選択に際して全ゲノムプロファイルを考慮する必要があることを強調しています」。

PARP阻害薬耐性卵巣がん女性にオラパリブ併用または非併用のadavosertib[アダボセルチブ]が有効(アブストラクト#5505

ランダム化非比較第2相EFFORT試験の臨床試験結果は、Wee1阻害薬のアダボセルチブを単剤またはPARP阻害薬のオラパリブと併用投与した場合に、PARP阻害薬耐性卵巣がん患者に有効であることを示した。

この試験は、PARP阻害薬に対する耐性が、プロテインキナーゼのWee1を阻害することで逆転する可能性があることを証明した初期の研究に基づいた。Wee1は、DNA損傷の修復経路やチェックポイントの調節に関与することから、がんの有望な治療標的になっている。

試験には、PARP阻害薬の投与後に進行が確認された再発卵巣がん、卵管がん、または原発性腹膜がんの患者80人が登録された。アダボセルチブのみを投与された患者では、23%の奏効率(ORR)、63%の臨床的有用率(CBR)を達成したのに対し、アダボセルチブとオラパリブを併用投与された患者では、29%のORR、89%のCBRを達成した。

ここ数年、卵巣がんに対していくつかのPARP阻害薬が米国食品医薬品局(FDA)によって承認され、がん治療におけるこれらの薬剤の使用が年々増加しているが、がん細胞がこの新しい種類の薬剤に対して耐性を獲得し、治療効果が低下する可能性がある。

「これらの結果は、未だ満たされていない重要な医療ニーズを満たすものです。臨床的には、PARP阻害薬の効果が期待される患者で自然耐性が認められます。逆に、最初は効果があっても最終的には疾患が進行してしまう患者もいます」と、演者の婦人科腫瘍・生殖医療科准教授Shannon Westin医師は述べている。「このような2つの患者集団が増加しており、私たちは日々の診療で、こういった患者に遭遇します」。

翻訳工藤章子

監修尾崎由記範(腫瘍内科・乳腺/がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科)

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