脳転移の定位手術的照射について総括レビュー/米国放射線腫瘍学会(ASTRO) | 海外がん医療情報リファレンス

脳転移の定位手術的照射について総括レビュー/米国放射線腫瘍学会(ASTRO)

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

脳転移の定位手術的照射について総括レビュー/米国放射線腫瘍学会(ASTRO)

米国放射線腫瘍学会(The American Society for Therapeutic Radiology and Oncology 、ASTRO) による、脳転移に対する定位手術的照射の役割についてのエビデンスにもとづいたレビュー 2005/9

The American Society for Therapeutic Radiology and Oncology(ASTRO) evidence-based review of the role of radiosurgery for brain metastases
Minesh P. Mehta, M.D., May N. Tsao, M.D., Timothy J. Whelan, M.D., David E. Morris, M.D., James A. Hayman, M.D., John C. Flickinger, M.D., Michael Mills, Ph.D., C. Leland Rogers, M.D., Luis Souhami, M.D.
Volume 63, Issue 1, Pages 37-46(1 September 2005)PMID: 16111570 原文へ

【目的】
脳転移を有する成人の患者に定位手術的照射を用いることについてのエビデンスを系統的に検証する

[pagebreak]


【方法】
このエビデンスにもとづいたレビューにおいて強調されるべきキーポイントの臨床的な質問を特定した。転帰として検討されたのは全生存率、QOLもしくは症状の制御、脳腫瘍の制御率や奏効率、毒性である。 MEDLINE(1990?2004 June Week 2), CANCERLIT(1990?2003), CINAHL(1990?2004 June Week 2), EMBASE(1990?2004 Week 25), and the Cochrane library(2004 issue 2) のデータベースがOVIDを用いて検索された。さらに、Physician Data Query(米国国立癌研究所の癌に関するデータベース、PDQ)、American Society of Clinical Oncology(ASCO)(1997?2004)、ASTRO(1997?2004)、そしてEuropean Society of Therapeutic Radiology and Oncology(ESTRO)(1997?2003) の会議録が検索された。文献検索からのデータは、チェックしたうえで表にした。この過程にはエビデンスレベルの評価を含めた。

【結果】
新たに診断された脳転移患者に対する治療では、全脳照射単独と、全脳照射に定位的手術照射の追加に対する3つの無作為化比較試験があり、前向き試験は無く、7つの後ろ向き試験(それらは今回のレビューの基準に合致した)があった。3ヵ所までの4cm未満の新たに診断された脳転移(一つの検討では4ヵ所まで)に対しては、全脳照射に加えて定位的手術照射を行った場合、全脳照射単独より有意に局所制御率を改善した(Level I-III evidence)。一つの大規模無作為試験によって、単発の脳転移の患者において全脳照射は生存率の改善が示された。この試験では全脳照射に比べ、全脳照射に定位的手術照射を加えたほうが、全体として、ステロイドの減量やKarnofsky performance statusを改善することが示されている。しかしながら、有効な手段を用いた全体としてのQOLの帰結に関してのLevel I エビデンスは報告されていない。すべての無作為試験で、全脳照射に定位的手術照射を加えたほうが局所制御率を改善した。
多発性脳転移の患者に対しては、全脳照射後の定位的手術照射には全生存率に関して改善はみられない(Level I-III evidence)。定位的手術照射追加には、早期・晩期のわずかなリスクを伴う。初期治療として定位的手術照射単独(全脳照射を差し控える)で治療された患者については、2つの無作為試験、2つの前向きコーホート試験、そして16の後ろ向き試験があった。定位的手術放射線治療単独は、全脳照射に比べて生存率を変えないというLevel I から Level III のエビデンスがある。しかしながら、全脳照射を省略することによって、局所と遠隔(照射野外の残りの脳と定義)での頭蓋内病変の制御が、より悪いというLevel I から Level III のエビデンスがある。QOLの結果については充分に報告されていない。定位的手術照射追加には、早期・晩期のわずかなリスクを伴う。脳転移のある患者に対する救済治療としての定位的手術放射線照射については無作為試験は無く、1つの前向き試験、そして7つの後ろ向き試験があった。

【結論】
Level I-III エビデンスにもとづいて、サイズが小さく(4cmまで)で少数の脳転移(3ヵ所まで。1つの前向き試験では4ヵ所まで)の患者では全脳照射単独に比べて、全脳照射に定位的手術照射を加えたほうが脳の制御を改善する。単発の脳転移症例では、全脳照射後に定位的手術照射を加えることで生存率を改善する。全脳照射単独に比べて、定位的手術照射を加える場合にわずかな副作用がある。新たに脳転移と診断された患者に対して定位的手術照射で治療した場合、全生存率には変化は見られなかった。しかしながら、前もって全脳照射を省略した場合、有意に局所と遠隔の脳の制御は悪かった(Level I-III evidence)。神経認知力もしくはQOLについては、最初から定位的手術照射単独の場合と、全脳照射(定位的手術照射を加えた場合、加えない場合)の場合との差異は不明である。なぜなら、このことは充分に検討されていない。全体としての副作用に関しては、定位的手術照射単独と、全脳照射に定位的手術照射を加えたものとの比較について、1つの前向き試験での中間報告では有意な差は認めなかった。脳転移の再発や進行といった状況で用いられる定位的手術照射の臨床的な有用性/リスクに関しては、画像的な反応はよく記載されてはいるが、充分なエビデンスが無い。

(平 栄(放射線腫瘍科) 翻訳寄稿)



[要約]






3ヶ所以下の脳転移の場合

(一つの検討では4ヵ所まで) 全脳照射+定位手術的照射(無作為化比較試験3、後ろ向き試験7)
・ 全試験で局所制御率を改善(エビデンスレベルI-III )
・  全脳照射単独に比べ、生存率改善、ステロイド減少、カルノフスキー・パフォーマンス・ステイタス改善(1つの大規模無作為試験)
・ QOL改善のレベルⅠエビデンスなし






多発性脳転移の場合

全脳照射+定位手術的照射
・ 全生存率改善みられない(エビデンスレベルI-III )
・ 定位手術的照射追加には、早期・晩期のわずかなリスクを伴う。 ■定位手術的照射のみ(初期治療)(無作為試験2、前向きコーホート試験2、後ろ向き試験16)
・ 全脳照射に比べて生存率変わらない(エビデンスレベル I ‐III)
・  全脳照射を省略することによって、局所と遠隔(照射野外の残りの脳と定義)での頭蓋内病変の制御は有意に劣る
・  神経認知力、QOLの結果については検討なし
・  副作用は、全脳照射+定位手術的照射に比べて有意差なし(1つの前向き試験中間報告)






脳転移のある患者に対する救済治療

定位手術的照射(無作為試験0、前向き試験1、後ろ向き試験7)
・ 臨床的な有用性/リスクに関しては、画像的な反応はよく記載されてはいるが、充分なエビデンスが無い

(野中 希 作成)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新...
  3. 3免疫療法薬の併用はタイミングと順序が重要
  4. 4リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  5. 5FDAが皮膚未分化大細胞リンパ腫にブレンツキシマブ・...
  6. 6血中循環腫瘍DNAに基づくリキットバイオプシーの可能...
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  9. 9FDAがHER2陽性早期乳がんの延長補助療法にネラチ...
  10. 10若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い

お勧め出版物

一覧

arrow_upward