2010/10/19号◆スポットライト「『よりスマートな』前立腺癌の生検法の検証」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/10/19号◆スポットライト「『よりスマートな』前立腺癌の生検法の検証」

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2010/10/19号◆スポットライト「『よりスマートな』前立腺癌の生検法の検証」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年10月19日号(Volume 7 / Number 20)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ スポットライト ◇◆◇

「よりスマートな」前立腺癌の生検法の検証


63歳のアフリカ系米国人であるその患者は、10年間の間に10回の前立腺生検をうけ、毎回癌陰性の結果が返ってきていた。その患者の前立腺特異抗原(PSA)が上昇していることに基づいて、彼の泌尿器科医は前立腺癌の存在を疑いながらそれを証明できないでいた。この春、ついにその泌尿器科医は、研究的な画像ガイド下前立腺生検の臨床試験に登録させるため、彼をNCI癌研究センター(CCR)のDr. Peter Pinto氏の元へ紹介した。

新しい方法を用いて、Pinto氏らは患者の前立腺内に6カ所の病変を見出した。そのすべてが癌であった。その病変は腹側にあり、従来の生検法や直腸診では評価の難しい部位であった。しかしその病変はMR検査で明らかとなり、Pinto氏は画像ガイドシステムを用いて前立腺内の正確な部位から組織を採取した。

CCRの泌尿器癌支部のメンバーであるPinto氏が「患者が私たちのところにやってきたとき、泌尿器科医に対するかなりの鬱憤がありました。というのも、その泌尿器科医は異なった結果を期待して同じ生検手法を何度も何度も繰り返してきたのです」と振り返った。「しかし、画像ガイド法が使用できるようになるまで、本当にほかの選択肢はなかったのです」。

生検の結果を知らされた後、患者は前立腺を外科的に摘除することを選択し、Pinto氏はNIHの臨床センターで手術を施行した。

MRIと超音波画像の融合

臨床医・研究者・エンジニア・コンピュータ科学者からなる総合的チームによって開発され、画像ガイド下生検は全体的な部位診断機器となった。患者の最初のMRI画像は、前立腺内の特定の部位に針を誘導し、癌が疑われている部位をマッピングするための型となる。生検に先立ち、MRIのデータはリアルタイムの超音波画像と統合、あるいは融合され、それらが共同して生検手技をガイドする。

「この技術は、よりスマートでより正確な生検を提供します」とNIHのインターベンショナル・オンコロジー・センターの長であり、この研究をCCRのPinto氏やDr. Peter Choyke氏ととものこの研究を主導したDr. Bradford Wood氏は述べた。「大抵の場合、従来の生検法は適切でありません。疑わしい部位は標準の方法では隠れていることがあり、今回の方法では、組織のマッピングのための、別の手法を提供するものです。」

従来の前立腺生検では、前立腺内の選択された部位に6〜12箇所針を刺入する(これらの刺入部位は記録されない)。この方法は包括的とはいえず、癌を見落とす可能性がある。さらに、癌を検出した針が病変の中心に当たっているとは限らず、その結果医師が患者の病期を過小評価する原因になりうる。


動画原文参照

「この臨床研究に参加した患者は、針生検では前立腺癌の中で起こっていることの全体像は掴めないということを認識しています」と、NCIの分子画像プログラム長であるChoyke氏は述べた。「彼らは喜んでMRIにやってきます。というのも、彼らは自分の疾患に関するよりよい画像を求めているからです」。

Pinto氏はさらに、「私には、前立腺癌は医師たちがランダムに臓器をサンプリングすることによって診断している唯一の固形腫瘍であるように思われます」と語った。

画像ガイドシステムによって従来の前立腺生検に比べて所要時間は5〜7分長くなるだけであると、CCRの放射線科フェローであるDr. Baris Turkbey氏は延べた。彼はこの臨床試験において、約260人ものMRI検査を監督した。この技術はまた実験的なものであるとはいえ、NIHの研究者らは協賛企業であるPhillipsヘルスケアと共同して研究の基本システムを、泌尿器科医が外来診療において使用できるような市販向けの医療器具に移行するように取り組みを続けている。

今回の研究において、研究者らはこの技術を説明し、50人の患者の結果について報告した。研究者らは、前回の生検部位を記録するだけでなく、次回の生検においてこれまで生検されていない部位から組織を採取するように誘導するのにこのシステムは役に立つかもしれないと結論づけた。生検の針には追跡用の装置が付いているので、監視療法(※PSA監視療法)−以前は待機療法と呼ばれていた−を受ける患者にとっては、各サンプルの正確な部位を記録しておくことができる。

標的治療に向けて

癌を発見することに加え、このシステムによって、より標的を絞った疾患の治療につながる可能性がある。「この基本システムは、いつの日か、前立腺癌患者にfocal therapy(部分治療)を提供できるようになるために、重要な役割を果たすだろう」とPinto氏は述べた。Focal therapy(部分治療)とは、健康な組織を残しつつ前立腺内の病変のみを冷凍ないし焼灼する技術のことをいう。

前立腺内の病変のみを冷凍あるいは焼灼する技術はすでに存在する、とChoyke氏は指摘した。「しかし、この領域において決定的な問題は『どうやって標的を同定するか』だった」。

研究者にとってもう一つの課題は、いかにして致死的な前立腺癌と、患者の生涯にわたって害をなさない癌とを区別するかである。現在行なわれている前立腺癌の治療は前立腺全摘除術、放射線、焼灼などであるが、前立腺全体を治療の標的にしている。そして全て尿失禁や直腸損傷、性機能の喪失といった副作用の可能性がある。

画像ガイド下生検に加えて、研究者らは単に癌の部位を知るだけでなく癌の生物学的情報を提供できる分子造影剤の試験を行なっている(下記ビデオを参照)。この2つのアプローチはお互いに補い合うものであり、致死的な癌とそうでない癌とを区別する方法につながる可能性があると研究者らは述べた。

Woods氏によると、現在の研究の目標は「診断と治療の間のギャップを狭めること」であるという。単に患者の癌を診断するだけでなく、研究者らは診断の際に収集した情報を治療のときにも使えるようにしたいと考えている。この目的のために、画像システムは前立腺内の病変を標的とできるように修正されるかもしれない。そして臨床試験は前立腺のfocal therapy(部分治療)を用いるよう設計されつつある、とWoods氏は語った。

現在の試験では、Pinto氏が患者の前立腺を外科的に摘除した後、摘除した前立腺は特別に設計された型の中に入れられてNCIの病理研究室に送られる。そこではDr. Maria Merino氏が画像診断研究で用いられた「切断面」に従って標本を検査し、MRIで認められた疑わしい病変が本当に癌であったかどうかを検証している。この過程によって、最終的にMRIで見出された病変がどのタイプの疾患と相関しているかが明らかにされる。

さて、試験に参加している患者らは研究の進展に助けとなっている。ある患者がPinto氏に次のように語った。「私の父は前立腺癌で、私も前立腺癌です。この研究に参加して、もし私の息子が同じ病気になったとしたら息子はよりよい治療を受けることができるだろうということがわかりました」。

— Edward R. Winstead

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榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院) 訳・監修
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