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アメリカがん協会(ACS)子宮頸がん検診ガイドライン最新版を解説

  • 2020年10月30日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

子宮頸がんと子宮頸がんによる死亡を予防するために、検診は非常に有効である。
7月30日、アメリカがん協会(ACS:American Cancer Society)は子宮頸がん検診ガイドライン最新版を公表した。同ガイドラインの推奨内容は、旧版ならびに他団体の推奨内容といくつかの点で異なっている。子宮頸がん検診の専門家であるNicolas Wentzensen医学博士(米国国立がん研究所[NCI]のがん疫学遺伝学部門所属)がその変更点を解説する。

》子宮頸がん検診の推奨内容は変更されたか

ACSの最新ガイドラインには、旧版と2つの大きな違いがある。1つは検診の開始年齢を若干高くしたこと、もう1つはHPV検査という検査を優先的に推奨していることである。

ACSは、子宮頸部を有する25~65歳を対象に、5年ごとにHPV検査単独による子宮頸がん検診を実施することを推奨している。HPV検査が実施されない場合は、その代わりにHPV+細胞診の同時検査を5年ごとに実施するか、細胞診を3年ごとに実施しても良い。

上記の推奨内容は、2012年のACSの推奨や、2018年の米国予防医学専門委員会(USPSTF)の推奨と少し異なっている。

》HPV検査のみ、細胞診のみHPV+細胞診の同時検査、それぞれの違いは何か

細胞診は、パップテストやパップスメアともいい、子宮頸部でがん化する可能性がある異常な細胞を検出する検査法である。HPV検査は、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスを検出するものである。HPV+細胞診同時検査では、HPV検査と細胞診を同時に行う。

診察室でHPV検査と細胞診は同じ方法で実施される。スクレーパーやブラシで子宮頸部の細胞検体を採取する方法である。

過去数十年間、細胞診は子宮頸がん検診の主たる方法であった。HPV検査は子宮頸がん検診の新しい手法である。

検診の一次検査(HPV単独法)として2つのHPV検査が米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているが、これはHPV+細胞診同時検査の一部としての承認ではない。その2つ以外のHPV検査はHPV+細胞診同時検査(併用法)の一部として承認されている。

》新ガイドラインで、細胞診や、HPV+細胞診同時検査よりもHPV検査が推奨される理由は何か

上記の3つの検査はいずれも、がんになる前の子宮頸がん前駆病変を検出することができる。しかし、複数の試験が細胞診よりもHPV検査の方がより正確で信頼出来ることを示している。

また、HPV検査により子宮頸がんの可能性を高い精度で除外できるため、HPV検査は頻繁に実施する必要がない。

細胞診は、子宮頸がんの発症率やそれによる死亡率を大幅に低下させているが、いくつかの限界がある。細胞診はHPV検査に比べて感度が低く、前がん病変を見逃す可能性があるため、頻繁に実施する必要がある。細胞診はさまざまな異常な細胞変化を検出するが、HPVとはまったく無関係の軽微な変化も検出する。そのため、細胞診の結果が異常であった多くの人々が、子宮頸がんを発現する可能性は実際のところ非常に低い。

HPV+細胞診同時検査はHPV検査単独よりもわずかに感度が高いが、2つの検査を必要とするため効率が良くない。また、HPV+細胞診同時検査はがん化する可能性が非常に低い微小な変化を多く検出する。集団全体に実施すれば、手間と費用が多くかかる。

HPV検査単独での検診は、FDAに承認されていないため、2012年時点でアメリカがん協会(ACS)が非推奨としていた。2018年のUSPSTFガイドラインには、HPV検査単独、HPV+細胞診同時検査、細胞診を同等の選択肢として記載していた。新しいACSガイドラインがこれまでと異なる点は、HPV検査単独を他の2つの検査より上位に評価していることである。

》新ガイドラインが、現行の21歳に代わり25歳から検診を開始するよう推奨しているのはなぜか

新たな研究から得た情報により、21~24歳では子宮頸がん検診の利益は同検診が与える不利益を上回らないとアメリカがん協会(ACS)は結論付けた。

検診開始年齢の変更は、HPVワクチンと関連した重要な変更である。低年齢でHPVワクチンを接種した初の女性コホートは、現在20代であり、子宮頸がん検診の対象者である。

HPVワクチンは、HPV感染を非常に良く予防し、特に子宮頸がんの主な原因である16型と18型に効果がある。

そのため、低年齢時に接種されたワクチンは、この年齢群において、HPV感染率と子宮頸部の前がん病変発現率の低下をもたらした。

また、若い女性では大半のHPV感染は自然と治癒する。この年齢群の女性を検査することにより、副作用の可能性を持つ不必要な治療につながることも多い。以上がACSが検診を25歳から開始することを推奨する理由である。

》65歳以上に対する推奨内容は変更されたか

この年齢群に対する推奨は以前と同じである。長期に渡って検診結果が正常な場合、65歳で検診を終了して良い。過去に検診で異常な結果や疑いがみつかった場合、または子宮頸がんや前がん病変の治療を受けた場合は、65歳を過ぎた後も検診を継続すべきである。過去数年間、子宮頸がん検診の推奨年齢上限はどのガイドラインでも同様であった。

しかしこの領域に関するデータが少ないために、年齢上限を研究するための取り組みが現在なされている。高齢で異常な検診結果が出た人々を調査し、今後も検診を必要とするか、またはより頻繁に検診を行うべきかを判断することに、以前よりも関心が集まっている。

》これらの検診が命を救うならば、より頻繁に検査を受けたり、検査項目を増やしたりすべきか

その必要はない。検査項目を多くした場合、頻繁に実施しすぎてかえって害になる可能性がある。子宮頸がん検診に伴うリスクがいくらか存在する。

検診および経過観察での検査は、身体的な苦痛をもたらすことがある。検査結果が誤っていたり、偽陽性であることにより、不安やその他の感情が現れる可能性もある。また結果が誤っていた場合、経過観察での不必要な検査や、不必要な治療を受ける可能性がある。

子宮頸がんや前がん病変の治療は、永続的に子宮頸部を変化させる。この変化により、将来の妊娠時に流産や早産などの重篤な合併症が起きるリスクが高くなる可能性がある。

このように、検査をより頻繁に、またはより多い項目数で実施することは良い考えのようだが、実際はかえって害になることがある。ACSは、各年齢群に対するそれぞれの検診の利益と不利益を慎重に評価し、最新版の推奨内容を決定した。

》HPVワクチンを接種した人々も子宮頸がん検診を受ける必要があるか

新ガイドラインは、HPVワクチン接種済みの人々に対する検診も推奨している。同ガイドラインは、各個人のHPVワクチン接種状況に基いて、検診を行うかどうかの判断をすることを推奨していない。

しかし、子宮頸がん検診の対象者の間でHPVワクチンの接種率が徐々に上昇しており、将来的に検診の推奨内容に更なる変化が認められるかもしれない。

》なぜ子宮頸がん検診のガイドラインは変化し続けるのか。

状況が活発に変化しており、ガイドラインが変わり続ける理由は複数ある。一つはHPVワクチンで素晴らしい効果が得られたことにより、検診の状況が継続的に変化していることである。

HPV検査のような新技術の開発、そして検診後の経過観察に使用する二次検査の一部が改善されたことも挙げられる。

これらの改善により、子宮頸部の前がん病変や子宮頸がんの発現率をより正確に予測することが可能になった。大規模試験から新しいエビデンスを得たことで、女性や保健医療制度により良い成果を提供するために、検診の実施方法を新しくすることが現実的になった。

》子宮頸がん検診で異常な結果が出た後はどうなるか。

異常または疑いがみつかった場合、また陽性の検査結果が出た場合は、通常二次検査を受ける。通常の方法はパップテストを受けることであるが、二重染色というFDA承認済みの検査もある。二重染色検査は、前がん病変が存在するという信号をより正確に示すことができる2種類のバイオマーカーを使用する。

二次検査の結果は、コルポスコピーの必要の有無を判断する手助けとなる。コルポスコピーとは、拡大鏡で子宮頸部を観察し、子宮頸部の異常にみえるスポットから検体を採取する検査である。

米コルポスコピー・子宮頸部病理学会(ASCCP)は、近頃、子宮頚がん検診で異常な結果が出た患者のケアのための最新ガイドラインを公表した。同ガイドラインは複数の医療協会、連邦政府関係機関、患者代表による大規模なコンセンサス形成の取り組みの成果である。私自身も含む複数名のNCI所属の研究者が、詳細なリスク評価および体系的な文献レレビューを行い、同ガイドラインの確立を支援した。

同ガイドラインは、子宮頸がんと前がん病変のリスクについてわれわれが有する情報を全て用いて、医師が患者の総合的なリスクレベルに基づいて経過観察の内容を決定する際の手助けを行うフレームワークを提供する。

2012年のASCCPガイドラインは、患者が受けた検査およびその結果に基づくものであった。新しい推奨内容はより精密で、子宮頸がんや前がん病変のリスクを決定する多くの因子に則している。因子には年齢や過去の検査結果などがある。

現在、医師は検査結果を組み合わせてリスクを判断し、コルポスコピーを受けるべきか、または1年以内に今回と同じ検診を再度受けるべきかなどを決定する。

*サイト註:日本の子宮がん検診については、

「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」国立研究開発法人国立がん研究センター

 

翻訳塚本真理子

監修斎藤 博(がん検診/青森県立中央病院)

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