[ 記事 ]

ペムブロリズマブが特定のDNA変異を有する進行大腸がんの無増悪生存を2倍に

ASCOの見解

ASCO会長のHoward A. Burris III医師( 米国内科学会フェロー:FACP、米国臨床腫瘍学会フェロー:FASCO)によれば、「ペムブロリズマブや同様の免疫療法薬が、進行がんの二次治療として有効であることは証明済みです。今回のような試験では、特定の遺伝子的特徴がある進行がん(本試験は高頻度マイクロサテライト不安定性/ミスマッチ修復遺伝子欠損変異がある切除不能な大腸がん)の一次治療として、免疫療法の有意な有効性が確認され始めています。今回発表されたデータは、標準治療を変える可能性があります」。

アブストラクトはこちら

発表動画はこちら

バージニア州アレキサンドリア発 – 高頻度の突然変異を有する切除不能な大腸がんの患者では、以前の研究で予後不良の可能性もあると示唆されていたが、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)を一次治療に用いたところ、化学療法と比較して無増悪生存期間が2倍に延長した。ペムブロリズマブがこのような大腸がん患者の一次治療に有効であることが示されたのは今回が初めてのことである。この知見は、2020年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のバーチャル科学プログラムで発表される第III相KEYNOTE-177試験の中間解析から得られた。

試験の概要 

  【主題】    高頻度マイクロサテライト不安定性/ミスマッチ修復遺伝子欠損の(MSI-H/dMMR)切除不能な大腸がん患者の一次治療としてのペムブロリズマブ

  【対象】    切除不能な大腸がん患者307人

  【結果】    ペムブロリズマブにより無増悪生存期間がさらに8.3カ月延長

  【意義】    一次治療の新たな標準治療としてのペムブロリズマブの位置づけを裏付ける

一次治療に化学療法(標準治療の併用を含む)を使用したときの無増悪生存期間は8.2カ月であったのに対し、ペムブロリズマブは16.5カ月であり、高頻度マイクロサテライト不安定性/ミスマッチ修復遺伝子欠損(MSI-H/dMMR)の切除不能な大腸がん患者の新たな標準治療薬としての地位を確立した。

パリのソルボンヌ大学とサン・タントワーヌ病院に勤務する主著者Thierry André医師は次のように話している。「今回の待望の試験結果によって臨床現場が変わるでしょう。ペムブロリズマブは、進行大腸がん患者のなかでもこの集団を対象とした複数の非ランダム化試験で有効性が示されていました。このランダム化試験は、ペムブロリズマブによる一次治療から大きな効果が得られることを実証するものであり、これが新たな標準治療となるはずです」。

切除不能な大腸がん患者の約5%に高頻度のマイクロサテライト不安定性が認められ、これは高頻度に遺伝子変異が存在していることを意味する。MSI-H/dMMRでは、DNA修復機能が低下しており、突然変異の数が増加する。以前の研究では、一部の患者でMSI-H/dMMRの腫瘍の存在が生存率の低さと関連していることが示唆されており、MSI-H/dMMRの切除不能ながんの患者は従来の化学療法に対する反応性が低いとされている。

これまでの研究では、化学療法に抵抗性であるMSI-Hの切除不能な大腸がんでは、ペムブロリズマブに対する反応が良好で、生存期間が長くなることが示されている。ペムブロリズマブは、免疫系の働きを抑制するタンパク質であるPD-1と呼ばれる受容体の活性を阻害することによって、免疫系ががん細胞を攻撃できるようにする。

主な結果

12カ月目と24カ月目の経過観察時に、無増悪生存率はペムブロリズマブ群で55.3%と48.3%であったのに対し、化学療法群は37.3%と18.6%であった。腫瘍縮小が認められた患者の割合(客観的奏効率)は、化学療法が33.1%であったのに対し、ペムブロリズマブ群では43.8%と良好であった。ペムブロリズマブ群の11%に完全奏効(がんが検出されない)、32.7%に腫瘍縮小(部分奏効)、30.9%に病勢安定が認められた。一方、化学療法群では、完全奏効が3.9%、部分奏効が29.2%、病勢安定が42.2%であった。また、ペムブロリズマブは奏効期間も長く、83%の患者に2年以上の奏効がみられたのに対し、化学療法を受けている患者では35%であった。

重篤な治療関連有害事象(グレード3以上)も、ペムブロリズマブでは化学療法よりも少なかった(22%対66%)。毒性プロファイルは両群間で大きく異なり、ペムブロリズマブ群では免疫介在性有害事象(大腸炎と肝炎)、化学療法群では下痢、好中球減少症、疲労、悪心・嘔吐、口内炎、脱毛症、神経毒性など典型的な化学療法の毒性が最も多かった。

試験について

本中間解析のデータカットオフ日(2020年2月19日)時点で、本試験の対象患者はMSI-H/dMMRの切除不能な大腸がん患者307人であった。各患者は、一次治療として最大2年間のペムブロリズマブ投与か、ランダム化の前に選択された6種類の標準化学療法レジメンの中から試験担当医師が選択したものに無作為に割り付けられた。試験担当医師の治療選択肢は、mFOLFOX6(5-FU、ロイコボリン、オキサリプラチン)、mFOLFOX6+ベバシズマブ、mFOLFOX6+セツキシマブ、FOLFIRI(ロイコボリン、5-FU、イリノテカン)、FOLFIRI+ベバシズマブ、FOLFIRI+セツキシマブであった。

無増悪生存期間と全生存期間を主要評価項目とした。主な副次評価項目には全奏効率と安全性が含まれていた。

次のステップ

患者には、病勢進行時に化学療法群からペムブロリズマブ群へのクロスオーバーが許可されていた。本試験では引き続き全生存期間を評価する。

資金提供 本試験は Merck & Co., Inc. から資金提供を受けた。

翻訳ギボンズ京子

監修中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

原文を見る

原文掲載日

【免責事項】

当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。
翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

関連記事