1日に歩いた歩数が多いほど、全死因による死亡率は低下

1日の歩数が多いほど、全死因死亡リスクが低下することが新たな研究で示された。米国国立がん研究所(NCI)および米国国立老化研究所(NIA)(いずれも米国国立衛生研究所の機関)の研究者、ならびに米国疾病管理予防センター(CDC) の研究者からなる研究チームは、歩行の強度ではなく、1日に歩いた歩数が死亡率と強い関連があることも明らかにした。

この知見は、JAMA誌に2020年3月24日付で公開された。

「身体活動が良いことは知っていましたが、死亡リスクを下げるために必要な1日当たりの歩数や、高い歩行強度に効果があるかどうかはわかりませんでした。私たちは、この疑問を調査して、フィットネストラッカーや携帯電話のアプリで表示される歩数が示す健康的意味合いを人々にもっと理解してもらえるような新たな見識を提供したかったのです」と、NCIがん疫学・遺伝学部門に所属し本研究の筆頭著者であるPedro Saint-Maurice博士は述べた。

これまで、歩数と死亡率に関する研究はあったが、それらの研究は主に高齢者や身体が衰弱する慢性疾患を有する人々を対象に実施されたものであった。本研究は、米国の40歳以上の成人の代表的調査サンプルを追跡したもので、2003~2006年に、約4,800人の参加者が最長7日間にわたり加速度計を装着した。その後、National Death Index(全米死亡指標)システムにより、2015年まで参加者の生死の別を追跡した。研究者らは、人口統計学的および行動的リスク因子、肥満度指数、ならびに研究開始時の健康状態で調整した後、死亡率、歩数、歩行強度の相互の関連を算出した。

その結果、1日8,000歩を歩くと、成人として少ないとされる1日4,000歩と比較して、全死因死亡のリスクが51%低いことがわかった。1日12,000歩を歩くと、4,000歩と比較して、リスクが65%低かった。一方、1日当たりの総歩数を考慮しても、歩行強度と死亡リスクとの間に関連性はみられなかった。

「国立老化研究所では、高齢者については運動がいかに重要であるかを長年研究してきましたが、広範な参加者での大規模な研究から、年齢を重ねるにつれて、全身的なより良い健康のために体を動かすことが重要であるという、さらなる証拠が得られたことは喜ばしいことです」と、共著者で国立老化研究所内研究プログラムの科学者であるEric Shiroma博士は述べた。

参加者のサブグループ別に分析したところ、男性と女性、若年成人と高齢者、ならびに白人成人、黒人成人およびメキシコ系米国成人において、歩数が多いほど全死因死亡率が低いことが明らかになった。本研究の副次的転帰として、歩数が多いほど心血管疾患およびがんによる死亡率も低下していた。

データ収集は、米国における成人および小児の健康と栄養状態について全国規模の代表的調査サンプルの評価用に設計した研究プログラムである、米国疾病管理予防センターの全国健康栄養調査(NHANES)を通じて実施した。

研究者らは、1日当たりの総歩数で調整後、歩行強度と全死因死亡率との間に関連性がみられなかったことに驚いた。日常生活を送っている成人の死亡率と歩行強度との関連を調査した研究はほとんどないため、歩行強度と死亡率に関するさらなる研究が必要であると本研究の著者らは書いている。

本研究の著者らは、結果に影響を与える可能性のある要因について調整したが、本研究は観察的なものであり、因果関係を証明することはできない。とはいえ、研究の結果は、成人は1日を通してもっと動き、 座っている時間を減らすべきであるという現在の推奨事項と一致している。どの程度であれ身体活動をしている成人であれば、なんらかの健康効果は得ている。さらに大きな健康効果を得るためには、成人は強度としては中等度の身体活動を、週に少なくとも150分行うことが推奨される。

「身体的にアクティブでいることには、肥満、心臓病、2型糖尿病、および一部のがんのリスクを低減するなど、多くの利点があり、さらに日常的には、気分よく過ごし良質な睡眠をとるのを助けます。米国疾病管理予防センターは、人々がそれぞれの地域でより簡単、安全、そして便利にアクティブでいられるように、『活動的な国民、健康的な国』運動(Active People, Healthy Nation initiative)の一環として、全国のコミュニティやパートナーと協働しています」と、米国疾病管理予防センターの栄養・身体活動・肥満部門のJanet Fulton博士は述べた。

参考文献:1. Saint-Maurice PF, Troiano RP, Bassett DR, et al. Association of Daily Step Count and Step Intensity with Mortality Among US Adults. JAMA. March 24, 2020. doi:10.1001/jama.2020.1382

翻訳担当者 松谷香織

監修 前田 梓(医学生物物理学/トロント大学)

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