再発卵巣がんの二次手術で全生存は改善されない

プラチナ感受性の再発卵巣がん患者において、二次腫瘍減量術とその後に行う化学療法は、化学療法単独と比べて生存期間を延長しないとの知見が、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者から報告された。

第3相Gynecologic Oncology Group (GOG)-0213試験の結果が、本日、New England Journal of Medicine誌で発表された。この研究の初期結果は、2018年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で初めて発表されている。

全生存期間(OS)は、手術群で50.6カ月、非手術群で64.7カ月であった。無増悪生存期間(PFS)中央値は、手術群18.9カ月に対して非手術群16.2カ月であった。3年生存する患者の割合は、手術群で67%、非手術群で74%であった。

「腫瘍減量術は、初発卵巣がんに対する初回治療の重要な要素と認識されていますが、再発卵巣がんでの役割は有益と謳われながら、正式に検証されていませんでした」と、本臨床試験責任医師のRobert L. Coleman医師(婦人科腫瘍学・生殖医学教授)は言う。 「本研究は、この設定で行われた最初のランダム化比較臨床試験であり、二次手術がこれらの患者に有益ではないことを示しています」。

国際ランダム化比較試験で対象とした患者は、プラチナ感受性で再発した上皮性卵巣がん、原発性腹膜がん、または卵管がんの女性で、最初に少なくとも3サイクルのプラチナベース化学療法を行って完全奏効を示し、血清CA-125値が正常値であった。

2007年12月6日から2017年6月9日まで、患者を無作為に振り分け、240人を二次腫瘍減量術とそれに続くプラチナベース化学療法を受ける群、245人を化学療法のみを受ける群とした。追跡期間の中央値は48.1カ月であった。

手術を受けた患者の67%で腫瘍が完全に切除され、腫瘍を完全には切除できなかった患者と比較して、全生存期間と無増悪生存期間の延長につながった。しかし、完全切除グループを非手術群と比較した場合、無増悪生存期間で有益性があったが、全生存期間では有益性がみられなかった。

患者報告による転帰には、生活の質、身体機能、手術関連症状が含まれていた。手術群の患者は、生活の質および身体機能の有意な低下と、手術直後の手術関連症状の増加を報告した。回復後については両群間に有意差はなかった。

現在の全米包括的がんセンターネットワーク(NCCN)ガイドラインでは、前回化学療法からの完全寛解後6カ月以上治療を必要としなかった患者に対する治療選択肢の一つとして二次腫瘍減量術を挙げている。

「今回の研究結果から、再発卵巣がん患者に対する二次手術の有用性を問い直す必要があります」とColeman医師は言う。「本研究や他の進行中の試験が、これらの患者に対する最良の治療法の決定に必要となるデータを提供し、治療転帰と生活の質が最大限に改善されることを期待します」。

少なくとも3つの第3相臨床試験が同様の評価項目について設計され、現在進行中である。3試験は以下のとおり:

DESKTOP-III(ClinicalTrials.gov number, NCT01166737)、Surgery for Ovarian Cancer Recurrence(SOCceR; Netherlands Trial Register number, NL3137)、Surgery or Chemotherapy in Recurrent Ovarian Cancer(SOC 1; ClinicalTrials.gov number, NCT01611766)。

本研究は、GOG管理事務部門(CA27469)、GOG統計部門(CA 37517)、NRG 腫瘍グループ(1U10CA180822)およびNRG 運営部門(U10CA180868)に対する米国国立がん研究所(NCI)助成金、ならびに、米国国立衛生研究所/NCI助成金(award number P30CA016672)の一部から助成を受けた。 Roche/Genentech社は、本試験実施のためNCIの共同研究開発契約を支持した。Coleman医師は、Ann Rife Cox Chair in Gynecology、Judy Reis/Albert Pisani、MD卵巣がん研究基金の各基金の一部を受けている。

共同研究者の全リストとその開示情報は、論文内に記載されている。

翻訳担当者 山田登志子

監修 喜多川 亮(産婦人科/東北医科薬科大学病院)

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