FDAがHRD陽性進行卵巣がんにニラパリブを承認

2019年10月23日、米国食品医薬局(FDA)が3種類以上の化学療法歴があり、相同組換え修復異常(homologous recombination deficiency:HRD)陽性の進行卵巣、卵管または原発性腹膜がん患者に対するニラパリブ(販売名:ZEJULA, Tesaro, Inc社)の使用を承認した。HRDは、BRCAの病的変異もしくは病的変異疑い、または、プラチナベース化学療法に奏効がみられて、最終投与の6カ月以上後に病勢進行が認められた患者における遺伝子不安定性と定義された。

有効性は、HRD陽性進行卵巣がん患者98人を対象に、単群試験であるQUADRA(NCT02354586)において検討された。対象は、3種類以上の化学療法治療歴がある患者で、PARP阻害剤既治療患者は除外された。BRCA変異のみられない患者では、プラチナベース化学療法の最終投与から6カ月以上後に病勢進行が認められた場合は対象となった。HRD陽性は、Myriad myChoice CDxによる検査で、腫瘍のBRCA変異陽性(tBRCAm)(n=63)、あるいは、遺伝子不安定性スコア(genomic instability score:GIS)が42以上(N=35)の両方または片方があることにより決定された。すべての患者がニラパリブ300 mgを1日1回、病勢進行又は許容できない毒性が認められるまで投与された。

主要評価項目は、RECIST1.1に基づき試験担当医師が評価した奏効率(ORR)および奏効期間(DOR)であった。HRD陽性コホート98人のORRは24%(95%信頼区間[CI]:16~34)で、すべて部分奏効(PR)であった。推定DOR中央値は8.3カ月(95%CI:6.5~推定不可)であった。

腫瘍にBRCA変異のみられる卵巣がん患者におけるORRは、プラチナ感受性患者で39%(7/18人;95%CI:17~64)、プラチナ抵抗性患者で29%(6/21人;95%CI:11~52)、プラチナ不応性患者で19%(3/16人;95%CI:4~46)であった。

QUADRA試験において、ニパラリブの投与を受けた患者の73%に、減量または休薬に至った副作用が認められた。最もよく認められた減量または休薬に至った有害事象(5%以上)は、血小板減少症(40%)、貧血(21%)、好中球減少症(11%)、悪心(11%)、嘔吐(11%)、疲労(9%)、腹痛(5%)であった。

ニパラリブの推奨用量は、食事の有無を問わず1日1回300 mgである。投与に関してはFDAが承認したコンパニオン診断に基づいて患者を選択する必要がある。

ZEJULAの全処方情報はこちらを参照。

FDAは、腫瘍における相同組換え修復異常(HRD)ステータスを決定して、ニラパリブが適応となる患者を選択するために、Myriad myChoice CDx検査を承認した。

本適応に対して、病的であるか病的であることが疑われるBRCA変異、あるいは、遺伝子不安定性の両方または片方を検出するためにFDAが承認した検査に関する情報はこちらを参照。

FDAは本申請を優先審査に指定した。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム−医薬品およびバイオ医薬品」(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 後藤若菜

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

卵巣がんに関連する記事

HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023の画像

HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023

MDアンダーソンがんセンター(MDA)トラスツズマブ デルクステカンが治療困難ながんに新たな治療選択肢を提供する可能性

HER2を標的とした抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステ...
進行卵巣がんにオラパリブ、デュルバルマブの追加投与は無増悪生存期間を延長の画像

進行卵巣がんにオラパリブ、デュルバルマブの追加投与は無増悪生存期間を延長

米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)ASCOの見解「卵巣がんの早期発見法はなく、3分の2以上の患者が、再発のおそれが高い進行した状態で診断されます。さらなる研究が必要ですが、治...
ARID1A変異陽性卵巣がんにスタチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用を検討の画像

ARID1A変異陽性卵巣がんにスタチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用を検討

【MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト 2023/03/29】より前臨床卵巣がんモデルにおいて、スタチン併用療法が抗腫瘍効果を向上させるがん抑制因子ARID 1 Aの不活...
低異形度漿液性卵巣がんの分子特性を包括的に解析の画像

低異形度漿液性卵巣がんの分子特性を包括的に解析

【MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト 2023/01/11】より低異形度漿液性卵巣がんの包括的な分子プロファイルを解析した研究低異形度漿液性卵巣がん(LGSO...