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フレッドハッチンソンがん研究センターによるASCO2019発表

フレッドハッチンソンがん研究センターの免疫療法、がん関連ウイルスの予防、医療格差などに関する最新の知見が、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で紹介される。会議は「あらゆる患者の治療、あらゆる患者からの学び」というテーマで、5月31日~6月4日にシカゴで開催される。ハイライトとなる発表は次のとおりである。

【米国でのHPVワクチン】
米国ではなぜHPVワクチンの摂取量が非常に少ないのか
この教育セッションでは、フレッドハッチの医療経済学グループ、Hutchinson Institute for Cancer Outcome Research(HICOR)の行動科学者で薬剤師であるParth Shah博士が、いくつかの研究について検討し、米国でのHPVワクチンの導入における課題の概要を説明する。重要な分野として、導入率の向上を目的として行ってきた戦略を確認する。Shah氏は最近、どういったメッセージがHPVワクチンに関する両親の懸念や質問に最も有効であるかを評価する研究を主導し、Pediatrics誌で発表した。
6月2日日曜日、午前8:00〜8:15

【免疫療法・肉腫】
転移性・切除不能肉腫患者の治療におけるペムブロリズマブ(pem)とドキソルビシン(dox)の第1相・第2相試験
ドキソルビシン単独化学療法で治療された進行軟部肉腫患者は、無増悪生存期間中央値が4.6カ月で奏効率は14%である。肉腫の専門家であるフレッドハッチのSeth Pollack博士は、免疫療法薬ペムブロリズマブとドキソルビシンを併用した第1相・第2相試験を主導した。無増悪生存期間は既存対照と比較して有意に改善され、その傾向は生存期間の改善を示唆した。併用療法は目標奏効率の29%を満たさなかったが、大多数の患者で腫瘍縮小が見られ、22%の奏効率が観察された。肉腫に対する別の治療法が最近失敗しているが、この治療法は患者の忍容性が高いことから、肉腫患者に新たな選択肢を提供する可能性があると、Pollack氏は述べ、この結果をベースに、新たに多施設共同試験を実施することを望んでいる。演題抄録へ
6月3日月曜日、午前11:30〜11:42

【骨髄移植と生存率】
造血細胞移植サバイバーにおける晩期感染性合併症
小児がんサバイバーと全年齢の血液幹細胞移植サバイバーを中心にがん生存率について研究している小児がん医のEric Chow博士は、造血細胞移植(HCT)を少なくとも2年前までに受けたがん患者、移植後少なくとも2年を経過した他のがん患者、および母集団の3つの群における感染の発生率を比較する研究を主導した。追跡期間中央値は6年で、全感染症の発生は、HCTサバイバーで65人、非HCTがんサバイバーで40人、母集団で7人であった。感染症の種類と発生率の詳細な分析を行ったところ、細菌感染症と真菌感染症はそれぞれ、非HCTがんサバイバー群よりもHCTサバイバー群で70%多く発生し、ブドウ球菌、連鎖球菌、非カンジダ真菌に起因する感染症はHCTサバイバー群で2倍多く発生していたことが明らかになった。相対感染リスクの増加は、移植後5年以上も持続した。Chow氏らは、長期的なHCTサバイバーに対する医療提供者は、感染症に対する高い警戒を維持し、ワクチン接種と予防のガイドラインを慎重に守るべきであると結論付けた。演題抄録へ
6月3日月曜日、午前8:00〜11:00

【がんの経済毒性】
S1417 CD試験の設計と登録:転移を有する結腸直腸がん患者において有望な経済的影響評価ツールの開発
この主要な進行中の研究は経済的結果を評価するもので、米国国立がん研究所(NCI)のCommunity Oncology Research Programの一部としてSWOG がん臨床試験ネットワークによって実施されている。フレッドハッチの医療経済学研究グループ、HICORの共同ディレクターであるVeena Shankaran博士がこの研究を主導しており、治療関連の経済的困難の発生率を確認することを目的としている。こうした困難を、債務の集積、住宅の売却・借り換え、20%以上の収入減少、または借金のうちの少なくとも1つを経験していることと定義している。試験は2016年4月に患者の登録を開始し、374人の患者の登録目標を達成した後2019年2月に終了した。合計380人の患者が登録した。追跡調査は結果とともに12カ月以内に終了する予定である。Shankaran氏は次に、金融ナビゲーションが家計に与える影響を評価するランダム化試験を開始する予定である。演題抄録へ
6月1日土曜日午後1:15〜4:15

【医療格差】
SWOGによる化学療法、生物学的療法(免疫療法)および分子標的薬のがん臨床試験における有害事象報告の性差
女性は男性よりも化学療法による有害事象が多いが、生物学的療法(免疫療法) または分子標的薬の有害作用について性別の影響を調査した研究はほとんどない。がんの転帰およびがん研究における格差を検討する生物統計学者で公共医療研究者のJoseph Unger博士は、1980年~2018年のSWOG がん臨床試験ネットワーク実施の第2/3相臨床試験における重篤以上の有害事象に対するSWOGの性別による分析を主導した。この試験は、これまでに連邦政府による資金提供を受けたがん試験のデータを使用して実施された中で最大規模の有害事象研究の1つである。50万件以上の有害事象を呈した約37,000人の患者を調査し、症候性で客観的に明らかな、特に血液学的な有害事象の重症度が女性において高いことが明らかになった。この所見は有害事象報告において幅広い性差が存在することを示しており、いくつかの興味深い仮説を提起する刺激的な知見である。Unger氏とSWOGの同僚らは、生物学的療法(免疫療法)を受けている患者の間で性差が特に顕著であると述べ、これらの薬剤からの有害事象の研究が最優先事項であることを示唆している。演題抄録へ
6月3日月曜日、午後1:15〜4:15

【臨床試験】
NCIが資金提供するネットワークグループ実施の臨床試験がガイドライン治療と新薬の適応に与える影響
国家規模のがん研究のプロセスの影響を研究する生物統計学者で公共医療研究者であるフレッドハッチのJoseph Unger博士は、SWOG Cancer Research Networkの分析を主導し、米国で最も古く最大の公的資金を受けたがん研究ネットワークを構成するSWOGおよび他の4つのグループを含むネットワークである米国国立がん研究所の臨床試験ネットワーク(National Clinical Trial Network:NCTN)のメンバーの臨床診療への影響を調べた。Unger氏のチームは、1980年~2017年にSWOGがコーディネートまたは参加した第3相がん臨床試験を評価し、こうしたすべての試験の半分近くが、臨床ケアガイドラインまたは新薬承認に影響を及ぼしたことを明らかにした。結論の中には、次のようなものがある。「通常10億ドル以上と推定される製薬会社での新薬承認の費用と比較して、この価値あるエビデンスを提供するために連邦政府が投資した金額はわずかでした。これらの調査結果は、がん診療の推進におけるNCTNの臨床試験プログラムの主要な役割を強調しています」演題抄録へ
6月1日土曜日午後1:15〜4:15

ASCOニュース
バイオシミラーは元のバイオ製剤よりも有効か
バイオシミラーは元のバイオ製剤と同程度に有効か、さらに有効な場合もあるのか
バイオシミラーが米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けるには、元の生物製剤と比較して、有効性、安全性、または効力に臨床的に重要な違いがないことを実証する必要がある。しかし、すべての生物学的療法、すなわち生物学的製剤およびバイオシミラーの両方が、構成成分または製造工程の変化により経時的に変化することがある。ある遡及的観察研究についてのASCOポスター発表では、先発薬剤の特定のロットにおける抗体依存性細胞傷害活性の明らかな低下傾向と同時に3年間の無再発生存における有意差を報告し、バイオシミラーを支持した。全生存では有意な影響が認められなかったが、バイオシミラーを支持する傾向にあった。乳がん専門医でHICORのHealth Care Quality and Policyの上級リーダーであるGary Lyman博士は、インタビューが可能なポスター発表に貢献したメンバーの一人である。
6月2日日曜日、午前8:00時〜11:00


注)
これらの発見に貢献したフレッドハッチとその研究者らは、商業的な利益を得る立場となる場合がある。個々の研究者の情報開示の詳細については、上記のASCOの抄録へのリンクを参照のこと。
上記で言及した臨床試験では、米国食品医薬品局(FDA)または他のいかなる規制当局によっても市販用として承認されていない治験薬および/または治療法が含まれている。結果は異なる場合があり、初期段階の臨床試験からの有望な結果は、後期段階の臨床試験では裏付けられない可能性がある。本報告の情報から、これらの治験薬および/または治療法の安全性、有効性、または規制当局による承認の可能性についての結論を引き出すことはできない。

翻訳会津麻美

監修花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)

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原文掲載日

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