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侵襲的肺がん検診の合併症発生率とコストは予想以上に高い

  • 2019年1月30日
  • 発信元:MDアンダーソンがんセンター

肺がんCT検診を検討している患者とリスクを共有することの重要性が研究により明確に

肺の異常に対する侵襲的診断後の合併症発生率は、地域医療の場面では肺がん検診試験での報告の2倍であった。また、検診を受けたのちに発生する関連コストは平均で$6,320~$56,845(約69万円~619万円)であった。この結果は、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターが行った新たな研究により判明した。

本知見はJAMA Internal Medicine誌にて1月14日に発表されたものである。高リスク保有者で肺がん検診を検討する際に、医師と患者との間で話し合って共通の意思決定を下すには、こういったスクリーニング関連のリスクについても話し合う必要性が本知見により強調された、とMDアンダーソンの研究チームは確信する。

肺がんは米国において、男女ともに2番目に多いがんであり、がん死亡の主要な原因となっている。大半の肺がん患者は進行した段階で診断されるため、有効な肺がんの早期スクリーニング戦略は公衆衛生における重要な優先事項である、と保健医療研究部門のYa Chen Tina Shih医師は説明した。Shih医師は本研究の責任著者である。

2011年に米国肺がん検診試験(NLST)により、高リスク保有者を対象に低線量CTによる肺がん検診を実施したところ、肺がん死亡率が16%低下したことが示された。この知見に基づき、米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、55~80歳の現在/過去喫煙者の一部に対し、低線量CTによる肺がん検診を年1回受けるよう推奨した。

「NLST試験の結果を検討した際、研究メンバーの多くが偽陽性を懸念しました。侵襲的診断検査に伴うリスクを患者に押しつけることになるからです」とShih医師は述べた。「この試験で報告された合併症発生率は実際よりも低く推定されているのではないかと感じました。これは、コントロールが良好な状況で試験が実施されたためです。実際の医療現場で実施される検診では、患者は臨床試験のプロトコルどおりではないからです。このため、診断のための侵襲的な検査がもたらす合併症の発生率はもっと高い可能性があると考えています」。

米国肺がん検診試験(NLST)試験では、患者の1/4が偽陽性であったと報告された。すなわち、がんがないのに「発見された」のである。そして、侵襲的な診断検査(細胞診/針生検、気管支鏡検査、胸部手術など)による合併症発生率は10%未満であったと報告された。

実際の医療現場における費用と合併症発生率を推定する間接的な手法

臨床試験以外の状況で米国肺がん検診試験(NLST)と同様の方法を実施した場合の合併症発生率を検討するため、研究チームは2008~2013年のMarketScanデータベースから得られた請求データを分析した。残念ながら、MarketScanでは低線量CT検診に関連する請求コードは2015年2月に設定されたため、今回利用したデータは請求者が低線量CT検診を受けたかどうかを示すものではない。したがって、研究チームはNLST試験で報告された肺の異常に対する処置とほぼ同じ処置を受けた者の保険請求の分析を行った。

この研究は侵襲的診断方法を受けた年齢55~77歳の174,702人と、これにマッチさせた侵襲的診断方法を受けなかった169,808人の対照群で、試験開始時の合併症発生率を評価した。

「低線量CT検診の結果が異常であった場合、その後に通常行う診断方法に関して、実際の医療現場でのコストと合併症発生率を知りたかったのです」とShih医師は述べた。「低線量CT検診から侵襲的診断に至る直線的な経路を検討することはできませんでした。しかし、本研究では漸進的アプローチを適用しました。そのおかげで、実際の医療現場でこういった診断方法を受けた後の有害事象を推定することができました」。

合併症発生率は患者とのコミュニケーションで共有すべきである

本研究において、より若い世代(55~64歳)の侵襲的診断検査を受けた後の合併症発生率は22.2%であった。これに対し、NLST試験ではわずか9.8%であった。また、より高齢の世代(65~77歳)の侵襲的診断法を受けた後の合併症発生率は23.8%であったのに対し、NLST試験では8.5%であった。

研究チームは、侵襲的検査後合併症の関連コストの分析も行った。合併症による平均コストは侵襲的診断検査のコストよりも高額で、軽微な合併症では$6,320(約69万円)、重度の合併症では$56,845(619万円)であった。

「医師が肺がん検診を検討している患者とコミュニケーションをとる際には、起こり得る有害事象に関する情報も伝えることが非常に重要です」とShih医師は述べた。「本知見から、臨床試験以外の環境で肺がん検診プログラムを実施した場合、合併症発生率は予想よりも高く、医療システムとしては起こり得る問題に対して体制を整える必要がある事が示唆されます」。

Shih医師は、肺がん検診を受ける人のうち、異常所見のために侵襲的な診断検査を受ける人はわずか(おそらく5%未満)であり、検診適格基準を満たす人にとって肺がん検診は有益であると考えられる、と指摘する。しかしながら、起こり得る有害性と利益について、肺がん検診を検討している患者と共有しておくことは重要である。特に適格基準を満たしていないが、低線量CT検診に興味をもつ患者との共有は重要である。

本試験は後ろ向きの検討であり、試験実施時に大半のデータを研究チームが利用できなかったため、限界があった。低線量CT検診を受けた後に侵襲的処置を受けた人がはっきりわかるデータが利用できることになれば、研究者はそのグループを対象に、より直接的な解析を実施する予定である。

本試験は以下より研究助成を受けた:the MD Anderson Duncan Family Institute for Cancer Prevention and Risk Assessment(the Dan L. Duncan Familyの資金援助による)、Employees of Halliburton and the Halliburton Foundation, Inc.、the University of Florida Health Cancer Center Research Pilot Grant(the Florida Consortium of National Cancer Institute Centers Programの資金援助による)、the National Cancer Institute (R01CA207216, P30 CA016672)

Shih医師の他の共著者は以下のとおりである:Ying Xu, Ph.D. and Robert Volk, Ph.D., both of Health Services Research; and Tommy Sheu, M.D., of Radiation Oncology. Additional authors include Jinhai Huo, M.D., Ph.D., University of Florida, Gainesville, FL

翻訳三浦恵子

監修廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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