乳がんライフスタイル介入、減量した人では無病生存率が上昇

サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)2018

健康的な習慣にかかわる生活様式への介入プログラムに参加した早期乳がんのサバイバーのうち、介入プログラムを完了し、体重が減少した人は無病生存率が高くなったという結果が、12月4~8日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)2018で発表された。

「肥満や身体活動が少ない場合、乳がんの発生リスクが高くなるとともに再発リスクも高くなり、生存率が低くなるというエビデンスが示されています」と、本試験の筆頭著者であり、ドイツのウルム大学産婦人科長のWolfgang Janni医師は述べた。

「乳がんサバイバーの多くは自身の予後の改善に積極的に取り組みたいと考えており、体重の管理に役立つような生活様式の因子について指導することは、患者の転帰に良い影響を与える可能性のある方法の1つです」と同医師は続けた。

Janni医師らは、大規模な第3相試験であるSUCCESS C試験の一環として、電話による生活様式への介入について検討した。SUCCESS C試験は、HER2陰性の早期乳がん患者を対象に2つの化学療法レジメンのうちの1つで治療を行い、無病生存率を比較した試験である。

同試験の生活様式への介入では、研究者らは、すでにSUCCESS C試験に参加していた女性3,643人のうち2,292人を対象とした。BMIは全員24以上であった。参加女性は、中等度の体重減少の達成を目的とした電話による個別指導を2年間受ける群と、健康的な生活様式について一般的な推奨のみを受ける群のいずれかに無作為に割り付けられた。電話による介入群では、食事の改善法、脂肪摂取量の削減法、身体活動を増加させる方法、その他具体的なニーズに合わせたコツなどのアドバイスを受けた。

2年間のフォローアップ期間の終了時点で、生活様式介入群の患者は平均1.0kg(2.2ポンド)体重が減少した一方、対照群の患者は平均0.95kg体重が増加した。治療意図解析(ITT解析)において、生活様式介入群と対照群で生存率に差はなかった。

全体で1,477人の患者が生活様式介入プログラムを完了した。プログラムを完了した人は、プログラムを開始したが完了しなかった人よりも無病生存率が35%高かった。

プログラムを完了した人のうち、生活様式介入群の患者は、対照群の患者よりも無病生存率が約50%高かった。予後の改善という結果は、単変量解析においても、年齢、閉経の有無、腫瘍の大きさ、ホルモン受容体の有無、および化学療法の種類などの因子について調整した場合においても同様であった。

Janni医師は、探索的な分析は慎重に解釈されるべきであるが、電話による体系的な生活様式介入プログラムの完了が早期乳がんと診断された患者の転帰に良い影響を及ぼす可能性があることを本試験は示している、と述べた。

「遵守率が高ければ、生活様式への介入は乳がん患者の予後を改善する可能性があります」とJanni医師は述べた。「生活様式への介入はプログラムの設計および実行が容易なので、その有効性を確認するさらなる試験が必要とされています」。同医師は、今後の研究には追加のサブグループ解析や、無病生存の見通し改善が特定のバイオマーカーと相関するかどうかの検討などが考えられると述べた。

Janni医師は、無病生存に影響を及ぼす最も重要な因子はあくまで腫瘍のステージとその生物学的性状であると注意喚起した。また同医師は、この試験の限界として、生活様式介入プログラムを完了すると決めた患者は、そもそも自身の健康改善により意欲的であったかもしれない点があると述べた。

本試験は、中外製薬、Glaxo Smith Kline社、Janssen Diagnostics社、Pfizer社、およびSanofi-Aventis社から研究助成を受けた。Janni医師は利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 坂下美保子

監修 橋本仁(獣医学)

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