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有機食品の摂取ががんリスク低下に関連

「有機食品が血液のがんおよび乳がんリスクを低下させることが研究により判明」、とMail Online(英国タブロイド紙電子版)が報道した。
このニュースウェブサイトでは、フランスの大規模研究について報告している。この研究では、有機食品の消費について69,000人に質問した後、5年間追跡を行い、何人ががんに罹患したかを確認した。
有機食品は農薬、人工肥料、あるいは遺伝子組換え(GM)技術を用いずに育てられた食品のことを指す。有機の肉、家禽類、卵、乳製品は、抗生物質や成長ホルモンを与えずに飼育された動物由来の物である。
研究チームは、有機食品の摂取量が最も多い人は最も低い人に比べて、がんのリスクが24%低いことを発見した。
このマスコミ報道は期待が持てるものであるが、本研究は有機食品を食べることががんの予防になることを証明するものではない。
本研究は、有機食品がリスクを直接低下させることを実証するものではない。有機食品を食べる人は、そうでない人よりも運動量や果物や野菜の摂取量が多く、より健康的な生活を送っている。研究らはこのような、健康や生活習慣に関する因子について補正を行ってはいるものの、依然としてこれらの因子が影響を及ぼしている可能性がある。
したがって、「有機食品を食べることでがんの発生率が低下する」という主張は立証されていない。果物、野菜、食物繊維が豊富で加工肉をあまり摂取しない健康的な食生活を送り、健康体重を維持することに重点を置いた方が良いのかもしれない。定期的な運動や禁煙と共に良い食生活を送ればがん発症リスクを有意に低下させることができる。

研究の出典

本研究はInstitut National de la Sante et de la Recherche Medicaleとパリ第13 パリ北大学が実施した。資金提供は保健省、国立健康監視研究所、National Institute for Prevention and Health Educationなどのフランスの団体が行った。
研究チームの一員は、彼らは2つの非営利団体に対し、有機製品の使用を推奨するアドバイザー的役割を担っていたと申告している。
本研究の結果は論文審査のある医学雑誌、JAMA Internal Medicine誌で発表された。

英国のメディアは、この結果に影響を及ぼした可能性のある他の因子や、がんの症例数が少ないことを確認せずこの知見を鵜呑みにしている。たとえば、Mail Onlineの記述は次の通りである。「最大の影響は非ホジキンリンパ腫(リンパ系のがん)で認められた。化学物質が振りかけられた食品の摂取を避けた人の間で非ホジキンリンパ腫のリスクが低下したのだ」。これがごく少数のデータに基づいていることと、偶発所見である可能性とを考えれば、この記述は明らかに大げさなものである。
しかし、英国メディアが、有機食品を食べる人がそうでない人よりも健康的な生活習慣を送っていることを指摘したことは賞賛に値する。

研究の種類

本研究は地域ベースのコホート研究であり、有機食品の摂取ががん発症リスクに関連するかどうかの確認を目的とした。
有機食品市場は化学肥料、農薬、GM技術の利用を避けており、また、動物への薬剤投与を避けている。
これまでの研究では、尿検体中の農薬濃度が低いというような、有機食品の摂取により得られる可能性のある恩恵が実証されている。しかしながら、がんに関連する可能性について検討した研究はほとんどない。
本研究のような観察的研究は、原因や効果の潜在的な関連性を模索するのには有用であるが、それを証明することはできない。なぜならば、健康や生活習慣に関する他の因子が影響を及ぼしている可能性があるためである。

研究内容

本研究はNutriNet-Sante(フランスのインターネットによるコホート調査)の参加者68,946人を対象としている(女性が78%、平均年齢44歳)。本コホートは、食事、栄養および健康の間の関連性を検討することを目的に2009年に立ち上げられた。
本研究開始時に参加者らは、社会人口統計学的状況、身体測定データ、健康状態、および生活習慣行動に関する情報を提供した。
2カ月後彼らに、果物、野菜、乳製品、卵、肉、魚、穀類、調理済み食品、ワイン、チョコレート、コーヒーを含む16種類の有機食品について、それらをどの程度摂取するか質問した。

次のうち該当する1つの項目にチェックを入れるよう指示した。
•ほとんどいつも食べる
•時々食べる
•全く食べない(「高価すぎる」ため)
•全く食べない(「手に入らない」ため)
•全く食べない(「有機食品に興味がない」ため)
•全く食べない(「そのような食品を避けている」ため)
•全く食べない(「これと言って理由はない」)
•分からない

それぞれの食品に関し、「ほとんどいつも食べる」には2ポイント、「時々食べる」に1ポイント、それ以外の全てに関し0ポイントを付与した。したがって、この16種類の食品の有機食品総合スコアは0~32となる。本解析結果を最低摂取量~最高摂取量の四分位群に分けた。

参加者の健康転帰を平均で4.5年間記録した。この情報は年1回の質問票により集めた。参加者から「がんの診断を受けた」との報告を受け場合には、カルテの提出(90%の報告者がカルテを提供)および治療医や治療を受ける病院の詳細な情報を求めた。

完全補正後の解析は以下の潜在的交絡因子を考慮した。
•年齢と性別
•婚姻関係
•学歴、職業、月収
•喫煙とアルコール摂取量
•体格指数
•身体活動レベル
•全エネルギー摂取量と食物繊維、果物、野菜、加工食品、赤身肉の摂取量
•ホルモン治療薬の利用、閉経状態等、女性ではホルモンに関する因子

結果

合計で、参加者68,946人のうち1,340件のがんが発生した(コホートの2%)。がんの種類は、乳がん(34%)、前立腺がん(13%)、皮膚がん(10%)、および腸がん(7%)などである。有機食品の摂取頻度は以下の人でより高かった。
•女性
•学歴・職務上の地位の高い人
•一般的に身体活動レベルが高く、健康的な食生活を送っている人

有機食品摂取量が最も多い群は最も少ない群よりもがん罹患リスクが24%低かった(ハザード比[HR]=0.76、95%信頼区間(CI)=0.64~0.90)。
有機食品摂取量が中等度の群と最も少ない群との間に違いは認められなかった。

がんの種類については、以下のがんにおいてのみ、有機食品の摂取量との間に有意な関連性が認められた。
•閉経後の乳がん
•リンパ腫全般
•非ホジキンリンパ腫(特に強い関連性が認められる)

しかしながら、症例数がきわめて少ないため、これらの結果は注意深く受け取る必要がある。

研究チームの結論は?

研究チームは、「有機食品摂取頻度が高いこととがんリスク低下との間に関連が認められた。本研究の知見には確認を要するが、一般人口において、有機食品の摂取を推奨することはがんの予防法として期待が持てる」と結論した。

結論

本研究は、有機食品の摂取とがんリスクとの間の、潜在的な関連性に関する調査として有益な情報をもたらすものである。しかしながら、本著者の結論は早計であるかもしれない。本研究だけでは有機食品の摂取ががん予防になると実証はできない。
本研究の注意事項としては以下のとおりである。
がんは有機食品を最も多く摂取している群でも、発症率は少ないものの(摂取量が最も低い群では360人だったのに対し最も高い群では269人)、依然として発症している。したがって、直接的な関連性があったとしても、有機食品を摂取すればがん予防になるという保証はない。
特定のがん種と有機食品の摂取との間の関連性に関する結論はごく少数の症例に基づいて導かれたものである。例えば、非ホジキンリンパ腫では、有機食品摂取量が最も低い人で48人であったのに対し、有機食品摂取量が最も高い人では2人であった。
有機食品の摂取に関する情報は単一時点における自己申告による情報である。この情報は不正確で、生涯にわたる食習慣を反映していない可能性がある。
有機食品摂取量が最も高い群の社会人口統計学的背景と生活習慣には顕著な相違点が認められた。これらの因子に関して、研究チームは補正をしてはいるものの、結果に影響を及ぼしている可能性は依然として残る。このことから、本研究結果により「有機食品の摂取ががんリスク低下に関与している」ことは立証できない。つまり「有機食品を摂取する」ということは、「一般的に健康的な生活を送っている」という事実にとどまる。
本研究は被験者数が多い点が強みであるが、彼らは健康および栄養に関する研究へのオンラインでのボランティアであるため、一般的なフランス人の背景をそのまま反映していないかもしれない。
専門家は同様な注意を促した。例えば、キングス・カレッジ・ロンドンのTom Sanders教授は以下のように述べている。「本研究の著者は一般大衆に『有機食品の摂取はがん予防法として期待が持てる』との結論を提示しているが、これは大げさである」。
有機食品の摂取は健康上の理由および環境上の理由から理にかなったものである。しかしながら、がん予防に関して言えば、「果物、野菜、食物繊維の摂取量が高く、加工肉摂取量が低い一般的に健康的な食事」と共に、「定期的な身体活動」および「健康体重の維持」がより効果的であることが示されている。

翻訳三浦 恵子

監修朝井 鈴佳(獣医学・免疫学)

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