【SABCS25】BRCA陽性でも更年期ホルモン治療は乳がんリスクに影響なしか

【SABCS25】BRCA陽性でも更年期ホルモン治療は乳がんリスクに影響なしか

BRCA1またはBRCA2変異を有する女性では、更年期ホルモン療法(MHT)の使用は乳がんリスクの増加と関連しないことが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)(2025年12月9日~12日)で発表されたマッチド(特定の条件に基づいてペアにした)前向き解析の結果により明らかになった。
 
BRCA1/2の病原性変異を受け継いだ女性は、卵巣がんや卵管がんを発症するリスクが高いため、比較的若年のうちに卵巣と卵管を摘出すること(両側卵管卵巣摘出術)が推奨されていると、研究発表者であるJoanne Kotsopoulos博士(カナダ・トロント大学ダラ・ラナ公衆衛生大学院教授、Women’s College Hospital Research and Innovation Institute研究者)は述べた。
 
卵巣の摘出は早期閉経を引き起こす可能性がある。更年期ホルモン療法(MHT)は閉経症状を緩和できるが、MHTが安全ではないと感じた場合、多くの患者は使用を望まず、その結果、症状に不必要に苦しむことになる可能性があるとKotsopoulos氏は説明した。同氏は「若年女性に対して卵巣摘出のような大きな手術を勧める以上、外科的閉経によって生じる短期および長期の影響に対処する方法を提示しなければなりません」と述べ、「MHT使用におけるリスクとベネフィットをいかに安全にバランスさせるかについて、患者さんおよび医療提供者を教育し、寿命の延長と生活の質の向上を確保すべきであると考えます」と語った。
 
「残念ながら、更年期ホルモン療法(MHT)については多くの抵抗感や誤った情報が存在します。これは主に、一般集団(BRCA変異を持たない人々)を対象とした研究で、MHTの使用と乳がんリスク増加との関連性が示されたことに起因しています」とKotsopoulos氏は付け加えた。「BRCA変異を有し、遺伝的背景から乳がんリスクが高い女性において卵巣摘出後の副作用を安全に管理するためには、この特定集団を対象とした、適切に設計された観察研究に基づくMHT使用のデータが必要です」。
 
Kotsopoulos氏らは、臨床試験の条件を再現しようとするマッチド前向き解析(観察研究の一種)を実施した。対象は(主に手術による)閉経女性であり、MHTの使用の有無に関するデータを分析することで、臨床試験の条件を再現しようと試みた。がん既往歴のある患者、両側乳房切除術を受けた患者、および閉経前の患者は除外された。
 
研究者らは、閉経後に更年期ホルモン療法(MHT)を受けた女性と受けなかった女性からなる676組の対照ペアを作成した。ペアマッチングは、BRCA1またはBRCA2変異の有無、出生年、閉経年齢に基づいて行われた。参加者の年齢は22~76歳で、平均年齢は43.8歳であった。
 
MHTを受けた参加者は、以下のいずれかの製剤を使用した:エストロゲン単独、プロゲステロン単独、エストロゲンとプロゲステロンの併用、チボロン、または結合型エストロゲンとバゼドキセフェンの併用。
 
平均5.6年の追跡期間(MHT使用群では初回MHT使用日を起点とした)後、研究者らは、乳がんの新規発症例数がMHT使用女性で有意に少ないことを見いだした。具体的には、MHT使用群では87例であったのに対し、MHT未使用群では128例であった。
 
研究者らが、使用されたMHTの製剤別にデータを解析したところ、ほとんどのMHT製剤は乳がんリスクとの関連を示さず、リスクの増加も減少も認められなかった。しかし、2種類の製剤は乳がんリスクの低下と関連していた。エストロゲン単独のMHTを受けた女性は、MHT未使用の女性と比較して、乳がんを発症するリスクが63%低かった。また、結合型エストロゲンとバゼドキシフェンを併用した43人の女性では、その後に乳がんを発症した者は1人もいなかった。「症例数は少ないものの、これは将来の研究にとって非常に興味深く有望な領域です」とKotsopoulos氏は述べた。「仮説として、結合型エストロゲンとバゼドキシフェンは、MHTの中で乳がんリスク関連成分と考えられているプロゲステロンを回避することで、乳がんリスクを軽減するために使用できる可能性があります。この仮説を検証するには今後の臨床試験が必要となるでしょう」。
 
患者がBRCA1/2の病原性変異を保有しているかどうかにかかわらず、結果に有意な差は認められなかった。これはBRCA変異保有者に対するMHTの安全性を強調するものであるとKotsopoulos氏は述べている。
 
「私たちの研究結果は、BRCA変異を有し、外科的(または自然)閉経の影響に苦しんでいる女性に対して、禁忌がない場合には、閉経管理において個別化されたアプローチを取るべきであることを示唆しています」とKotsopoulos氏は述べた。
 
本研究の限界として、追跡期間が5.6年であること、また特定のサブグループ(BRCA2変異を有する女性登録者)における患者数が少ないことが上げられる。
 
本研究はBreast Cancer Canadaおよびカナダ保健研究機構(Canadian Institutes of Health Research)から資金提供を受けた。Kotsopoulos氏は利益相反がないことを表明している。

  • 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療センター乳腺・腫瘍内科)
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  • 原文掲載日 2025/12/12

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