免疫療法を理解する

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免疫療法を理解する
免疫療法の副作用
分子標的治療および免疫療法への副作用
がんワクチンとは何ですか?

免疫療法を理解する
Cancer.Net Editorial Board、2018年5月承認

免疫療法は生物学的療法とも言われるがん治療法の一種で、がんに対抗するべく人体が本来持っている免疫力を増強します。免疫療法は、人体が産生する物質または遺伝子組換え物質を用いて免疫機能を増強または回復します。免疫療法は以下の機序により作用します。
・がん細胞の増殖の停止または抑制
・人体の他部位へのがん転移の阻止
・免疫系によるがん細胞の殺傷能増強の促進

また、以下の数種類の免疫療法があります。
・モノクローナル抗体
・非特異的免疫療法
・腫瘍溶解性ウイルス療法
・T細胞療法
・がんワクチン

モノクローナル抗体

人体の免疫系は、有害な異物を発見すると抗体を産生します。 抗体とは感染症に対抗するタンパク質です。

モノクローナル抗体は特殊な遺伝子組換え医薬品であり、さまざまな治療薬として使用されています。たとえば、モノクローナル抗体は、がん細胞上の異常タンパク質を阻害します。

モノクローナル抗体は免疫療法薬としても使用されます。たとえば、一部のモノクローナル抗体はがん細胞上の特定のタンパク質と結合し、免疫系ががん細胞を発見し殺傷するための標識となります。

他にも、免疫系のブレーキを解除することでがん細胞の殺傷を可能にする抗体もあります。

PD-1/PD-L1経路とCTLA-4経路は免疫系のがん増殖抑制能にとって重要です。これらの経路は免疫チェックポイントと呼ばれることが多く、多くのがんはこれらの経路を利用して免疫系から逃避します。これらの経路を免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる特異抗体で阻害することにより、免疫系はがんに反応します。免疫系ががんを発見し反応できるようになると、がんの増殖は停止または抑制されます。

免疫チェックポイント阻害剤には以下のようなものがあります。
・イピリムマブ(ヤーボイ)
・ニボルマブ(オプジーボ)
・ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
・アテゾリズマブ(テセントリク)
・アベルマブ(バベンチオ)
・デュルバルマブ(イミフィンジ)

モノクローナル抗体の臨床試験が数種類のがんに対して実施されています。詳細はCancer.Net Blogの最新の免疫療法研究に掲載されています。

モノクローナル抗体療法の副作用は製剤によって異なります。たとえば、分子標的薬に使用されるモノクローナル抗体の副作用は、免疫療法に使用されるものと異なります。免疫チェックポイント阻害剤の副作用にはアレルギー反応に類似した副作用が含まれます。

非特異的免疫療法

モノクローナル抗体と同様、非特異的免疫療法も免疫系によるがん細胞の殺傷を促します。大部分の非特異的免疫療法は化学療法や放射線治療などの他のがん治療の後、またはこれらの治療と同時に実施されますが、一部の非特異的免疫療法は主要ながん治療法として実施されます。

以下の2つが一般的な非特異的免疫療法薬です。

・インターフェロン:インターフェロンは免疫系によるがんへの対抗を促し、がん細胞の増殖を抑制する可能性があります。人工インターフェロンの一種はインターフェロンα(ロフェロンA [2a]、イントロン[2b]、アルフェロン [2a])と呼ばれ、がん治療に最も多く使用されるインターフェロンです。 インターフェロン治療の副作用には、インフルエンザ様症状、感染リスクの増大、発疹、脱毛などがあります。

・インターロイキン:インターロイキンは、免疫系ががんを殺傷する細胞を産生するのを促します。人工インターロイキンは、インターロイキン-2(IL-2)またはアルデスロイキン(プロロイキン)と呼ばれ、腎がんや悪性黒色腫などの皮膚がんの治療に使用されます。IL-2治療の主な副作用は体重増加と低血圧で、一部の患者ではインフルエンザ様症状を認めることもあります。

腫瘍溶解性ウイルス療法

(*サイト注:日本では実施されていません)腫瘍溶解性ウイルス療法では遺伝子組換えウイルスを用いてがん細胞を殺傷します。医師がウイルスを腫瘍に注入すると、ウイルスはがん細胞に侵入して自身のコピーを作ります。その結果、がん細胞は破裂し、死滅します。がん細胞が死滅するときに抗原と呼ばれる特定の物質を放出し、それによって患者の免疫系は同じ抗原を有する体内のすべてのがん細胞を標的化できるようになります。なお、ウイルスは正常細胞には侵入しません。

2015年、米国食品医薬品局は悪性黒色腫に対して初の腫瘍溶解性ウイルス療法を承認しました。この治療で使用されたウイルスは、タリモジーン・ラハーパレプベック(Talimogene laherparepvec:T-VEC)(Imlygic)です。T-VECは、口唇ヘルペスの病因である単純ヘルペスウイルスの遺伝子組換え体です。T-VECは切除不能の悪性黒色腫に直接注入でき、悪性黒色腫が消失するまで、T-VECは複数回注入されます。副作用には以下のようなものがあります。
・疲労
・発熱
・悪寒
・悪心
・インフルエンザ様症状
・注射部位の疼痛

臨床試験では、他のさまざまながん種に対する他の腫瘍溶解性ウイルスが検討されており、また腫瘍溶解性ウイルスと化学療法などの他の治療法との併用療法も検討されています。

T細胞療法

(*日本未承認)T細胞は感染症に対抗する免疫細胞です。T細胞療法では患者の血液から一部のT細胞を採取し、受容体と呼ばれる特定のタンパク質を発現するように細胞処理施設で遺伝子改変されます。受容体によりT細胞はがん細胞を認識できるようになります。人工的に大量培養された遺伝子改変T細胞を患者の体に再注入すると、遺伝子改変T細胞ががん細胞を見つけ、殺傷します。このような治療法はキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)発現T細胞療法(CAR-T細胞療法)と呼ばれます。

CAR-T細胞療法は一部の血液がんの治療にきわめて有効で、現在もCAR-T細胞療法や遺伝子改変T細胞を用いた他のがん治療研究が行われています。

がんワクチン

がんワクチンは人体のがんに対抗する能力を高めるために使用されるもう一つの方法です。ワクチンは免疫系を抗原に曝露し、これが引き金となって免疫系は抗原や関連物質を認識し破壊するようになります。がんワクチンには予防用ワクチン治療用ワクチン(*日本では治療用ワクチンは承認されていません)の2種類があります。

医療従事者への質問

免疫療法が治療計画に含まれるかどうか、担当の医療従事者と話し合いましょう。もし免疫療法が含まれる場合は、次のような質問を検討してください。
・推奨される免疫療法はあるか。またその理由。
・免疫療法の目的。
・免疫療法が唯一の治療法かどうか。そうでない場合は、他にどのような治療法が受けられるか。
・免疫療法の方法、回数。
・免疫療法によって起こり得る短期的および長期的副作用。
・免疫療法が日常生活に及ぼす影響。仕事、運動、日常生活は可能か。
・参加可能な免疫療法の臨床試験があるのか。
・質問や困りごとの相談先。 

(*日本では、効果の証明されていない免疫療法が医療機関やクリニックで提供されている場合があります。自費診療での提供、ウェブサイトなどで大々的に宣伝されている等にはご注意いただき、主治医とご相談ください)

翻訳担当者 渡邊 岳

監修 田中 謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/九州大学病院 呼吸器科)

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原文掲載日 

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