[ 記事 ]

ラドンとがん

  • 2018年10月10日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ファクトシート

目次
・ラドンとは
一般の人々はラドンにどのようにさらされています
か?
ラドンはどのようにがんを引き起こしますか?
ラドン曝露により肺がんを発症する人はどのくらいいますか?
肺がん発症におけるラドンの関与を研究者らはどのように発見しましたか?
・ラドンと肺がんの関係について、どんなことが判明していますか?
自宅のラドン濃度が高いかどうか、どうすればわかりますか?
ラドンに関する詳細情報はどこで得られますか?

ラドンとは
ラドンは、岩石や土壌中に含まれるウラン、トリウム、ラジウムという元素の崩壊によって放出される放射性ガスであり、地中から漏れ出て空気中に拡散する無色、無味無臭の気体です。一部の地域では、局所的地質によってラドンが地下水に溶け込み、その水を使用する際にラドンが空気中に放出されることがあります。ラドンガスは通常、屋外で非常に低い濃度で存在しますが、地下鉱山など換気が不十分なところでは、ラドンが肺がんリスクをかなり高めるレベルまで蓄積する場合があります。

一般の人々はラドンにどのようにさらされていますか?
ラドンは空気中のほぼどこにでも存在するため、誰もが毎日、通常は非常に低濃度のラドンを吸い込んでいます。しかし、高濃度のラドンを吸い込んでいる人々は、肺がんを発症するリスクが高くなります。

ラドンは、床、壁、または土台の隙間から家に入り込んで屋内にたまったり、建築資材やラドンを含む井戸から引いた水から放出されたりすることがあります。高断熱性・高気密性の住宅や、ウラン、トリウム、ラジウムといった元素が豊富な土壌に建てられた住宅はラドン濃度が高くなる可能性があります。地下階と地上1階は地面と近いことが多いため、ラドン濃度が最も高くなります。

ラドンはどのようにがんを引き起こしますか?
ラドンは素早く崩壊し、小さな放射性粒子を放出します。これらの放射性粒子を吸い込むと、肺の内側の細胞が損傷を受ける可能性があります。ラドンの長期曝露は肺がんを引き起こすことがあり、肺がんは、ラドン吸入との関連が証明されている唯一のがんです。成人および小児において、ラドン曝露に伴う白血病リスクの上昇が示唆されていますが、決定的な科学的根拠はありません。

ラドン曝露により肺がんを発症する人はどのくらいいますか?
喫煙は肺がんの最大の原因です。ラドンの肺がんリスクははるかに小さいですが、米国では肺がんの原因の第2位となっています。研究者らによると、毎年米国で15,000〜22,000人の肺がん死がラドンに関連していると推定されています。

肺がん発症におけるラドンの関与を研究者らはどのように発見しましたか?
ラドンにさらされた地下ウラン鉱山労働者が高率で肺がんにより死亡したとの研究結果から、ラドンは健康問題として特定されました。鉱山労働者研究の結果を動物実験で検証したところ、高いラドン濃度に曝露したげっ歯類で肺腫瘍の発症率が高いことがわかりました。

ラドンと肺がんの関係について、どんなことが判明していますか?
研究者らは、ラドンがヒトで肺がんを引き起こすとの見解で一致しています。最近の研究では、住宅内のラドンが肺がんリスクに及ぼす影響を明らかにすることに重点が置かれてきました。これらの研究では、肺がん患者の住宅内のラドン濃度を測定し、肺がんを発症していない人々の住宅内のラドン濃度と比較しています。

研究者らは、カナダと米国で実施されたすべてのラドン研究のデータを統合して分析しました。それにより数千人分のデータが分析でき、住宅内ラドン曝露が多い人は肺がんリスクがわずかに高いことが判明しました。このリスクの増加は、地下鉱山労働者の研究に基づく推定リスクレベルと一致しました。

1990年代から2000年代初頭にかけて行われた多くの研究のおかげで、個人の経時的ラドン曝露量を測定する技術の精度が向上しました。

自宅のラドン濃度が高いかどうか、どうすればわかりますか?
自宅のラドン濃度が高いかどうかを知る唯一の方法は検査です。屋内のラドン濃度は、住宅の下および周辺の土壌組成、住宅へのラドンの侵入のしやすさに影響されます。隣り合う住宅でも屋内のラドン濃度は異なることがあるため、隣家の検査結果から自宅のラドンリスクを正しく予測することはできません。さらに、雨や雪、気圧などの影響により、ラドン濃度が月ごと、あるいは日ごとに変化することがあるため、短期・長期両方の検査が行われています。

短期検出装置は、装置にもよりますがラドン濃度を2〜90日間測定します。長期検査では90日を超える期間の平均濃度を測定します。ラドン濃度は日ごと、および月ごとに変化することがあるため、長期検査の方が平均ラドン濃度を示す上で優れています。短期検査、長期検査ともに比較的利用しやすく、費用も高くありません。州または地方のラドン担当官に相談すれば、検査装置の違いを説明し、相談者のニーズと条件に最も適した検査方法を勧めてくれるでしょう。

米国環境保護庁(EPA)は、ラドン濃度が空気1リットル当たり4ピコキュリー(pCi/L)以上の住宅ではラドンを減らす措置を講じることを推奨しています。米国の住宅のおよそ15軒中1軒は、ラドン濃度がこのEPA対策レベル以上であると推定されます。研究者の推定では、EPA対策レベルを上回る住宅のラドン濃度を低下させることにより、肺がん死亡者を2~4%(約5,000人)減らせる可能性があります。

米国環境保護庁(EPA)はConsumer’s Guide to Radon Reduction(消費者向けラドン削減ガイド)で、住宅ラドン曝露と人々が実施できる対策に関する詳細情報を提供しています。

ラドンに関する詳細情報はどこで得られれますか?
カンザス州立大学にあるNational Radon Program Services(全米ラドンプログラムサービス)はEPAの資金提供を受けており、一般市民のラドン認知向上、検査の推進、住宅・学校・建物のラドン削減を目指しています。同サービスでは、National Radon Hotlines(全米ラドンホットライン)、州ラドンプログラムへの紹介、ラドン検査キットの注文、ラドン軽減促進、その他の技術支援や各種支援活動など、多種多様な援助を提供しています。

消費者から全米ラドンホットラインへの連絡先:
1–800–SOS–RADON (1–800–767–7236)
資料請求用の自動応答と録音情報へのアクセス。
1–800–55–RADON (1–800–557–2366)
情報専門家へ電話または電子メール送信。
詳細情報は、EPA(ウェブサイト)からも入手可能。

*サイト注:このページの記載は米国の事情です。日本は米国よりラドン値は低いとされています。
世界保健機構(WHO)HP>「屋内ラドンハンドブック」日本語PDF)

参考文献:

  1. Alavanja MC, Lubin JH, Mahaffey JA, Brownson RC. Residential radon exposure and risk of lung cancer in Missouri. American Journal of Public Health 1999; 89(7):1042–1048.[PubMed Abstract]

  2. Darby S, Hill D, Doll R. Radon: a likely carcinogen at all exposures. Annals of Oncology 2001; 12(10):1341–1351. [PubMed Abstract]
  3. Darby S, Hill D, Deo H, et al. Residential radon and lung cancer: detailed results of a collaborative analysis of individual data on 7148 persons with lung cancer and 14,208 persons without lung cancer from 13 epidemiologic studies in Europe. Scandinavian Journal of Work, Environment and Health 2006; 32(Suppl 1):1–83. Erratum in Scandinavian Journal of Work, Environment and Health 2007; 33(1):80.[PubMed Abstract]

  4. Field RW. A review of residential radon case-control epidemiologic studies performed in the United States. Reviews on Environmental Health 2001; 16(3):151–167. [PubMed Abstract]
  5. Field RW, Steck DJ, Smith BJ, et al. Residential radon gas exposure and lung cancer: the Iowa Radon Lung Cancer Study. American Journal of Epidemiology 2000; 151(11):1091–1102. [PubMed Abstract]
  6. Frumkin H, Samet JM. Radon. CA: A Cancer Journal for Clinicians 2001; 51(6):337–344. [PubMed Abstract]
  7. Harley NH, Robbins ES. Radon and leukemia in the Danish study: another source of dose. Health Physics 2009; 97(4):343–347.[PubMed Abstract]

  8. Krewski D, Lubin JH, Zielinski JM, et al. A combined analysis of North American case-control studies of residential radon and lung cancer. Journal of Toxicology and Environmental Health, Part A 2006; 69(7):533–597.[PubMed Abstract]

  9. Lagarde F, Falk R, Almrén K, et al. Glass-based radon-exposure assessment and lung cancer risk. Journal of Exposure Analysis and Environmental Epidemiology 2002; 12(5):344–354. [PubMed Abstract]
  10. Möhner M, Gellissen J, Marsh JW, Gregoratto D. Occupational and diagnostic exposure to ionizing radiation and leukemia risk among German uranium miners. Health Physics 2010; 99(3):314–321.[PubMed Abstract]

  11. National Research Council. Committee on Health Risks of Exposure to Radon: BEIR VI. Health Effects of Exposure to Radon. Washington, DC: National Academy Press, 1999.
  12. U.S. Environmental Protection Agency (January 2009). A Citizen’s Guide to Radon: The Guide to Protecting Yourself and Your Family From Radon. Retrieved October 18, 2011.

翻訳山田 登志子

監修廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

原文を見る

原文掲載日

【免責事項】

当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。
翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

関連記事