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分子標的薬および免疫療法薬の皮膚への副作用

2017年7月、Cancer.Net編集委員会承認

分子標的療法および免疫療法は、化学療法に比べて特異的な治療法です。このことは、通常化学療法に関連する副作用とは異なる副作用が起こる可能性があることを意味しています。化学療法における副作用には通常、感染症、脱力感や血球数の変化などがあげられます。分子標的療法および免疫療法における副作用には、皮膚、毛髪、爪や眼の障害があげられます。

分子標的療法とは?

分子標的療法とは、特異的な遺伝子、タンパク質、またはがんの増殖や発症に寄与する組織環境を標的とする治療法です。一部の分子標的療法では、皮膚、毛髪や爪に特異的な副作用を起こす可能性があります。これらの副作用は、これらの組織の正常な成長に対する薬剤の作用によって起こります。

皮膚の障害が起きる可能性がある分子標的療法

以下の項目は、皮膚に有害な影響を及ぼす可能性がある分子標的療法の一部です。分子標的療法の治療薬を処方された場合は、予期される副作用やその対症療法について担当医にお尋ねください。

・EGFRを標的とする薬剤:この一般的な分子標的治療薬は、上皮成長因子受容体(EGFR)として知られる分子を標的としています。EGFRは、がん細胞の成長を刺激します。また、EGFRは、皮膚、毛髪や爪の正常な成長において重要な役割を果たしています。このことは、これらの薬剤による治療を行っている間、発疹、毛髪や爪の変化がみられる可能性があることを意味しています。

EGFRを標的とした薬剤を使用している患者の大部分は、顔面や上半身に発疹を発症します。この発疹は、薬剤の使用開始から数週間以内にみられます。発疹が出る前に、日焼けのような発赤や熱感に気が付くでしょう。その数日後に圧痛のあるにきびや膿をもった腫れものがみられ、まわりの皮膚にわずかな痛みを感じます。発疹の重症度は軽度または中等度である傾向があります。ただし、深刻な身体的不快感や整容上の不快感につながる重度の発疹がみられることもあります。

また、皮膚が非常に乾燥して痒くなり、日常生活や睡眠の妨げとなることもあります。指先の皮膚がひび割れすることもあります。皮膚が日光に過敏になることもあります。皮膚を何度も引っかくことで傷になることもあります。傷口のせいで皮膚はより感染しやすくなります。爪の周りに炎症があると、爪の手入れや衣服の着脱、その他の日常活動が痛みを伴ったり、難しくなったりすることもあります。

・VEGFを標的とする薬剤:皮膚の障害を引き起こす可能性のある分子標的治療薬には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と呼ばれるタンパク質を阻害する薬剤も含まれます。このタンパク質は、新たな血管の形成を手助けします。このグループの薬剤は、血管形成を阻害するため、血管新生阻害薬とも呼ばれます。

この薬剤が手足の血管に有害な影響を与えると、皮膚の障害を起こすことがあります。

あなたを担当する医療ケアチームは、あなたが治療を続けられるように、これらの副作用のコントロールに力添えをしてくれます。これらの副作用を管理することで、あなたの皮膚、毛髪および爪の変化がひどくなることを防ぐこともできます。これらの薬剤に関連する皮膚への副作用は、アレルギー反応や感染症ではないことを認識することが重要です。

特定の分子標的治療薬においてよくみられる皮膚への副作用

以下の項目は、皮膚に関する障害を起こす可能性がある分子標的治療薬です。

アファチニブ(ジオトリフ)、セツキシマブ(アービタックス)、エルロチニブ(タルセバ)、ゲフィチニブ(イレッサ)、オシメルチニブ(タグリッソ)、パニツムマブ(ベクティビックス):これらの薬剤は、大腸がん、頭頸部がん、肺がんおよび膵臓がんに対して処方されることがあります。皮膚に関する副作用には以下があげられます。

・日光に対する過敏性亢進
・顔面や上半身のざ瘡様皮疹
・爪周囲の炎症
・皮膚の乾燥、痒み
・指先のひび割れ
・頭皮の脱毛
・顔面の産毛やまつげの縮れ、荒れ

ラパチニブ(タイケルブ):乳がんの治療に使用する薬剤です。皮膚に関する副作用には以下があげられます。

・発疹
・唇、口または喉の痛みや荒れ
・皮膚の乾燥
・手足の発赤、痛み、しびれ、ひりひりする痛み

ソラフェニブ(ネクサバール)、スニチニブ(スーテント):腎細胞がん、消化管間質腫瘍(GIST)や肝細胞がんの治療に使用する薬剤です。副作用には以下があげられます。

・脱毛
・手足の皮膚への副作用(時折水疱形成を伴う手掌・足底の圧痛や皮膚の肥厚)
・頭皮や眉毛部皮膚の発赤、皮膚剥離
・発赤に伴う顔面の熱感、灼熱感
・皮膚の乾燥や痒み

ベムラフェニブ(ゼルボラフ):メラノーマの治療に使用する薬剤です。皮膚に関する副作用には以下があげられます。

・顔面や上半身の赤い発疹
・腕や大腿の凹凸や荒れのある発疹
・手足の皮膚の反応
・進行性でない(局所に留まる)皮膚がんを含む、皮膚の増殖
・日光に対する過敏性亢進

・エベロリムス(アフィニトール)、テムシロリムス(トーリセル):腎細胞がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵神経内分泌腫瘍(膵臓がんの一種)や上衣下巨細胞星細胞腫 (結節性硬化症に伴う良性の脳腫瘍)の治療に使用される薬剤です。副作用には以下があげられます。

・口の痛みや荒れ、口内炎
・上半身の凹凸を伴う発疹
・ざ瘡様皮疹

・バンデタニブ(カプレルサ):甲状腺髄様がんの治療に使用される薬剤です。副作用には以下があげられます。

・皮膚の発赤
・発疹やざ瘡
・皮膚の乾燥、剥離や痒み
・水疱、痛みや荒れ

 

免疫療法とは?

免疫療法は、生物学的療法とも呼ばれています。がんと闘う身体に備わった抵抗力を促進させる、がん治療法の一種です。免疫系の機能を改善し、標的とし、回復させるような体内で産生される物質,もしくはそのような物質を研究室で精製して使用します。

副作用の多くは、アレルギー反応に類似しています。個々の患者が受ける薬剤の種類に応じて異なりますが、皮膚、毛髪、爪や眼に関する障害などがあります。

免疫療法においてよくみられる皮膚に関する副作用

皮膚に関する障害が起きる可能性がある免疫療法薬は以下のとおりです。

アレムツズマブ(キャンパス):慢性リンパ性白血病の治療に使用する薬剤です。副作用には口の痛みや荒れなどがあります。

イピリムマブ(ヤーボイ):メラノーマの治療に使用する薬剤です。副作用には以下があげられます。

・凹凸を伴う赤い発疹
・痒み
・皮膚の蒼白(監訳者注:皮膚の白斑を示すものと思われる)、白髪

ニボルマブ(オプジーボ):腎細胞がん、NSCLCやメラノーマに対して処方される場合があります。この薬剤で起きる可能性のある副作用には以下があげられます。

・脱毛
・皮膚及び眼の黄色化
・痒みを伴う赤い発疹
・皮膚の水疱

オファツムマブ(アーゼラ):慢性リンパ性白血病に対して処方される場合があります。この薬剤の皮膚に関する副作用には以下があげられます。

・じんましん
・顔面、頸部または胸部における突発性発赤
・皮膚蒼白(*)
・皮下の小さく平坦で円状の紅斑(*)
・発疹

(*監訳者注:海外の臨床試験文献や本薬剤添付文書に記載されている皮膚症状に該当するものなし)

ペムブロリズマブ(キイトルーダ):NSCLCやメラノーマの治療に使用する場合があります。皮膚に関する副作用には以下があげられます。

・顔面紅潮または皮膚の発赤
・皮膚の変色(監訳者注:皮膚の白斑を示すと思われる)
・皮膚や眼の黄色化
・脱毛
・皮膚の水疱
・痒みを伴う赤い発疹

リツキシマブ(リツキサン):非ホジキンリンパ腫や慢性リンパ性白血病の治療に使用される薬剤です。皮膚に関する副作用には、皮膚の一部での発赤、圧痛、腫脹や熱感などがあります。

 

皮膚障害の管理および軽減について

発疹、皮膚の乾燥、爪や毛髪の副作用が重症となることはまれですが、大きな不快感につながることもあります。これらの副作用を理由に、がんの治療を中止したいとさえ考えられる患者さんもいらっしゃいます。あなたを担当する医療ケアチームと、治療を通じて何を期待するかについて相談することが重要です。また、なんらかの副作用を感じたり、みつけた場合には、すぐに担当医にお知らせください。これらの副作用に対する、早期の効果的な治療法があります。

以下の項目は、副作用の予防や、起こってしまった副作用の軽減に役立つ対処法です。

・治療を開始する前に、担当の医療ケアチームと副作用について話し合ってください。皮膚科医と相談することもできます。皮膚科医は皮膚の状態に関する専門家です。発疹その他の皮膚の障害がみられたとき、どうしたらよいか聞いてください。具体的には、処方薬を受ける方法や、医師と相談する最善の方法があります。

・副作用の最初の徴候がみられる時点で、これらの副作用に詳しい担当医または皮膚科医にご連絡ください。副作用の徴候とは、熱感または灼熱感、丘疹、爪のひび割れ、皮膚の乾燥などです。

・日光を避け、SPF15以上の日焼け止めを使用してください。日焼け止めの使用によりヒリヒリ感がある場合は、酸化亜鉛または二酸化チタンを含む日焼け止めを試してみてください。日焼け止めは十分量で使用してください。小さじ1/2杯以上の量を各腕、顔面および頸部それぞれに使用してください。小さじ1杯強の量を胸部、腹部、背部および各脚それぞれに塗布してください。屋外では2時間ごとに、発汗した場合や水泳をする場合はそれ以上の頻度で塗布しなおしてください。

・外出する際は、つばの広い帽子を使用してください。午前10時から午後4時の間は直射日光を避けてください。

・入浴時のシャワーでは低刺激のせっけんを使用してください。香りが強いせっけんの使用は避けてください。ぬるま湯でシャワーし、高温での長時間のシャワーは避けてください。また、香料が強い洗濯洗剤の使用は避けてください。

・シャワーや入浴後5分以内に保湿クリームを全身の皮膚に塗布してください。無香料・防腐剤無添加の低刺激性保湿剤を使用してください。(Vanicream、Aveeno、CeraVe、Cetaphil、Eucerinなど)

・アルコールまたはレチノイド含有のにきび予防剤を使用しないでください。皮膚がかさかさに乾燥してしまう可能性があります。

・発疹の症状を効果的に軽減するための医薬品クリームが担当医から処方されることがあります。発疹がひどい場合、または身体の大部分に及んでいる場合、プレドニンやデキサメタゾン(商品名は複数あり)といった経口副腎皮質ステロイドの服用が必要となることもあります。

・通常、錠剤で2~4週間服用する抗生剤は、発疹や爪の圧痛の治療に効果的です。

・膿が出る場合は、適切な抗生剤を特定させるために医師から検体採取を求められることもあります。

・ソラフェニブおよびスニチニブによる手足の皮膚への副作用には:

・尿素(carmol 20またはcarmol 40)や、サリチル酸(Salexクリーム)を含有するクリームを使用します。フルオシノニド(商品名は複数あり)やクロベタゾール(商品名は複数あり)のような強力な副腎皮質ステロイド剤も選択肢となります。

・厚手で快適な靴下や靴を履くか、ジェル状インソールを試してください。また、手足を保護して傷を負わないように十分に注意してください。手足に体重をかけすぎないように、特に治療開始直後の2カ月間は注意してください。

・特定の1カ所に痒みがある場合、いわゆる限局性そう痒がある場合は、副腎皮質ステロイドまたは麻酔薬(リドカイン2%など)を含有するクリーム、あるいは、プラモカイン(商品名は複数あり)やカンフル/メントール(商品名は複数あり)を含有する冷却クリームを1日数回塗布してください。全身に痒みがある場合や痒みで睡眠に悪影響がある場合、セチリジン(ジルテック)やジフェンヒドラミン(ベナドリル)のような抗ヒスタミン錠剤の服用について、適宜、担当医に相談してください。

関連情報
【Cancer.NET 免疫療法】(サイト内和訳) :
免疫療法を理解する(リンク先は英語・日本語近日公開)
免疫療法の副作用
分子標的治療および免疫療法に対する皮膚反応
がんワクチンとは何ですか?

 

翻訳瀧井希純

監修中村泰大(埼玉医科大学国際医療センター/皮膚腫瘍科・皮膚科)

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原文掲載日

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