がんワクチンとは何ですか?

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がんワクチンとは何ですか?

がんワクチンとは何ですか?
2018年6月 Cancer.Net編集委員会承認

ワクチンまたは予防接種は、体が病気と闘うのを助ける内科療法です。ワクチンは有害物質を認識して壊すよう免疫系を訓練します。がんワクチンには2種類あります。
・予防ワクチン
・治療ワクチン

がん予防ワクチン

医師は、特定のがんが発症するのを予防するため健康な人に予防ワクチンを接種します。水疱瘡またはインフルエンザに対するワクチンのように、病気を起こすウイルスから体を守ります。ワクチンはウイルスが感染する前に接種しなければなりません。さもなければワクチンの効果は得られません。

米国食品医薬品局(FDA)により承認されたがん予防ワクチンは2種類あります。

・HPVワクチン 
このワクチンはヒトパピローマウイルス(HPV)を予防します。ウイルスが持続すると、一部の種類のがんが発症することがあります。FDAは以下の予防に対してHPVワクチンを承認しました。
・子宮頸部、膣および外陰がん
・肛門がん
・性器疣贅(いぼ)

HPVは、FDAがワクチンを承認していない口腔がんなどの他のがんを発症させることもあります。

・B型肝炎ワクチン 
このワクチンはB型肝炎ウイルス(HBV)感染を予防します。HBVの長期間感染により、肝臓がんが発症することがあります。

ご自身の主治医に HPVやHBVの予防接種を受けるべきかどうか相談して下さい。

がん治療ワクチン

がん治療ワクチンは、免疫療法の一種です。ワクチンは、がんと闘う体の自然防御能を強化するように作用します。医師は、すでにがんと診断された人に治療ワクチンを接種します。ワクチンには次の効果が見込めます。

・がんの再発を予防する。
・他の治療が終了後に、まだ体内にあるがん細胞を壊す。
・腫瘍の増殖や転移を阻止する。

がん治療ワクチン作用のしくみ

抗原とは、通常は体に存在しない細胞の表面にある物質です。免疫系は抗原を攻撃し、通常、取り除きます。これにより、将来、これらの抗原に対して免疫系が応答するのを助ける「記憶」を免疫系に残します。

がん治療ワクチンは、抗原を認識して壊す免疫系の能力を強化します。しばしば、がん細胞の表面には、がん特異抗原と呼ばれる、正常細胞にはない特定分子がみられます。これらの分子は人に投与されると、抗原として作用します。すなわち、免疫系を刺激し、これらの分子が表面にあるがん細胞を認識して壊すよう促します。また多くのがんワクチンは、免疫応答の強化を助ける物質であるアジュバントも含んでいます。

患者ごとに作製されるがんワクチンもあります。このようなワクチンは患者自身の腫瘍サンプルから作製されます。つまり、ワクチンを作製するのに十分な多量のサンプルを採取するために、手術が必要ということです。また、特定のがん抗原を標的とし、腫瘍細胞の表面にその抗原がある腫瘍を有する人に投与されるがんワクチンもあります。

多くのがん治療ワクチンは、臨床試験でしか受けることができず、試験はボランティアを対象とした探索研究です。しかし2010年に、FDAは転移性前立腺がんを有する男性に対して、シプリューセル-T(プロベンジ)を承認しました。転移性とは、がんが初発の部位から体の他の部位へ拡がっていることを意味します。シプリューセル-Tは次のような過程を経て患者ごとに個別化されます。

・最初に、患者の血液から白血球を取り出します。白血球は体が感染および病気と闘うのを助けます。
・取り出した白血球に対して、前立腺がん細胞を認識し標的とするように製造所で改変を行います。
・次に、この改変した細胞を静注で患者の体に戻します。これは輸血と同様です。改変細胞は、免疫系に前立腺がん細胞を見つけて殺すよう教えます。

がん治療ワクチンの限界

有効ながん治療ワクチンの開発が難しいのは、次の理由によります。
がん細胞は免疫系を抑制するため
そもそも、そのためにがんは発生、増殖することができるのです。研究者らはこの問題に対処するためワクチンにアジュバントを用いています。

がん細胞はその人の健常細胞から発生するため
そのために免疫系にはがん細胞が有害なものに「見えない」のかもしれません。免疫系はがん細胞を発見し壊すのではなく無視してしまう可能性があります。

大きい腫瘍やかなり進行した腫瘍は、ワクチンだけで取り除くのは難しいため
これは、医師が他の治療との併用でがんワクチンを投与することが多い一つの理由です。

病人や高齢者は免疫系が弱い場合があるため
病人や高齢者の体は、ワクチン接種後も免疫応答が強化されない可能性があります。このため、ワクチンの良好な作用は限られます。また、一部のがん治療は患者の免疫系に損傷を与えるため、ワクチンへの応答能が制限されることがあります。

これらの理由のため、がん治療ワクチンは腫瘍が小さいほど、または初期であるほど良く作用すると考える研究者もいます。

ワクチンおよび臨床試験

臨床試験はがんワクチンの理解を深める上で重要です。以下の数種類のがんに対するワクチンで試験が行われています。
膀胱がん 
研究者らはHER2細胞を含むように改変されたウイルスから作製したワクチンの有効性を研究しています。HER2細胞は一部の膀胱がんの腫瘍表面に存在しています。このウイルスは、免疫系が腫瘍細胞を認識し壊すことを学習するのを助けます。また研究者らは、膀胱がんの標準治療と、ワクチン併用の標準治療とを比較しています。

脳腫瘍 
脳腫瘍細胞表面のある種の分子を標的とした治療ワクチンを検証する試験が数多くあります。新規に診断された脳腫瘍に焦点を定める治療ワクチンもあれば、再発したがんに焦点を定める治療ワクチンもあります。いくつかの試験は小児および10代の若者を含みます。

乳がん 
複数の試験において、単剤投与または他の治療との併用で乳がんに対する治療ワクチンを検証しています。予防ワクチンの臨床試験実施に向けて努力している研究者もいます。

子宮頸がん 
子宮頸がん予防ワクチンがFDAに承認済みです。異なる段階の疾患の治療を助けるワクチンの研究が続いています。

大腸がん 
研究者らが開発中の治療ワクチンは、大腸がんを発症すると考えられる抗原がある細胞を体が攻撃するように促すものです。これらの抗原には、がん胎児性抗原(CEA)、MUC1、グアニル酸シクラーゼCおよびNY-ESO-1が含まれます。

腎臓がん 
研究者らは腎臓がんを治療する複数のがんワチンの使用を試験しています。研究者らはまた、後期の腎臓がんが再発するのを防ぐワクチンを検証しています。あるワクチンは術後に患者に投与されるもので、患者の腫瘍から作製されます。腎臓がん細胞または腫瘍内の血管細胞の表面に見いだされるタンパク質由来のワクチンの開発も進められています。

白血病 
急性骨髄性白血病や慢性リンパ性白血病など、さまざまな種類の白血病に対する治療ワクチンの研究が進められています。それらの中には、幹細胞移植などの他の治療の効果を高めることを目的とするワクチンもあります。また、患者のがん細胞や他の細胞から作製され、免疫系のがん破壊を促すことを目的とするワクチンもあります。

肺がん 
臨床試験中の肺がん治療ワクチンは抗原を標的とします。これらの抗原には、肺がんの42%にあるMAGE-3および肺がんの30%にあるNY-ESO-1が含まれます。p53、サバイビンおよびMUC1などの抗原を標的とするワクチンもあります。

メラノーマ 
研究者らは単剤投与または他の治療との併用で、いくつかのワクチンの試験をしています。ワクチンに含まれる壊されたメラノーマ細胞および抗原は、免疫系が体内のメラノーマ細胞を破壊するよう促します。

骨髄腫 
寛解に近い多発性骨髄腫患者でワクチンを検証する臨床試験が複数あります。また研究者らはくすぶり型骨髄腫患者または自家幹細胞移植を必要とする患者でもワクチンを検証しています。

膵臓がん 
膵臓がん細胞に対する免疫系の応答を強化するようにデザインした複数の治療ワクチンの研究が進められています。単剤治療法として投与されるワクチンもあれば、別の治療法と併用で投与されるワクチンもあります。

前立腺がん 
先に述べたように、シプリューセル-Tは転移性前立腺がんがある男性を治療するために医師が使用できるワクチンです。現在、あまり進行が進んでいない前立腺がんの男性をこのワクチンで助けることができるかどうか研究が進められています。

がん種別の最新研究および臨床試験を探す(リンク先は英語)

主治医に聞いておくこと

もし、がん治療ワクチンの臨床試験参加についてもっと知りたい場合、主治医に相談して下さい。以下のような質問をしてみてください。
・自分のがんの種類およびステージに対するワクチンの臨床試験を行っている研究者がいるか。
・どこで臨床試験が実施されているか。
・どんなワクチンで、どのように作用するか。
・どのようにワクチンは製造されるか。ワクチンを製造するために血球または腫瘍組織を採取する必要があるか。
・どのようにワクチンが接種され、また頻度はどれくらいか。
・ワクチン接種の必要期間。
・可能性のある副作用は何か。
・放射線療法または化学療法などの他の治療と併用してワクチンを接種できるか。
・自分のがんに対して別の治療選択肢はあるか。
・知っておくべきことは他にあるか。

(*日本では、効果の証明されていない免疫療法が医療機関やクリニックで提供されている場合があります。自費診療での提供、ウェブサイトなどで大々的に宣伝されている等にはご注意いただき、主治医とご相談ください)

翻訳担当者 木下秀文

監修 関屋 昇(薬学博士)

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ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

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