健康的な食事習慣の順守でがんリスク軽減

4つの栄養スコアの分析からアルコールを控えた食事で最大の効果が示された。

健康的な食事と運動を積極的に取り入れ、アルコール摂取を控えた食習慣は、乳がん、前立腺がん、大腸がんのみならず、あらゆるがんの罹患リスクの軽減に関連していることが米国がん学会の機関誌Cancer Research誌に掲載された分析結果で明らかになった。

本研究では、これまでに有効とされ、推奨されてきた以下の3つの栄養指標[WCRF/AICR(世界がん研究基金および米国がん研究協会)スコア、代替健康食指数、フランスの栄養と健康プログラム-ガイドラインスコア]に加えて、比較的新しい指数であり、地中海食に基づく食事を数値化したMEDI-LITEスコアが評価された。すべての食事において、がんリスクの軽減が多少見られたが、がん予防を考慮して特別に考えられたWCRF/AICR推奨項目との関連性が最も強かったことを研究者らは明らかにした。

「すべてのがんのリスク因子(タバコ以外)の中でも、日常生活の中で改善可能な栄養と運動は、がんの罹患リスクを左右する要因になり得ます 」と本研究の上級著者Mathilde Touvier氏(理学修士、公衆衛生学修士、博士 、パリ13大学およびフランス国立保健医学研究所(Inserm)の栄養疫学研究チーム(EREN)の研究責任者)は述べた。

「世界がん研究基金および米国がん研究協会(WCRF/AICR)は、先進国のおよそ35%の乳がんと45%の大腸がんは、より徹底した栄養指針を守ることで予防できる可能性があると推定しました。つまり、がん予防における栄養の役割を研究することはとても重要です 」とBernard Srour氏(薬剤師、公衆衛生学修士、およびEREN-Inserm栄養疫学の博士候補者)は付け加えた。

4つの栄養指標とがんリスクの相関関係を研究する際に、Srour氏、Touvier氏らは、2009年に開始されたNutriNet-Sante研究と呼ばれる、栄養と健康の関連性を調査したフランスコホート研究のデータを参照した。この研究は、以前に一度もがんと診断されたことのない40歳以上の参加者41,543人を調査対象とした大規模な研究である。参加者は、24時間のうちに口にしたすべての食べ物と飲み物を6カ月ごとにウェブ上で詳細に記録した。その後、研究者らは4つの栄養スコアへの該当数をそれぞれ計算した。

2009年5月から2017年1月1日にかけて、研究参加者のうち、1489人(乳がん488人、前立腺がん222人、大腸がん118人を含む)ががんと診断された。研究者らは多変量コックス 比例ハザードモデルを用いて、それぞれの栄養スコアとがんリスクの関連性を特徴づけた。

WCRF/AICRスコアが1ポイント増えるごとに、あらゆるがんで12%、乳がんで14%、前立腺がんで12%の罹患リスク軽減と関連していることが本研究で明らかになった。

他の栄養指標もがん罹患のリスク軽減と関連していたが、WCRF/AICR指数が優れた統計学的強度とより精度の高い予測性能をもつことが立証されたとSrour氏とTouvier氏は述べた。以上の理由に加えて、他の3つの栄養指標はがん予防を前提に考案されたわけではないため、研究者らはWCRF/AICRスコアの詳細分析を行い、特定の項目を除外して各スコアの相対的重要性を評価した。

健康的な食事の「相乗効果」は、推奨されるどんな食事方法ひとつよりも重要であると結論づけた。例えば、果物や野菜に含まれる抗酸化物質は、赤肉や加工肉によるDNAの酸化的損傷の一部を抑えることが可能である。また、運動は塩分の高い食べ物の身体への影響を部分的に抑え、血圧を下げる可能性がある。

「前述の研究結果は、がん予防において、全般的に健康的な生活習慣(栄養、運動、節酒)の重要度が高まっていることを示唆しています 」とSrour氏は述べた。「つまり、生活要因のすべてが重要であると意識することが肝心で、健康的なライフスタイルを始めるのに遅すぎることは決してありません 」。

WCRF/AICR推奨項目の中で、節酒はがんリスク軽減に貢献する可能性が最も高いとSrour氏とTouvier氏は言う。また、この研究結果は、アルコールが多くのがんのリスク因子であることを示唆する近年の研究の意義を高めると述べている。

「世界がん研究基金(WCRF)の最新報告書には、飲酒が口腔咽頭がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、そして閉経後乳がんのリスクを増大させることを示す、強く説得力のあるエビデンスがあると述べられています」とTouvier氏は述べた。また、飲酒は胃がんと閉経前の乳がんとも明白な関連性があると付け加えた。

本研究の主な限界は、ボランティアベースの研究の性質上、女性、健康を意識した行動を心掛ける人、社会経済的および教育レベルの高い人が研究参加者の大きな比率を占めていた可能性があったことだと著者らは述べた。その結果、いくつかの不健康な行動が過小評価され、健康的な食事とがん予防の関連性が実際よりも強く示されていた可能性があった。

過去の研究で、フランス人はアメリカ人よりも果物や野菜を多く摂取し、糖分の多い飲み物や加工食品の消費量が少ないことが明らかになっているため、WCRF/AICR推奨項目に従えばアメリカ人に劇的な効果をもたらす可能性があると著者らは述べた。

本研究は、フランス保健省、フランス公衆衛生局(Santé Publique France)、イル・ド・フランス地方、フランス国立保健医学研究所(Inserm)、フランス国立農学研究所(INRA)、フランス国立工芸院、パリ13大学、Cancéropôle Ile de France、ならびにフランス国立がん研究所を含む数々の機関の公的資金と政府助成金を受けた。著者らは利益相反が存在しないことを宣言した。

翻訳担当者 水町敦子

監修 東海林洋子(博学博士)

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