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再発膠芽腫に対するポリオウイルス療法で、3年生存率が21%

デューク大学の治療法が第1相試験において、致命的ながんの長期生存に有用であることが示された

 

デュークがん研究所で開発された遺伝子改変型ポリオウイルス療法は、第1相臨床試験において3年生存率が21%で、再発膠芽腫患者の長期生存率に有意な改善が認められた。

 

比較すると、デュークにおける同じタイプの再発脳腫瘍患者では、過去に利用可能な標準治療を受けていた場合3年間生存した患者がわずか4%であった。

 

ポリオウイルス療法の第1相臨床試験の結果は、ノルウェーで開催された第22回国際脳腫瘍研究治療会議で6月26日に発表され、同時にNew England Journal of Medicine誌で発表された。

 

「膠芽腫は、外科的療法および放射線療法の進歩に加えて、新規の化学療法剤および標的治療薬があるにもかかわらず、依然として命を脅かす破壊的な疾患です」と、デュークのプレストン・ロバート・ティッシュ脳腫瘍センターの名誉センター長で、本研究の統括著者であるDarell D. Bigner医学博士は述べた。

 

「根本的に異なるアプローチが大いに必要です」とBigner医師は述べた。「このポリオウイルス療法の初期段階における生存率は、すでに進行中または計画中の研究をさらに推進しようとしている私たちに勇気と意欲を与えてくれます」

 

Bigner医師および共同統括著者であるDavid Ashley博士、共同筆頭著者であるAnnick Desjardins医師およびMatthias Gromeier医師を含む脳神経外科部門の全員が、2012年に看護学校に入学したばかりの若い患者で開始された第1相試験について、追跡期間中央値が27.6ヶ月であったと報告している。彼女はその後結婚し、登録看護師として働いている。

 

治療には遺伝子改変型ポリオウイルスワクチンが使われ、外科的に埋め込まれたカテーテルを介して脳腫瘍に直接注入される。デューク大の研究室でGromeier医師によって開発されたこの改変型ウイルスは、腫瘍細胞を優先的に標的とし、免疫応答を引き起こす。 Gomerier医師と共同研究者らは最近、ポリオウイルス療法の作用機序についての研究をScience Translational Medicine誌に発表した。

 

米国国立がん研究所(NCI)の実験治療学(NExT)プログラム、NCI、米国国立衛生研究所の一部、および米国食品医薬品局との18年間の共同研究により、膠芽腫の新規治療法開発の前臨床段階およびトランスレーショナル段階が可能になった。

 

「デュークとNCIのチームは前臨床試験において幅広く協力することで、今回の臨床試験結果に至りました」と、NCIのClinical and Translational Researchの副部長であるJim Doroshow医師は述べた。「この膠芽腫治療法における有望なアプローチは、NCIの戦略的投資を実証するもので、今回のような、研究発見から臨床試験に至る開発を支援します」

 

第1相臨床試験では当初、デューク大学の研究チームは、治療注入の投与量を増加させることを計画していた。安全な投与量が第1相試験における主な目的の1つであるためである。しかし、高用量では、一部の患者で炎症が過多となり、けいれん発作、認知障害などの有害事象が生じたため、注入量を減量した。この試験に登録された61人のうち15人を除く全患者が、より低用量レベルでの投与を受けた。

 

試験参加者は、再発腫瘍の大きさ、脳におけるその位置など患者保護のために設計された要因に基づいて、厳しいガイドラインに従って選択された。比較対照群の患者はデューク大の既存患者群から選ばれ、ポリオウイルス登録基準に合致していたであろう患者を登録した。

 

ポリオウイルス患者全61人の全生存期間中央値は12.5ヵ月であり、既存対照群では11.3ヵ月であった。治療後2年目から、2つの群の生存曲線が分岐した。

 

24カ月後のポリオウイルス患者の全生存率は21%であり、既存対照群では14%であった。3年目でその差はさらに拡大し、ポリオウイルス患者群での生存率は21%であり、対照群では4%であった。

 

「多くの免疫療法と同様、何らかの理由で反応しない患者もいますが、反応があれば長期サバイバーになる場合が多くあります」とDesjardins医師は述べた。 「大きな問題は、どうすれば誰でも確実に反応するようにできるかです」

 

ポリオウイルス療法を他の認可された治療法と組み合わせて用いることは、生存率向上のためにすでにデューク大で試験が行なわれているアプローチである。現在進行中の第2相試験では、再発膠芽腫患者に対してポリオウイルス療法と化学療法薬ロムスチンを組み合わせた治療を行なっている。

 

著者らは、試験患者の69%において、ポリオウイルスに起因する軽度または中等度の副作用が最も重篤な副作用であったと報告している。低用量のベバシズマブを用いて、腫瘍の局所的な炎症およびその副作用を抑制した。

 

ポリオウイルス療法は、2016年に米国食品医薬品局(FDA)より「画期的治療薬」の指定を取得した。

 

すでに新規の試験が行われている。膠芽腫の第2相試験に加えて、今年は小児脳腫瘍の治療法を試験するための登録が開始された。一部の乳がん患者および黒色腫患者は、脳腫瘍の域を越えて治療法を拡大する臨床試験に参加する資格を程なく得るだろう。

 

NEJM出版物の寄稿者は以下のとおりである:James E. Herndon II、Nike Beaubier、Dani P. Bolognesi、Allan H. Friedman、Henry S. Friedman、Frances McSherry、Andrea M. Muscat、Smita Nair、Katherine B. Peters、Dina Randazzo、 John H. Sampson、Gordana Vlahovic、William T. Harrison、Roger E. McLendon

 

本研究は、The Brain Tumor Research Charity、Tisch family through the Jewish Communal Fund、Uncle Kory Foundation、米国国防総省(W81XWH-16-1-0354)、米国国立衛生研究所(R35CA197264、P01CA154291、P50CA190991、 R01CA124756、R01NS099463)より助成金の援助を受けた。また、Angels Among Usの募金イベントおよびAsness Family Foundationよりの寄贈を通じて援助を受けた。 NIHは治療法を作り出すための根本を成すポリオウイルスを提供した。

 

研究著者らは、臨床試験の設計または実施について商業的支援を受けていない。著者のDesjardins、Gromeier、Bolognesi、Allan Friedman、Henry Friedman、Sampson、Bignerは、デューク大学から新規立ち上げ企業Istari Oncology社にライセンスされた特許に名前を連ねている。

翻訳会津麻美

監修西川亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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