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バイオマーカー検査で喫煙者の肺がんリスク評価が向上

 

血液検査によりCT検診の対象が重喫煙歴者以外にも拡大される可能性

MDアンダーソン ニュースリリース 2018年7月12日

国際調査チームがJAMA Oncology誌に報告した研究によると、血液中の4種類のタンパクを組み合わせたバイオマーカー検査により、従来のガイドラインを上回る肺がん発症のリスク予測が可能となった。従来のガイドラインは喫煙歴だけを指標にしていたが、バイオマーカー検査では重喫煙者に限らず、すべての喫煙経験者の肺がん発症リスクを拾い上げることができるからである。

「この簡易な血液検査により、バイオマーカーに基づいた肺がん発症のリスク評価が向上するのです。そして、低線量コンピューター断層撮影を用いた肺がん検診対象者の選択基準の改善につながります」と、研究の共同総括著者でありテキサス大学MDアンダーソンがんセンターでClinical Cancer Preventionの教授であるSam Hanash医学博士は述べた。

バイオマーカーパネルを用いることにより、米国予防医学専門委員会(USPSTF)が認定したCT検診のガイドラインと比較して、喫煙者の中で後に肺がんを発症することになる患者をより感度良く見つけることができた。USPSTFのガイドラインは、年齢と喫煙歴に基づいた重喫煙者に対するものである。なお、バイオマーカーパネルにより偽陽性(予測が外れて肺がんを発症しなかった喫煙者)は増加しなかった。

USPSTFのガイドラインでは、30箱年[1日の喫煙量(箱単位)に喫煙年数を掛けた係数。例えば1日2箱(20本)の喫煙を25年続けると、2箱×25年=50箱年、となる]以上の喫煙歴があり、現在も喫煙しているかまたは禁煙しても15年以内である、55歳から80歳の成人にのみ、CT検診を推奨している。

「バイオマーカーパネルを用いることにより、喫煙歴だけから見るとリスクは最高レベルではありませんが、発がんリスクがあってCT検診に進むべき喫煙者をより正確に見つけ出すことができます。血液バイオマーカー検査が陽性の場合、喫煙経験者にとっては、バイオマーカー低値の重喫煙者より高いとは言えませんが同程度の肺がん発症リスクがあるということを意味します」とHanash医学博士は述べた。

この論文では、ヨーロッパにおける地域住民を対象とした2つの大規模研究参加者から、最初の血液サンプル採取から1年以内に肺がんを発症した喫煙経験者63人と対照群として適合させた90人を選び出し、両者の比較によりこの血液バイオマーカーの有用性を検証した研究結果が報告されている。

研究者らは、喫煙歴に基づくモデルと、4つのマーカーに基づいたバイオマーカースコアに喫煙歴を加えた統合モデルとを比較した。

偽陽性率(特異度)を両モデルともに同じ値(USPSTFのガイドラインでの規定値)になるよう設定した場合、将来の肺がん発症の予測感度は、喫煙歴のみに基づく検査では42%(62人中20人)であったのに対してバイオマーカーを加えた統合検査では63%(63人中40人)であった。

「バイオマーカーパネルにより、喫煙経験者というより大きな集団の中の肺がん発症リスクのある人々を見つけることができます。予測感度の向上はこれを反映したものです」とHanash医学博士は述べた。検証研究においては、喫煙歴を加えても、バイオマーカー単独で得られた将来の肺がん発症予測率はさらには向上しなかった。

Hanash医学博士のグループは、世界保健機関(WHO)の一部門である国際がん研究機関(IARC)と提携しているヨーロッパの研究者らと協力している。共同総括著者はIARCのMattias Johansson博士、IARCのGenetics部門責任者であるPaul Brennan博士である。

Moon Shots Program™の一部であるMDアンダーソンの肺がんMoon Shot™は、主にLyda Hill氏からの資金提供により、Hanash医学博士の研究を最初に支援した。

 

診断前の血液サンプルが極めて重要

本研究では、疾患発症前に採取した血液を使用できたことが、バイオマーカーを選びだす鍵となりました、とHanash医学博士は語った。この点が、早期肺がん患者と健康な人を対照として比較した、これまでの多くのバイオマーカー研究との相違である。従来のこのような研究では、将来の発がん予測にバイオマーカーがどのように有用なのかは明らかにされない。

Hanash医学博士のグループは、バイオマーカー血液検査を開発するために、採取から1年以内に肺がんであると診断された喫煙経験者108人から採取した血液サンプルを、喫煙歴を適合させた対照群216人と比較して分析を行った。全員が、1990年代に北米で実施された肺がん予防試験である「カロテンとレチノールの有効性試験(CARET)」の参加者であった。

Hanash医学博士は、「肺がんでない喫煙者と肺がんの喫煙者を比較し、両者間のバイオマーカーに相違点を見つけました。つまり、肺がんになるかならないかの違いをもたらしたのは、喫煙状況だけではなかったのです。その後、がん症例を母集団と比較して、同様の相違点を発見しました」と語った。

結果的に、次の血液中に見られる4つのタンパクがパネルに含まれた。

 

・プロサーファクタントプロテインB(Pro-SFTPB)
 ・がん抗原125 (CA125)
 ・サイトケラチン19フラグメント(CYFRA 21-1)
 ・がん胎児性抗原(CEA)

本研究では、European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(欧州のがんと栄養に関する前向き研究)とNorthern Sweden Health and Disease Study(北スウェーデンの健康と病気に関する研究)に参加した患者を対象に、検証研究が行われた。

研究者らは、バイオマーカーに基づく予測モデルをさらに検証するとともにさらに改善するため、より大規模な研究での検証が必要である、とした。Hanash医学博士は、今後の研究は米国食品医薬品局(FDA)の指図のもとに行われる予定であり、既にFDAとの協議に着手していると述べた。

がんによる死亡者のうち、肺がんが原因なのは20~25%と推測される。年間、全世界で169万人、米国では155,000人である。早期発見により生存の可能性は高まるが、ほとんどの国ではこの疾病の検診は行われておらず、全米でも肺がん患者のうちUSPSTFのガイドラインにより検診の対象となるは半数以下と推定されている。

Hanash医学博士、Johansson博士、Brennan博士の共同筆頭著者は以下のとおりである。Nan Sun, Ph.D., of Clinical Cancer Prevention and Leonidas Bantis, Ph.D., of Biostatistics, both from MD Anderson; Florence Guida, Ph.D., of IARC; and David Muller, Ph.D., of Imperial College of London School of Public Health。 Zideng Feng, Ph.D., of MD Anderson Biostatistics もまた、主導的役割を果たした。

これ以外の共著者は以下のとおりである。Ayumu Taguchi, M.D., Ph.D., of Translational Molecular Pathology; Dilsher Dhillon, Deepali Kundnani, and Nikul Patel of Clinical Cancer Prevention; and Qingxiang Yan, Ph.D., of Biostatistics。全リストについては、JAMA OncologyのWebサイトを参照。

Hanash医学博士はCancer Prevention DepartmentのEvelyn and Sol Rubenstein代表である。

 

翻訳池上紀子

監修田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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