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術前PARP阻害薬タラゾパリブは、BRCA変異陽性の早期乳がん患者に有望

大規模試験で検証されれば、該当する患者集団において術前化学療法を1日1回の経口薬に置き換えることが可能に

BRCA1/2変異陽性の早期乳がん患者に対する小規模な第2相試験において、PARP阻害薬 talazoparib(タラゾパリブ)を術前に1日1回投与した女性患者の半数以上で、手術時に乳がん病変の存在が確認されなかったことが、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究で明らかになった。この経口剤による治療が大規模確認試験でさらに検証されれば、上記患者の化学療法に取って代わることができる。

 

npj Breast Cancerで発表された実現可能性研究を拡大したこの試験は、2018年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で乳がん腫瘍内科専門の准教授Jennifer Litton医師により口頭発表された。

 

「私の知る限り、トリプルネガティブ乳がんを含むBRCA遺伝子変異陽性乳がん女性患者が、単一薬剤による分子標的療法で病理学的完全奏効したのはこの試験が初めてです」と、Litton氏は述べた。

 

BRCA1/2遺伝子変異は、乳がんの5~10%(遺伝性のがんの大部分を含む―若年時に診断されることが多い)を占め、乳がんの中でもっとも侵襲性の高いトリプルネガティブ乳がんの10~25%を占める。

 

BRCA遺伝子変異は、正常なDNA損傷修復に欠陥を引き起こす。 PARP阻害薬は、DNA修復経路の進行を阻害し、BRCA変異陽性乳がん患者ではPARP阻害薬の抗腫瘍作用が増強される。タラゾパリブは、PARP酵素を阻害するだけでなく、酵素をDNAにトラップしてさらなるDNA修復を阻止することによって作用する。

 

今回の新研究は、同じくLitton氏が主導する第3相ランダム化比較EMBRACA試験を受けて進められたものであり、同試験では、タラゾパリブは、BRCA遺伝子変異陽性の転移乳がん患者に対して適用可能な化学療法と比べて、無増悪生存期間を延長し、生活の質(QOL)を改善することが示されている。

 

目標は常に、有望な薬剤を転移性がんの治療から初回治療に移行することであるが、PARP阻害薬と化学療法を併用する先行研究では、患者の有害事象発生率が高いことが明らかになっていると、Litton氏は説明した。

 

「そうした有害事象、さらに、若い患者の多くが侵襲性の高いタイプのがんであったために先行する化学療法を諦めたくないかもしれないことを考えると、それでも患者がパイロット試験 に登録するのか懸念がありました。しかし、信じられないことに多くの患者登録があり、1日に1回、タラゾパリブを単回投与した患者がわずか2カ月後に受けた超音波検査によると、腫瘍体積減少の中央値は88%でした。これらの劇的な知見により、実現可能性研究は中止され、現在の試験に再デザインされました」と、Litton氏は述べた。

 

Litton氏のチームは、単一施設第2相試験に、ステージI~IIIのBRCA遺伝子変異陽性乳がん女性患者20人を登録した。 注目すべきは、そのうち17人がトリプルネガティブ乳がんであったことである。 それら患者の中で浸潤性乳がん治療を過去に受けた者は皆無であった。5カ月間の投与後に同意を撤回した1人を除く患者全員が、1日1回のタラゾパリブを6カ月にわたり投与された。その後、参加者に手術を施し、続いて適切な化学療法レジメンを行った。 試験の主要評価項目は、残存腫瘍量(RCB)、または腫瘍の完全奏効であった。

 

手術時には、参加女性の53%(19人のうち10人)が病理学的完全奏効、すなわちRCB0のスコアを達成したことがわかった。 63%(19人中12人)がRCB0とRCB1であった。 両スコアは、想定された同じ肯定的な結果となった。 RCB0またはRCB1であった女性患者のうち、10人はトリプルネガティブ乳がんであった。

 

有害事象には、血球数および血小板の減少があったが、それら数値の厳密なモニタリング、薬剤の減量、輸血によって対処することができた。また、一部の患者では、グレード1の脱毛症がみられた。

 

「われわれの知見は初期段階のものなので、今後の試験でこの結果を検証する必要があります。しかし、1日1回の錠剤服用で、化学療法より高くなくとも同程度の奏効率が得られ、女性患者が化学療法を受ける際に経験するQOLの問題がないということは、患者にとって素晴らしいことだと思います」と、Litton氏は述べた。

 

Litton氏のチームはまた、患者の乳房腫瘍のパラレルマウスモデルを作成して、奏効と抵抗性に関してさらに研究を進めるとともに、このモデルを他の研究者にも提供してPARP阻害剤の集合知の拡大を図ることもできた。

 

フォローアップとして、同様の設計の第2相単群試験が開かれており、 Litton氏が全国試験責任医師を務める。

 

この試験は、MD AndersonのMoon Shots Programの一部であるBreast Cancer Moon Shotの資金援助により完了した。同プログラムは、科学的発見から、患者の命を救う臨床的進歩への展開を加速するための共同作業である。この試験は、Toomim Family Fund およびPfizer/Medivationによる支援も受けた。

 

Litton氏は、EMD Serono社、Astra-Zeneca社、Pfizer社、Genentech社から研究資金を受けている。同氏はPfizer社とAstra-Zeneca社の顧問委員を務めているが、報酬は受けていない。

 

Litton氏のほかに、すべてのMDアンダーソン試験の著者として以下の研究者が含まれる。Gary Whitman医師、Marion E. Scoggins医師、Beatriz E. Adrada医師、(以上3名、診断放射線医学)、Kenneth R. Hess医学博士(バイオ統計学)、Carlos H. Barcenas医師、Rashmi K. Murthy医師、Senthil Damodaran医学博士、Banu Arun医師、Nuhad Ibrahim医師、Stacy Moulder医師、Jill Schwartz-Gomez、(以上6名、乳腺腫瘍内科)、Sarah M. DeSnyder医師(乳がん外科)、およびAbenaa Breswter医師(臨床がん予防学)。Elizabeth A. Mittendorf医学博士は現在はダナファーバーがん研究所に所属している。

翻訳有田香名美

監修廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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