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進行トリネガ乳がんのプラチナベース化学療法に、BRCA1/2遺伝子変異の特性解析が有用

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

 

英国全土の74病院で実施された第3相並行群オープンラベルランダム化比較TNT(NCT00532727)試験で、バイオマーカーのサブグループ解析が行なわれた。結果は2018年4月30日にNature Medicine誌に掲載された。PARP阻害薬オラパリブは進行生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異乳がんで現在承認されているが、この治療が長期にわたる場合に多くの医療制度や患者が費用を賄うことができなくなる可能性があると、著者らは述べている。こうした状況で、PARP1トラップ阻害剤がプラチナ製剤と比較してどれほど効果があるかもまだ明らかになっていないが、TNT試験の結果により新たなエビデンスが示された。広く入手可能な手頃な価格の特許期限切れバイオマーカーが、多くの発展途上国で蔓延しているトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において高発現であり、この間、高活性で安価なプラチナ化学療法薬での生物学的標的治療のほうが乳がんで現在認可されている標準化学療法よりも有効であるとみられる患者群を選択する上で有用であると示された。

 

相同組み換え(HR)が欠損し、ゲノム不安定性が生じることによって、生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異は生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異乳がんを発症させると、著者らは研究背景で述べている。 また、相同組み換え(HR)は、プラチナ製剤およびPARP阻害剤によって生じるDNA損傷を修復する。トリネガ乳がん患者は、プラチナ感受性が特に高いと推定されるBRCA1/2遺伝子変異患者を分集団として抱えている。BRCAness(BRCA機能不全状態)と推定されるサブグループ(BRCA1メチル化腫瘍、BRCA1 mRNA低発現、またはHR欠損に対する遺伝子変異シグネチャーおよび基底細胞表現型を有する遺伝子変異シグネチャー)のがんもプラチナ感受性が高い可能性がある。

 

TNTでは任意抽出の進行トリネガ乳がん患者においてカルボプラチンおよびドセタキセルの有効性を評価した。プロトコールで事前指定し、生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異乳がんおよびBRCAnessサブグループにおけるバイオマーカーと治療との相互作用解析を可能にした。主要評価項目は客観的奏功率(ORR)であった。

 

2008年から2014年の間に、本研究では376人の患者が登録され、カルボプラチン群に188人、ドセタキセル群に188人が割り当てられた。全患者が主要評価項目の解析に含められた。対象集団の大部分が、BRCA1/2遺伝子変異の不明なトリネガ乳がん患者(376人のうち338人)で、初回治療後に増悪を認めた患者であった。

 

全患者群では、カルボプラチン群とドセタキセル群でORRに有意差が認められず、カルボプラチン群で31.4%、ドセタキセル群で34.0%であった。一方、生殖細胞系BRCA1/2遺伝子変異乳がん患者では、ORRがカルボプラチン群ではドセタキセル群の2倍で、それぞれ68%対33%であった。バイオマーカーと治療との相互作用はp = 0.01であった。こうした有用性は、BRCA1メチル化腫瘍、BRCA1 mRNA低発現腫瘍、またはMyriad HRD解析で高スコアの患者では認められなかった。治療とBasal-likeサブタイプとの有意な相互作用は、Non-basal-like(非基底細胞様)サブグループにおける高いドセタキセル応答性によって引き起こされた。

 

進行トリネガ乳がん患者にプラチナベースの化学療法の選択肢を提供する上で、BRCA1/2遺伝子変異有無の検査は有用であるが、BRCA1メチル化またはMyriad HRDの解析は有用でないと著者らは結論づけた。また、Basal-like(基底細胞様)がんの遺伝子発現解析も、治療選択に影響を及ぼす可能性があるとした。

 

これらの知見により、現在多くの国で安価なBRCA1/2生殖細胞系列の検査が実施されているが、PARP阻害剤の費用を医療制度で賄うことができない、またはその国でPARP阻害剤が認可されるまで、高活性で安価なプラチナ化学療法での生物学的標的治療が有用であるとした。

 

本試験は、英国ロンドンの英国がん研究所とKing’s Collegeによって共同で実施された。著者らは、TNT試験管理グループの同僚ら、独立データモニタリング委員会および試験運営委員会、効果判定委員会、試験に資金を提供したCancer Research UK(Cancer Research UK研究助成番号CRUK / 07/012)ならびにBreast Cancer Now(およびその前身の慈善団体Breakthrough Breast Cancer)、現物提供を行なったイングランドの英国国立衛生研究所がん研究ネットワーク(National Institute for Health Research Cancer Research Networks)ならびにスコットランド、ウェールズ、および北アイルランドにおける同等の英国医療サービス(NHS)の研究開発基金ネットワークに謝意を述べている。次世代シーケンシングに適した腫瘍ブロックからの核酸抽出の費用を賄う資金はMyriad Genetics社から提供され、Prosigna試薬キットはNanoString Technologies社から提供された。

 

参考文献

Tutt A, Tovey H, Cheang MCU, et al. Carboplatin in BRCA1/2-mutated and triple negative breast cancer BRCAness subgroups: the TNT Trial. Nature Medicine; Published online 30 April 2018. doi:10.1038/s41591-018-0009-7.

翻訳会津麻美

監修田原梨絵(乳腺科、乳腺腫瘍内科)

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