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HER2変異獲得によりER陽性転移乳がんホルモン療法に耐性が生じる

米国がん学会(AACR)

エストロゲン受容体(ER)陽性の転移乳がん患者の一部において、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)変異の獲得により、ホルモン療法耐性が生じ、そうした耐性がホルモン療法薬フルベストラントとHER2キナーゼ阻害薬ネラチニブの併用療法によって改善する可能性がある。この知見は、2018年米国がん学会(AACR)年次総会(4月14~18日、イリノイ州シカゴで開催)に先立つプレス発表で公表された。

 

「エストロゲン受容体(ER)標的療法で乳がんの再発率と死亡率は低下するが、抵抗性ER陽性転移乳がんでは、必ず薬剤に耐性が生じ、奏効しなくなるため、依然として乳がんで最も多い死因です」とUtthara Nayar医学博士は話す。Nayar氏は本研究の筆頭共著者で、ハーバード大学医学部ダナファーバーがん研究所(ボストン)の内科学共同研究員である。

 

過去の研究で、ER陽性転移乳がん患者の約25〜30%でER活性化変異が確認されているとNayar医師は説明する。「今回の研究の目標は、一般的に使用されている治療法に対してER陽性乳がんがどのように耐性を獲得するかを解明できるような耐性付与機序を特定することです。これにより、転移性乳がん患者のために奏効を予測するバイオマーカーや新たな治療法の開発が進むでしょう」。

 

ダナファーバーで進行中のプロジェクトの一環として、Nayar氏とOfir Cohen氏(本研究の筆頭共著者、Broad Instituteおよびダナファーバー在籍の博士号取得研究者、コンピューター生物学者)らは、ホルモン療法に耐性を示すER陽性転移乳がん患者における転移腫瘍の生検を実施し、全エクソーム解析を用いて調べた。対象患者168人のうち、12人にHER2変異が認められた。そのうち8人はHER2変異活性が以前に確認されていた。Nayar氏らは続いて、入手可能な治療前の原発巣生検データを調べた結果、突然変異活性を有する患者5人中4人は、HER2変異が以前から存在していたことを示す所見がなかったことから、該当患者のHER2変異はホルモン療法の結果として生じたと考えられる。

 

統括著者のNikhil Wagle医師(ボストン、ダナファーバーCenter for Cancer Precision Medicine副所長、ハーバード大学医学部・内科学助教)は、次のように述べる。「HER2変異が転移期にも生じること、つまり、こうした腫瘍が進化することがわかり、驚きました。こうしたHER2変異の獲得は、エストロゲン受容体を標的とする治療に対して耐性が生じる一つの機序とみられ、変異が起こる背景がわかります」。

 

さらに解析したところ、HER2変異によって生じたホルモン療法への耐性は、ネラチニブと選択的ER機能抑制剤フルベストラントの併用によって改善されることが試験管内実験で明らかになった。この併用療法は、ホルモン療法後にHER2に変異を生じ、ER標的療法(ホルモン療法)耐性となった乳がん患者にとって効果的な治療法となる可能性があるとNayar氏は述べる。

 

「1人の患者の転移生検でホルモン療法後にHER2変異が発見されたことをきっかけに、フルベストラント+ネラチニブの第2相試験への登録が進み、部分奏効が6カ月間持続するという結果が出ています。これは、ネラチニブによるER標的療法への再感作を示す私たちの試験管内実験結果と合致します」とNayar氏は言う。

 

Wagle氏は次のように話す。「私たちの研究で、抵抗性転移腫瘍の特徴をつかむことがいかに重要であるかが浮き彫りになりました。こうした腫瘍には、最初の腫瘍生検には存在しなかった標的対象となる抵抗性機序が潜在している可能性があるからです。腫瘍のシーケンシングを繰り返し実施することで、治療抵抗性を引き起こす新たな遺伝子変化を突き止めることができます。これにより医師は、患者の腫瘍で時間をかけて生じる特定の遺伝子変化に応じて、患者に合わせた治療を行うことができるようになります」。

 

本研究の限界として、HER2変異が同定された患者数の少なさ、腫瘍生検の不均一性がある。「これらは実在の検体であり、がんのステージ、受ける治療内容、腫瘍の特徴は患者ごとに異なります」とWagle氏は言う。さらに、患者全員の治療前の生検を確認できたわけではないため、研究者らは、HER2変異が治療後に生じた患者と、以前から変異があった患者の割合をより正確に把握するために、さらに患者を追加して調査する必要がある。

 

本研究は、米国国防総省、AACRランドン財団、NCI乳がんSPORE助成金、Susan G. Komen、V財団、乳がんアライアンス、がんカウチ財団、乳がん研究財団、ACT NOW、ニューヨーク・ファッションフットウェア協会、ダナファーバー/ハーバードがんセンターSPORE助成金による援助を受けた。

 

Wagle氏はFoundation Medicine株主である。 Nayar氏とCohen氏は利益相反がないことを宣言している。

翻訳山田登志子

監修原文堅(乳がん/四国がんセンター)

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