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重度の歯周病とがんリスクの関連にさらなるエビデンス

長期の健康調査中に収集されたデータから、進行した歯周病患者において、がんリスクの上昇との関連についてのさらなるエビデンスが示された。この新しい共同研究は、ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターならびにタフツ大学医学部およびがんセンターの研究者らが主導した。

 

歯周炎とも呼ばれる進行した歯周病は、歯を支持する軟組織および骨に損傷を与える細菌感染によって引き起こされる。これまでの研究で、歯周炎とがんリスクの上昇の関連が示されているが、この2つの疾患を結び付ける正確なメカニズムはいまだ不明である。

 

Journal of the National Cancer Institute誌に掲載されたこの新しい研究で、研究チームは、コミュニティにおけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究への参加の一環として7,466人の参加者に実施された総合的歯科検査のデータを使用し、その後1990年代後半から2012年まで参加者を追跡調査した。歯周炎が重度の参加者では、軽度から歯周炎がない参加者と比較して、がんを発症する相対リスクが24%上昇した。肺がんの場合に最も高いリスクが観察され、次は大腸がんであった。

 

歯がない患者、つまり重度の歯周炎や過去の歯周治療の痕跡の可能性がある患者では、リスクの上昇は28%であったと研究者らは述べた。

 

この関連は、歯周病診断に基づいた特定のがんリスクに対する検診を推奨するほど強いものではないと、ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院の疫学副学部長兼、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターのがん予防管理プログラムの共同リーダーであるElizabeth Platz理学博士は述べた。「しかし、軽度から中等度のがんリスク上昇が複数の研究を通して続いているようです。したがって歯科医師は、患者に歯周病に関連するリスクがあり、がんもその一つであることを、伝えたほうがよいかもしれません」。

 

ARICのデータは、これまでの歯周病とがんリスクを関連づける研究とは異なり、参加者の自己報告ではなくARIC研究の一環として実施された歯科検査から歯周炎と判断された症例であるため、研究に特に有用であるとPlatz博士は述べた。歯科検査では、口内の数カ所で歯肉と歯の間のポケットの深さを詳細に測定した。(一般に、ポケットが深いほど、より進行した歯周炎を示す。)

 

Platz博士は、喫煙者は歯周病になる可能性が高く、喫煙は肺がんや大腸がんのリスクを高めるので、研究チームは患者の喫煙の影響を説明することもできたと述べた。「このグループで喫煙したことのない人に注目すると、それでも歯周病の増加が肺がんと大腸がんのリスク上昇に関連しているというエビデンスがみられました」。

 

Platz博士によると、歯科検査、大腸内視鏡検査などのがん検診、および禁煙などの予防プログラムといったヘルスケアへのアクセスがほとんどまたはまったくない患者も、歯周病とがんの双方のリスクが高いという。「ところが、社会経済的要因とケアへのアクセスや利用について考慮しましたが、これらの要因によって歯周炎とがんリスクとの関連は説明されないようでした」と同博士は述べた。

 

研究者らは、乳がん、前立腺がん、血液がんやリンパ系がんのリスク上昇と歯周炎との間に関連がないことを見出した。このことは、がんと歯周病を関連づけるメカニズムについての手掛かりとなる可能性がある。「歯周病の原因となる細菌は、口から直接肺に、または口から大腸に移動するためかもしれません。もし炎症反応を引き起こすなら、発がんリスクが上昇する可能性があります」とPlatz博士は言う。

 

研究者らはまた、重度の歯周炎患者において、膵臓がんのリスクに統計学的に有意ではないが小幅な上昇がみられたことを明らかにした。これは本研究の筆頭著者であるタフツ大学医学部のDominique Michaud博士が主導する研究など、他の同様の研究でもみられる関連である。「膵臓は口に開口していませんが、細菌が臓器にいたるには他の経路もあります。例えば、もし細菌が出血した歯肉から血流に入れば、循環して臓器に沈着し、炎症反応を引き起こすかもしれません」とPlatz博士は言う。

 

肺がんと大腸がんの場合を除き、ARIC研究のアフリカ系アメリカ人患者では、歯周炎とがんリスク上昇との関連はもっと弱い、または明らかではなかった。「理由は分かりません。ただこの分野はもっと注目されるべきです」とPlatz博士は言う。

 

本研究は、ジョンズホプキンス大学およびタフツ大学のがんの研究者、ならびにノースカロライナ大学歯学部の歯学の研究者との共同研究であった。研究チームは、歯周病を引き起こすプロセスおよび細菌に関連する他のデータを協力して探索し、それらががんリスクと直接どのように関連するのかを解明していく計画である。

 

Michaud博士とPlatz博士は、本研究がより多くの人々に歯科保険を拡大することの重要性も指摘していると述べた。「歯周病そのものだけでなく、伴って生じるリスクについてもっと知ることによって、すべての人に医療保険が提供されるべきであるという観点から、歯科保険への加入に多くの支援が得られるかもしれません」とPlatz博士は述べた。

 

Michaud博士とPlatz博士に加え、本研究に参加した研究者は以下のとおりである。Jiayun Lu, John Barber and Corinne Joshu from Johns Hopkins; Alexandra Peacock-Villada from Tufts University; Anna Prizment from the University of Minnesota; and James Beck and Steven Offenbacher of the University of North Carolina, Chapel Hill

 

本研究は国立がん研究所から助成金の支援を受けた(R01 CA166150、U01 CA164975、P30 CA006973)。コミュニティにおけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究は、国立心肺血液研究所、米国国立衛生研究所、保健福祉省から、連邦政府の補助金によって全額または一部資金の提供を受けた(認可番号:HHSN268201700001I, HHSN268201700003I, HHSN268201700005I, HHSN268201700004I, HHSN268201700002I)。

翻訳坂下 美保子

監修吉松 由貴(呼吸器内科/飯塚病院)、

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