メチルナルトレキサンによって鎮痛剤による便秘が軽減

Methylnaltrexone Relieves Constipation Caused by Pain Medication(Posted: 06/01/2005) 2005年ASCO会議での報告によると、鎮痛剤により便秘を引き起こしているホスピスや緩和治療の重篤な状態の患者において、メチルナルトレキサンは有意に症状を軽減する。


要約

ホスピスや緩和治療中の患者で、オピオイド系鎮痛剤の投与により便秘を発症している重篤な患者にメチルナルトレキサンを投与したところ、2/3以上の患者が24時間以内に便通(排便)がありました。そのうち90%が4時間以内でした。

出典  American Society of Clinical Oncology定例会議, Orlando, Florida, May 17, 2005

癌患者、特に進行した病状で、通常余命は6ヶ月未満と思われる患者が入院するホスピスなどでは、痛み止めの薬を投与されることが多くあります。よく使用される鎮痛剤のひとつがオピオイド薬で、モルヒネ、コデインなどのような麻薬性鎮痛剤の合成薬です。麻薬性鎮痛剤の投与を受けている患者の約半数が、腸の運動がなくなり、便秘を生じます。その苦痛が大変大きいので、患者は病気からの痛みをとるか、オピオイド薬による便秘の苦痛を取るか選択を迫られることがあります。

Methylnaltrexone (MNTX)は1979年に初めて合成されてから、モルヒネによる便秘の治療薬として開発されてきましたが、その使用目的でFDAに承認されていませんでした。Methylnaltrexoneは、血液脳関門を通過しないことから、オピオイド薬の鎮痛効果を低下させずに、その便秘への影響に対して効果を表すと考えられています。どの用量が最も効果的か、また、どの時点で、何回くらい投与するべきかという問題はまだ残っています。

試験
この第3相試験では、16のホスピスおよび緩和ケア施設の余命が6ヶ月未満とみられる患者のうち、48時間以内に便通がない154例をランダムに3つのグループに分けました。1のグループは低用量methylnaltrexone(0.15mg)、2のグループは高用量methylnaltrexone(0.3mg)、3のグループはプラセボを投与されました。この試験は2重盲験で、医師も患者も誰がどの治療を受けているか知りません。この試験では、便通が起こるまでにどのくらいの時間がかかるか(排便までの時間)、副作用、痛み、オピオイドの効果消失の症状について評価されました。

主執筆者は、サンディエゴ・ホスピス と カリフォルニアのPalliative Care(緩和ケア)のJay Thomas, M.D.医師で、スポンサーは製造元であるProgenics Pharmaceuticals社です。

結果
低用量methylnaltrexone治療の患者はプラセボ群より著しく効果がみられました。投与4時間後、プラセボ群では13%でしたが、低用量投与患者の62%に便通がありました。効果は24時間後(68%対33%)の時点でも継続していました。高用量の効果は、どちらの時点でも低用量に比べ4%低かったのですが、低用量70分に比べ、高用量45分と、排便までの時間の中央値は有意に早くなりました。

患者の生存期間の中央値は3週間でした。想定された腹部痙攣、腹部膨満、嘔気、めまいはみられたものの、この薬に関する重篤な有害事象はみられませんでした。また、オピオイドの効果消失もみられず、この薬が、便秘を引き起こす疼痛緩和治療を妨げないことを示唆しています。

コメント
試験に関わった研究者たちによれば、methylnaltrexoneは承認と市場への販売準備が整ったといえます。「いいニュースばかりです。この薬は忍容しやすく、患者の60%がおよそ1時間で効果が現れるのです。」とThomas治験医師は述べています

この試験に登録された末期癌の被験者らは、大きな苦痛を体験していることが多いため、非常に必要とされた方々でした、とThomas氏は言う。Methylnaltrexoneが今回の試験のように注射での投与ではなく、経口での投与が適用できるかは今後の課題でしょう。最適な投与量に調節したり、老齢でない重篤な癌患者やメタドン使用者のような別の被験者における薬の使用を調査するため、他の試験が必要であろう、と、Thomas氏は述べた。

(野中希 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修 )

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