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ベネトクラックス+リツキシマブが白血病(CLL)の予後を改善

治療が奏効しなくなった慢性リンパ性白血病(CLL)患者にとって、新しい薬の併用が有効な選択肢となる可能性がある。第3相臨床試験の中間結果に基づいて、臨床試験責任医師らは、venetoclax[ベネトクラックス]とリツキシマブ(リツキサン)の併用療法が、従来の化学療法と比較して、腫瘍進行のリスクを80%超低下させたことを報告した。

 

いずれの薬剤も、米国の成人において最も頻度の高い種類の白血病であるCLLの治療にすでに使用されている。しかし、本試験は、これら二剤の併用療法と、再発・難治性CLLの従来の治療レジメンであるリツキシマブ・ベンダムスチン(トレアンダ)併用療法とを初めて比較したものである。

 

2つの治療群の間で無増悪生存期間に「非常に明確で大きな差」があったと、オーストラリア、メルボルンにあるロイヤルメルボルン病院所属の臨床試験責任医師John Seymour博士は述べた。Seymour博士は、12月12日に、米国血液学会年次総会において、試験の結果を報告した。

 

ジョンズ・ホプキンス大学血液学部門長Robert Brodsky医師は、「CLLの全体像を変えつつあるさまざまな薬剤があり、ベネトクラックスは確かにその中の1つです」と本試験の記者会見で述べた。

 

慢性リンパ性白血病(CLL)の異なる治療法 

新規発症のCLL患者には、いくつかの異なる治療選択肢がある。多くの患者は、ベンダムスチン+リツキシマブなどの化学療法と免疫療法の併用、またはイブルチニブ(イムブルビカ)などの分子標的治療薬で治療を受ける。しかし、時間がたつにつれて、大部分の患者は治療に反応しなくなり、腫瘍が再燃する。

 

ベネトクラックスは、腫瘍細胞を生かし続ける(BCL-2と呼ばれる)タンパク質を阻害する分子標的治療薬である。ベネトクラックスは、17p欠失として知られるゲノム異常を有する再発・難治性CLL患者の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。白血病細胞に17p欠失を有する患者は、従来の化学療法が充分に奏効しない。

 

ところが、「(患者さんの)17p欠失の有無にかかわらず、ベネトクラックスが再発・難治性CLLに奏効することが示された他の研究もあるのです」と米国国立衛生研究所(NIH)国立心肺血液研究所の臨床医Inhye Ahn医師は述べた。

 

研究者たちは、「これらの新たに承認された薬剤を広く活用しようしています。(なぜなら)これらは非常に効果が高く、化学療法よりも毒性が低いからです」と同医師は付け加えた。

 

マウスを用いた基礎研究において、Seymour博士らはベネトクラックスとリツキシマブを併用すると、いずれかの薬剤単独を用いた時よりも、効果的に白血病細胞の増殖を阻止することを見出した。

 

MURANO試験 

再発・難治性CLL患者を対象としたリツキシマブ+ベネトクラックスの早期臨床試験で得られた有望な結果に基づいて、臨床試験責任医師らはMURANOと呼ばれる第3相試験を開始した。

 

再発・難治性CLL患者約400人が、ベネトクラックス+リツキシマブ群または標準治療群(ベンダムスチン+リツキシマブ)にランダムに割り付けられた。本臨床試験は、ベネトクラックスを共同開発した2つの製薬会社、AbbVie社およびRoche社からの支援を受けた。

 

ベネトクラックスは腫瘍細胞を急速に死滅させるため、腫瘍崩壊症候群と呼ばれる重篤な副作用を引き起こす可能性がある。腫瘍崩壊症候群のリスクを低減するために、ベネトクラックス群の患者には、ベネトクラックスの用量を4週間または5週間かけて徐々に増加させて投与された。その後、ベネトクラックスの投与を続けながら6週目にリツキシマブの投与を開始した。

 

予定されていた中間解析時点で、無増悪生存期間中央値は化学療法(ベンダムスチン+リツキシマブ)を受けた患者では17カ月であった一方、ベネトクラックス+リツキシマブで治療を受けた患者では未到達であった。2年間の治療後に、腫瘍の進行が見られなかった患者の割合は、標準治療群では36%であったのに比較して、ベネトクラックス群で約85%であった。

 

両治療群の患者の約27%に17p欠失の異常が認められた。臨床試験責任医師らが17p欠失の状態によって患者の転帰を解析したところ、ベネトクラックス+リツキシマブの併用は、患者の17p欠失の有無にかかわらず無増悪生存期間を改善した。

 

完全寛解を達成した患者の割合は、標準治療群で8%であったのに比べてベネトクラックス群で25%を超えた。また、ベネトクラックス群で、より多くの患者で血液中に検出可能な腫瘍細胞をほとんどまたは全く認めなくなった(微小残存病変-陰性)。

 

ベネトクラックス+リツキシマブの併用により、化学療法と比較して全生存期間も改善したが、利益が長期にわたって持続するかどうかを確認するためにはより長い追跡期間が必要であるとSeymour博士は説明した。

 

臨床試験責任医師らは、ベネトクラックス+リツキシマブの併用治療について新たな安全性の懸念事項を認めなかった。以前の臨床試験で観察されたように、化学療法群よりもベネトクラックス群の患者のほうがグレードの高い好中球減少症を発症したが、発熱性好中球減少症も重症感染症のどちらもベネトクラックス群のほうが多いという事はなかった。

 

試験の意味の検討

 注目に値する試験デザインの1つの見地は、2群間の治療期間の違いである、とAhn医師は述べた。化学療法群の患者にはベンダムスチン+リツキシマブを最長6ヵ月間投与したのに対して、ベネトクラックス群の患者はリツキシマブを6ヵ月と、ベネトクラックスを最長2年間、毎日投与されている。

 

考慮すべきもう1つの項目は、「ベンダムスチン+リツキシマブのレジメンは、17p欠失の患者さんではよく効かないということです」ともAhn医師は述べた。化学療法群の患者の27%が17p欠失を有していたので、この性質のため治療有効性の評価が低くなった可能性がある。

 

それでもなお、本試験の中間結果は、「ベネトクラックスとリツキシマブの併用が、再発・難治性CLLの有効な治療レジメンであることを実証しています」と同医師は述べた。

 

これらの知見によって「患者さんにとって良い治療選択肢が増えて良い治療法が提供されます」とBrodsky医師は述べた。

 

CLL患者が新たに利用できる他の治療薬には、イブルチニブがあり、過去の治療状況または遺伝子変異にかかわらず、CLLの治療のためFDAによって承認されている。選択肢も次々と変更される可能性がある。例えば、進行中の臨床試験の1つは、再発・難治性CLL患者を対象にイブルチニブ+ベネトクラックスを検討している。

 

Seymour博士は、特定の患者群にとってどの治療選択肢が最も有効であるかを決定するために、慎重にコントロールされた臨床試験が必要であると指摘した。

 

 

翻訳坂下美保子

監修喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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