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鼻性NK/T細胞リンパ腫に対する放射線療法と化学療法の併用

MDアンダーソン OncoLog 2018年1月号(Volume 63 / Issue 1)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

鼻性ナチュラルキラー(NK)T細胞リンパ腫は、まれで局所的な進行性疾患であり、他の非ホジキンリンパ腫の治療に用いられるアントラサイクリンベースの化学療法に対する反応が不良である。早期の鼻性NK/T細胞リンパ腫は高線量の放射線で効果的に局所制御することができるが、近傍の放射性感受性の高い組織に損傷が及ぶのを懸念して多くの腫瘍専門医がこのような治療法を用いることを躊躇している。しかしながら、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの医師らは、この疾患の一次治療法として標的放射線療法を慎重に行い、補助療法として強化化学療法を用いている。この治療の組み合わせの臨床試験では、現在、早期鼻性NK/T細胞リンパ腫患者の登録が行われている。

 

「ほとんどのリンパ腫の場合、化学療法が主な治療法となり、放射線療法は補助療法として最小限の線量で用いられます。鼻性NK/T細胞リンパ腫の治療においても、多くの施設でこのアプローチが採用されてきました」と、放射線腫瘍学部門の教授であるBouthaina Dabaja医師は述べている。「しかし、MDアンダーソンでは、化学療法から放射線療法へと鼻性NK/T細胞リンパ腫治療の枠組みを変更してきました。われわれのアプローチは、局所性疾患の患者の治療を成し遂げることができる主な治療法は放射線であるという信頼できるデータに基づいたものです。われわれの試験結果が、この疾患の標準治療につながることを望みます」。

 

主たる治療法としての放射線

過去数十年の間、腫瘍周辺の正常な組織および器官に深刻な損傷をもたらすことなく、鼻性NK/T細胞リンパ腫に高線量放射線療法を行うことはできなかった。しかし、放射線治療の技術進歩により、局所組織に与える損傷を最小限にとどめつつ、高線量の放射線を用いてこれらの腫瘍を治療することが可能となった。鼻性NK/T細胞リンパ腫が米国より多い日本では、最新の放射線治療技術がこの疾患に対して効果的に利用されている。そしてMDアンダーソンでは、最先端のテクノロジーを用いて、医師らによるこれらの技術改良が革新的な方法で行われている。 

 

MDアンダーソンの放射線腫瘍医らは、放射線を関係のない正常組織ではなく、腫瘍に対して照射することができるようにするために、磁気共鳴画像、陽電子放射断層撮影およびコンピューター断層撮影を組み合わせることで疾患の範囲を明確にした。加えて、目的の領域に照射する線量を調整するために、強度変調放射線治療(IMRT)を用いている。各治療の前には、前回の治療に対する腫瘍の反応を確認するため、さらに必要であれば標的領域を精査するために再撮影を実施する。

 

臨床試験

現在実施中の臨床試験(No. 2013-0367)では、重大な併発症のないステージⅠあるいはⅡの鼻性NK/T細胞リンパ腫患者に対して、総線量50.4〜54.0 Gyの放射線を28〜30分割で照射する。放射線と同時に、全患者に対して、デキサメタゾン、エトポシド、イホスファミドおよびカルボプラチン(DeVIC)による化学療法を3サイクル行う。DeVIC療法は非ホジキンリンパ腫の救済治療処方として開発されたものであり、これまでに鼻性NK/T細胞リンパ腫に対する有効性が確認されている。

 

この試験の主要評価項目は5年無増悪生存率である。研究者らは全生存期間の評価も行い、さらにIMRT治療とDeVIC療法の併用の安全性を評価する予定である。

 

鼻性NK/T細胞リンパ腫はステージⅠあるいはⅡで診断されることが一般的ではあるが、この試験は早期疾患を対象とした数少ない試験の1つである。それでも、疾患の希少性から試験に登録される患者は限られている。2年以上前に登録が開始されてから現在までに、わずか8人の患者しか登録されていない。まだ予備データは得られていないが、Dabaja医師は、高線量IMRT治療とDeVIC療法を併用することで、今までのところ、この試験のほとんどの患者で優れた局所腫瘍制御ができていると述べた。

 

「この試験を通してわれわれは、高線量の放射線と化学療法を併用することで、鼻性NK/T細胞リンパ腫を効果的に治療できるということを示したいのです」と、Dabaja医師は述べた。「さらに、高い毒性を示すことなく、考えられる全ての疾患部位に高線量の放射線を照射できることを実証したいのです」。

 

画像キャプション訳】

鼻性NK/T細胞リンパ腫に対する強度変調放射線治療計画の矢状断像(左)と横断像で、標的領域が100%等線量線(紺色)で囲まれている。画像はBouthaina Dabaja医師の厚意による。

For more information, contact Dr. Bouthaina Dabaja at 713-563-2406 or bdabaja@mdanderson.org. For more information about the clinical trial of radiation and chemotherapy
 for nasal NK T cell lymphoma, visit www.clinicaltrials.org and search for study No. 2013-0367.

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翻訳田村 克代

監修松本 恒(放射線診断・頭頸部インターベンショナルラディオロジー/宮城県立がんセンター 放射線診断科)

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