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HER2+乳がん標準術後療法であるトラスツズマブ12カ月が第3相で支持

高用量ドセタキセル投与を受ける患者に対しては9週間のトラスツズマブで十分である

 

【サンアントニオ乳がんシンポジウム】

HER2陽性早期乳がん患者に対する術後トラスツズマブ9週間+標準的化学療法後の無病生存率(DFS)は、術後トラスツズマブ12カ月+標準的化学療法後のDFSに及ばなかった。このことから、現行の長期トラスツズマブ療法が支持される結果となった。12月5~9日の間に開催された2017年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された第3相Synergism or Long Duration(SOLD)試験のデータで明らかになった。

 

しかし、本研究では、トラスツズマブ12カ月群とトラスツズマブ9週間群とのあいだに副次的評価項目である無遠隔病変生存率(DDFS)および全生存率(OS)に有意差が認められなかった。

 

「HER2陽性乳がん患者におけるトラスツズマブ投与の1年間という期間は恣意的なもので、研究データに基づいていませんでした」、とフィンランドのヘルシンキ大学病院およびヘルシンキ大学腫瘍学部門教授であるHeikki Joensuu医師は述べた。

 

現行の標準療法(化学療法+トラスツズマブ)を確立した大規模ランダム化試験4件すべてにおいて、トラスツズマブを1年間投与していた。したがって、1年間という投与期間が標準になったのだ、とJoensuu医師は説明した。統計学的検出力が比較的限定的なランダム化試験2件において、トラスツズマブ投与を9週間受けた患者と12カ月受けた患者との間にDFSやOSに統計学的差異は認められなかった。

 

「現行の標準療法は長期間にわたり、費用がかさみ、時に心臓の有害事象に関連しています」、とJoensuu医師は述べた。一方、トラスツズマブの忍容性は一般に良好であり、その最も重要な有害事象はうっ血性心不全(CHF)である。うっ血性心不全が発生したのは、重要な臨床試験で治療を受けた患者の3%未満であるが、トラスツズマブ関連CHFのリスクはCHFリスクをすでに有する高齢者でより高くなる可能性がある、とJoensuu医師は付け加えた。

 

Joensuu医師らのチームは標準的治療であるトラスツズマブを化学療法期間中(9週間)に併用し、化学療法終了後単剤療法として投与する(12カ月間)治療に代え、トラスツズマブと化学療法の併用投与を短期間(9週間)行う治療で十分かどうかについて検討した。

 

「この試験治療(トラスツズマブ9週間)の無病生存率(DFS)における有効性が標準療法(トラスツズマブ12カ月)とほぼ同じであることを実証できませんでした」、とJoensuu医師は述べた。「しかし、その点以外で重要な2点の臨床面での評価項目で本件中の副次的目的となる無遠隔病変生存率(DDFS)および全生存率(OS)に大きな群間差は認められませんでした」

 

SOLD試験において、試験責任医師らは、HER2陽性早期乳がん患者2,176例を1:1の割合でトラスツズマブ9週間群あるいはトラスツズマブ12カ月群のいずれかに無作為に割り付けた。

 

両群の患者にドセタキセル(80 mg/m2または100 mg/m2 )+トラスツズマブの週3回を1サイクルとして3サイクル行った後に化学療法を3サイクル行った。トラスツズマブ9週間群の患者にはそれ以上の治療は行わず、トラスツズマブ12カ月群の患者には3週間毎のトラスツズマブ投与を14サイクル行った。エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん患者にはガイドラインに沿った適切な内分泌療法および放射線療法を行った。

 

無病生存率(DFS)は、トラスツズマブ12カ月群で90.5%、トラスツズマブ9週間群では88%であった。無遠隔病変生存率(DDFS)および全生存率(OS)について両群間に有意差は認められなかった。5年DDFSは、トラスツズマブ9週間群では93.2%、トラスツズマブ12カ月群で94.2%であった。5年生存率は、トラスツズマブ9週間群では94.7%、トラスツズマブ12カ月群で95.9%であった。

 

「興味深いことに、事前に計画されたサブグループ解析においてトラスツズマブと併用投与したドセタキセルの用量との間で有意な相互作用を検出しました」、とJoensuu医師は認めた。

 

ドセタキセル100 mg/m2を投与した患者において、9週間のトラスツズマブ療法群のDFSは12カ月のトラスツズマブ療法群のDFSとほぼ同じであったが、ドセタキセル80 mg/m2を投与した患者においては、12カ月のトラスツズマブ療法は9週間よりDFSが優れていた。このことからトラスツズマブと併用したドセタキセルの用量が転帰に影響を及ぼす可能性が示唆される。「この結果とタキサン系薬剤+トラスツズマブの併用投与およびタキサン系薬剤+ペルツズマブの併用投与の短期間2 剤併用HER2阻害をさらに研究する必要があります」、とJoensuu医師は述べた。

 

「こののトラスツズマブ9週間は現行の12カ月のトラスツズマブ療法よりも心臓に対して安全となります」、とJoensuu医師は述べた。心不全は、トラスツズマブ12カ月群の3%、トラスツズマブ9週間群の2%で発生した。のトラスツズマブ9週間群の患者は12カ月のトラスツズマブ療法群の患者よりも左室駆出率(LVEF)が有意に高かったが、絶対差は小さかった。また、ほとんどの左室駆出率はランダム化を行った日から3年以内にベースライン値に復した、とJoensuu医師は述べた。

 

がんの特性、および妥当な期間内に予定していたDFSイベント数に達することができなかったなどの理論上の問題のため、予定よりも統計力が低かったことが本研究の制限である。

 

SOLD試験はPharmac社(ニュージーランド)、サノフィ社、ノバルティス社、フィンランドアカデミー、フィンランドがん協会、ヘルシンキ大学病院研究資金、Sigrid Juselius座談、およびJane and Aatos Erkko財団の助成金を受けた。Joensuu医師はNeutron Therapeutics社の科学アドバイザーであり、Orion Pharma,社より相談料を受領しており、Orion Pharma,社、Faron Pharmaceuticals社、およびSartar Therapeutics.社の株式を保有している。

翻訳三浦恵子

監修下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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