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がん診断後、心臓発作または脳卒中リスクが上昇する可能性

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がん診断後、心臓発作または脳卒中リスクが上昇する可能性

NCI(米国国立がん研究所)

2017年8月25日 NCIスタッフ

 

がんと診断されると、その後の数カ月間、心臓発作または脳卒中のリスクが上昇する可能性があることが、新たな研究結果で示された。実際、がん診断から6カ月以内に、そのいずれかの事象が生じるリスクは、がんのない人のリスクの2倍以上であった。

 

しかし、リスクの増加は、均等にみられたわけではなく、肺がんや進行がんの患者で脳卒中や心臓発作のリスク増加の程度が最も大きかった。この研究について、Weill Cornell MedicineのBabak Navi医師らが8月22日、Journal of the American College of Cardiologyで報告した。

 

がん患者は動脈閉塞(動脈血栓塞栓症)に伴う症候のリスクが高いということは、新しい知見というわけではないと上記研究者らは記述している。しかし、今回の研究は、この問題の潜在的規模、そして、がんの種類とステージによってリスクに重要な違いがあるかどうかをより明確にするために、この課題を初めて全人口規模で分析したものである。

 

今回の知見は、新たにがんと診断された人々のケアに関して重要な課題を提起するものであるとNavi医師は言う。

 

特に、現在はがん治療が進歩し、長期的寛解と治癒がますます多くみられるようになってきているため、治療にあたる医師は患者と協力して、がん克服だけではなく、良好な生活の質を維持しながらの生存にも取り組む必要があります」とNavi医師は話す。つまり、「動脈血栓塞栓症を含む、がんの二次合併症の予防」である。

 

リスクを認識する

米国でがんの積極的治療を受けている人々の数は1300万人と多く、さらに増える見込みである。

 

がん治療を受けている人々は、静脈の中に凝血塊ができる(静脈血栓塞栓症)、特に脚や肺の静脈血栓を発症するリスクがかなり高いことが知られている。

 

本研究によれば、こうしたリスクには複数の要因が関与している。がん患者は血栓を除去する侵襲的処置を受けることが多いこと、凝固や血小板機能のような血栓形成に関わるプロセスに腫瘍やがん治療が作用する可能性があることなどである。

 

静脈血栓塞栓症のリスクについては、腫瘍専門医はすでに患者の治療に際して考慮しているとNavi博士は指摘する。患者の化学療法開始にあたり、この事象リスクが高い患者を識別するために臨床医が使用するスコアがある。そして臨床試験では、上記事象リスクの高い人においてその事象が生じる可能性を下げられるように治療法が検証されている。

 

一方、脳卒中や心臓発作などの動脈血栓塞栓症のリスクは、正しく評価されていないという。

 

付随論説において、ミズーリ大学Center for Precision MedicineのEdward T.H. Yeh医師とHui-Ming Chang医師(公衆衛生学修士)は、がんと診断されると、他の健康上の問題は二の次になることがあると同意見を示した。

 

がんの積極的治療を受けている人にとって、「彼らの主要な医療提供者は腫瘍専門医、がん外科医、放射線腫瘍医である」とYeh医師とChang医師は書いている。

 

同医師らによれば、これらの臨床医の主眼と目標は患者のがんを治療することであり、糖尿病や高コレステロールなど、心臓発作や脳卒中のリスクを高める可能性のある他の健康状態の管理には「ほとんど注意を払っていない」という。

 

肺がんと進行がんが最もリスクが高い

本研究を実施するために、Navi医師らは、NCIのデータベース”Surveillance, Epidemiology, and End Results–Medicare Linked Database“を使用した。2002年から2011年の間に、固形腫瘍で最も多い5つのがん種の一つ、血液腫瘍で最も多い非ホジキンリンパ腫、静脈血栓塞栓症のリスク増加との関連が知られている2つのがん種の診断を受けた28万人近い人々を特定した。がんのある人それぞれを、がんのない「対照」メディケア(高齢者を対象とした米国医療保険制度)患者一人と比較対照した。

 

研究者らは、医療記録の診断コードを用いて、2012年までに研究参加者の間で発生した虚血性脳卒中および心臓発作の全症例を特定した。

 

全体として、がん患者の4.7%が診断から6カ月以内に心臓発作または脳卒中を経験したのに対して、対照群の患者では、比較対照患者のがん診断から6カ月以内に心臓発作または脳卒中を経験したのは2.2%のみであった。

 

今回の報告によれば、肺がん患者は、心臓発作または脳卒中のリスクが群を抜いて最も高く、診断から6カ月以内にいずれかの事象が生じる割合は8.3%であり、対照群では2.4%であった。

 

対照的に、乳がん患者では6カ月経過時点でのリスクの差がはるかに小さく(4.2%対3.8%)、前立腺がん患者では差はなかった(両群とも3.9%)。

 

患者のがん進行度も、心臓発作または脳卒中のリスクと関連しており、がんステージが進んでいるとリスクも増加していた。全体として、例えば、ステージIのがん患者で診断から6カ月以内に事象が生じた割合は3%であったのに対して、ステージIVのがん患者では8%近い割合であった。

 

本研究によれば、がん患者の心臓発作や脳卒中のリスク増加傾向は、診断6カ月後になくなり始め、診断1年後にはほぼ完全になくなっていた。

 

脳卒中と心臓発作のリスクの評価改善

Navi医師は、がんがより進行している人々ほど心臓発作や脳卒中のリスクが高いことに驚きはしないと言う。生物学的観点から、腫瘍は血栓が形成されやすい環境をつくる酵素やタンパク質を放出することがあるため、上記の所見は理にかなっていると同医師は説明した。

 

そして、「がんの治療が始まっていないか、がんが治療に抵抗しているため、がんのコントロールがうまくいっていない患者でリスクが最も高いことは当然です」と付け加えた。

 

肺がん患者でリスク増加が大幅であることもある程度予測されることであると、Lori Minasian 医師(NCIがん予防部次長、Community Oncology Cardiotoxicity Task Force議長)は言う。同Task Forceは、がん治療の心臓への影響に関するNCI研究支援を主導している。

 

肺がんのリスク因子の多くは心血管疾患のリスク因子と共通しており、さらに、肺がん治療に一般的に使用されている治療法には、心臓に損傷を与えるものもあると同医師は言う。

 

より広い視点からみると、複数の要因ががん患者の動脈血栓塞栓症リスクに影響を与える可能性があるとYeh医師とChang医師は記述している。リスク増加傾向は1年以内に大部分がなくなることから、それはがん自体の副産物であり、治療の奏効によりリスクがいずれは下がると言えるのではないかと彼らは推測する。

 

他のエビデンスから、治療そのものがリスク増加の重要な要因であることが示されるとも述べる。例えば、多くの分子標的療法が標的とする分子が、心臓血管系の適切な機能維持でも役割をもっている。

 

がん治療を受けている人々の動脈血栓塞栓症リスク増加に関与する要因や、この問題が他の患者集団でどのくらい重要であるかについて、今回の単一の研究から結論を出すことは難しいとMinasian医師は言う。しかし、腫瘍医がリスクをより適切に評価する上で役立つ指針がいくつかあるとも言う。

 

「この問題を包括的に考えると、評価を3つのカテゴリーに分けることができます。患者のベースラインとなる心血管リスク要因、がんのステージ、そして、患者のがん治療によって引き起こされるこれらの事象のリスクです」と言う。

 

例えば、乳がんと前立腺がんの場合、高齢患者であっても脳卒中または心臓発作のリスクは概して低かった。これらの例では、患者それぞれの併存疾患がリスクの誘因である可能性があるとMinasian医師は述べる。

 

同医師は今回の新しい知見が重要であると言いつつ、それでもなお、患者の元々の健康状態が腫瘍やさまざまながん治療法と相互作用して、心臓発作や脳卒中のリスクにどれだけ影響を及ぼすかについて、さらにデータが必要であると付け加えた。

原文掲載日

翻訳山田登志子

監修廣田裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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