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CDK4/6阻害剤が抗腫瘍免疫応答により乳がん腫瘍縮小に効果

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CDK4/6阻害剤が抗腫瘍免疫応答により乳がん腫瘍縮小に効果

ダナファーバーがん研究所

CDK4/6阻害剤として知られる薬剤が、転移性乳がんの治療に対して承認を得てから間もなく、医師らは驚くべき見解を発表した。がん細胞の分裂を停止させるように設計されたその薬剤は、特定の患者において、単に腫瘍の増殖を停止させるだけでなく、腫瘍を縮小させ、一部の症例ではそれが顕著にみられるという。

 

ダナファーバーがん研究所(ダナファーバー)とブリガム&ウィメンズ病院(BWH)の研究者らが行った新たな研究で、この腫瘍退縮の背景にある意外なメカニズムが明らかになった。今日付けでNature誌の電子版に発表された研究において、CDK4/6阻害剤は、がん細胞の分裂を阻害するだけでなく、免疫系ががん細胞を攻撃し、死滅させるのを促進することが示されている。また、本薬剤を他の免疫療法剤と組み合わせると、抗がん作用はさらに増強されるという。

 

最近、ダナファーバーの研究者らは、CDK4/6阻害剤が特定の蛋白質を過剰に輸送するがん細胞の増殖を遅らせることを発見したが、この発見以降の研究成果をみると、がん治療における本薬剤の利用はまだ始まったばかりであることがわかる。初期の証拠が示すように、免疫療法と組み合わせることでその有用性が増すとすれば、その潜在能力は、現在明らかになっている以上に高いものである可能性がある。

 

「CDK4/6蛋白質は細胞分裂周期の重要な制御因子であり、さまざまな固形腫瘍の形成および増殖に必須の蛋白質です」と述べたのは、ダナファーバーのShom Goel医学博士である。Goel氏は、BWH血液科のMolly DeCristo氏とともに本研究の筆頭著者である。

 

Goel氏は、「これらの蛋白質を阻害する薬剤、すなわちCDK4/6阻害剤は、一部の転移性乳がん患者に対して医薬品承認を受けていますが、臨床試験では、他の種類の腫瘍に対しても効果が期待できることが示されています。これらの薬剤の初期臨床試験において、一部の乳がん患者では、細胞分裂を阻害する薬剤で期待されるような、腫瘍が同じ大きさで維持されるという結果だけにとどまりませんでした。腫瘍が縮小し始め、時に劇的な縮小がみられたのです」と述べた。

 

このような現象がみられる理由を明らかにするため、乳房腫瘍または他の固形腫瘍のマウスモデルを用い、abemaciclib[アベマシクリブ]というCDK4/6阻害剤の効果を調査した。その結果、アベマシクリブは腫瘍細胞周期の進行を遅らせるだけでなく、免疫系が腫瘍を攻撃するように仕向けることが明らかになった。この研究結果は、乳がんを対象としたCDK4/6阻害剤の臨床試験に参加する女性の組織サンプルの分析でも確認された。

 

研究者らは、CDK4/6阻害剤が2つの経路で抗腫瘍免疫応答を引き起こすことを発見した。がん細胞において、本薬剤は、細胞表面上での異常蛋白質の表出を実質的に増加させる。抗原と呼ばれるこれらの蛋白質は、異常細胞またはがん細胞が存在し、排除する必要があることを免疫系に伝えるシグナルとして働く。同時に、本薬剤は制御性T細胞(Treg)として知られる免疫細胞の減少を引き起こし、通常は疾患または感染に対する免疫応答が抑制される。Tregが減少すればするほど、免疫系による攻撃は激しくなる。これらのプロセスの累積効果が、腫瘍増殖の停止または腫瘍退縮である。

 

「CDK4/6阻害による抗腫瘍免疫応答は予想外なものでした。これまでは、CDK4/6阻害剤は、T細胞の増殖に作用して抗腫瘍免疫を阻害すると考えられていましたが、 われわれの発見はまったく逆のことを示していました」とDeCristo氏はいう。「この驚くべき発見により、免疫療法とCDK4/6阻害剤との併用が可能になります」。

 

臨床試験では、アベマシクリブの単独投与を受けた乳がん患者の約20%が顕著な反応を示し、他の20~30%の患者では腫瘍増殖が抑制されたという。さらに、この反応は治療開始から4カ月以内に現れる傾向があったと報告している。

 

免疫チェックポイント阻害剤として知られる免疫療法剤は、免疫系による攻撃を回避するがんの性質を無効化する薬剤であるが、本研究では、アベマシクリブをこの免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせてマウスに投与し、より良好な結果が得られている。「一部の患者において、CDK4/6阻害剤は、免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果に対するがんの感受性を高めることができると考えられます」と著者らは述べる。「これまでに行われた試験で免疫療法の効果がほとんど得られなかった乳がん患者にとって、この結果は特に希望を与えるものになるでしょう」。

 

CDK4/6阻害剤の恩恵を十分に享受している患者がいるいっぽうで、そうでない患者も存在する。その理由を明らかにし、より多くの患者が本薬剤の恩恵を得られるようにするためには、さらなる研究が必要である。著者らはさらに、本研究の結果は、CDK4/6阻害剤と異なる種類の免疫療法とを組み合わせたレジメンの研究を促進するであろうと述べている。

 

本研究は、ダナファーバーのJean Zhao博士とBWHおよびBroad Institute of Harvard and MITのSandra McAllister博士の研究室で行われた。二人は、ダナファーバーのHye-Jung Kim博士と共に本研究の共同統括著者である。共同著者は以下のとおりである。April C. Watt, Haley BrinJones, Ben B. Li, Naveed Khan, Shaozhen Xie, PhD, Otto Metzger-Filho, MD, Ian E. Krop, MD, PhD, Eric P. Winer, MD, and Thomas M. Roberts, PhD, of Dana-Farber; Jaclyn Sceneay, PhD, Jessalyn M. Ubellacker, and Susanne Ramm, PhD, of BWH; Jeremy Hoog and Cynthia Ma, MD, PhD, of Washington University School of Medicine; and Matthew Ellis, MD, PhD, of Baylor College of Medicine。

原文掲載日

翻訳工藤章子

監修下村 昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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