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くすぶり型骨髄腫に対する免疫療法

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くすぶり型骨髄腫に対する免疫療法

MDアンダーソン 月刊OncoLog誌2017年8月号

MDアンダーソン OncoLog 2017年8月号(Volume 62 / Issue 8)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

前がん状態から多発性骨髄腫への移行を遅らせるためのPD-1、CD38阻害剤の臨床試験

最近まで、くすぶり型骨髄腫の患者は、疾患がやがて悪性腫瘍へ進行してくのを経過観察する以外に選択肢がなかった。 しかし現在行われている免疫療法薬を使った2つの臨床試験は、前がん状態の疾患の進行を遅らせ、生存期間を年単位で延長する機会を与えるものだ。

 

くすぶり型骨髄腫は症状がなく、主に血清および骨髄のクローン性形質細胞中の骨髄腫産生タンパク質(例えば、モノクローナルタンパク質、遊離軽鎖タンパク質)のレベルによって診断される。 これらのレベルは、臨床医が患者の疾患を低、中、または高リスクに分類するのに役立つ。

 

くすぶり型骨髄腫は、多発性骨髄腫に移行することが予測されるため、患者のリスクレベルは疾患がどのくらい早く進行するかを示唆している。例えば、中リスクのくすぶり型骨髄腫は、5年以内に多発性骨髄腫に移行する可能性が50%から74%であることを示す。 患者のリスクレベルは、疾患をモニターする目的で病院に来る頻度を決定するのに役立つ。

 

くすぶり型骨髄腫の標準的な管理戦略は経過観察だが、進行を遅らせるための承認済み多発性骨髄腫化学療法レジメンの使用が、複数の臨床試験で評価されている。 最近の多施設第2相試験では、高リスクのくすぶり型骨髄腫患者におけるカルフィゾミブ、レナリドミドおよびデキサメタゾンのレジメンが評価された。 試験結果は有望だったものの、患者にとっては厳しいものであった。

 

「この試験の登録患者は、1週間に2回の点滴投与を8カ月間にわたり続け、移植可能な患者については幹細胞採取も行いました」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのリンパ腫および骨髄腫部門の助教授で、同試験の共同試験責任医師でもあるElisabet Manasanch医師は述べた。「 くすぶり型骨髄腫患者は、病気の症状を実感していないので、つらい治療を受け入れることは難しいのです」。

 

Manasanch医師らは、くすぶり型骨髄腫の進行を遅らせるためのより侵襲性の低い治療法を模索する中で、免疫療法に目を向けた。 同医師は、異なる免疫療法を使った現在進行中の2つの臨床試験で主席研究者をつとめている。

 

PD-1阻害

免疫チェックポイントタンパク質のPD-1(プログラム細胞死タンパク質1)を阻害するペムブロリズマブは、いくつかの進行がんの治療のために米国食品医薬品局(FDA)により承認され、多発性骨髄腫に対しても研究されている。 再発性、難治性の多発性骨髄腫患者におけるぺムブロリズマブと低用量の化学療法の早期試験が有望な結果を示したことで、同様の第3相試験(No. 2015-1037)につながった。同試験は進行中であるが、登録患者の募集は終了している。ぺムブロリズマブがくすぶり型骨髄腫の進行を遅らせるかどうかを調べるために、Manasanch医師はペムブロリズマブの第1相試験(No. 2015-0371)を率いている。

 

この第1相試験は、2016年に中または高リスクのくすぶり型骨髄腫患者を登録し始め、登録をほぼ完了した。 患者は3週間に1回のペンブロリズマブの点滴投与を最大24サイクル受ける。試験の主要評価項目は、奏効率である。奏効は、血清および尿中の骨髄腫産生タンパク質レベルの減少、または骨髄中のクローン性形質細胞レベルの減少と定義される。

 

Manasanch医師は、治療を開始した12人の患者が示す初期の結果に手ごたえを感じ、2017年12月の米国血液学会年次総会でこれらの知見を発表する予定にしている。「これらの結果は画期的なものです」と同医師は述べた。

 

CD38阻害 

CD38は多くのリンパ球の表面に見られ、骨髄腫細胞で過剰発現される糖タンパク質である。 CD38を阻害する薬物の一つであるダラツムマブは、再発性、難治性多発性骨髄腫の治療のためにFDAの承認を受けている。別のCD38阻害剤isatuximabは、現在、第2相臨床試験(No.2015-0148)に高リスクのくすぶり型骨髄腫を有する患者を登録している。

 

本試験の患者は、最初の28日間は毎週isatuximabの静脈内投与を受ける。続いて5サイクルにわたり隔週の投与を受け、その後は最長24サイクルまで4週間毎の投与となる。主要評価項目は奏効率である。また、 治療の安全性と実行可能性も評価される。

 

「私たちの目標は、6カ月間の治療後に70%の奏効率を達成することです」とManasanch医師は言う。同医師は 予備的な結果を2018年に発表したいと付け加えた。

 

広がる選択肢 

治療を希望する中または高リスクのくすぶり型骨髄腫の患者にとって、より低い毒性プロファイルを有する免疫療法薬は、伝統的な化学療法レジメンと比べてより魅力的な選択肢である。 Manasanch医師は、同医師の研究がくすぶり型骨髄腫の進行を最も遅らせる免疫療法薬を特定するだけでなく、治療が必要な患者にも役立つと考えている(下記「観察研究でくすぶり型骨髄腫の進行指標が明らかになる可能性」参照)。

「これらは重要な研究であり、私たちは既に重要な知見を得ている」とManasanch医師は述べた。「私たちはこの病気の治療に対し、大きなステップを踏み出しているのです」。

 

【観察研究でくすぶり型骨髄腫の進行指標が明らかになる可能性】

くすぶり型骨髄腫は、血清中の骨髄腫産生タンパク質のレベルが低いことを特徴とする、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)として始まる。 しかし、MGUSからくすぶり型骨髄腫、そして多発性骨髄腫への移行については、十分に解明されていない。

 

「患者によっては、病気が進行するのに20年かかることもありますが、数年またはそれ以下で進行してしまう場合もあります」とManasanch医師は語った。

 

MGUSとくすぶり型骨髄腫を分類する基準は、メイヨークリニック、Programa para el Tratamiento de Hemopatías Malignas、SWOGを含むさまざまな団体によって開発されてきたが、どの基準も100%正確とはいえず、解釈が難しい。 さらにこれらの基準の一部は、大きながんセンター以外では通常行わない高度なフローサイトメトリーや遺伝子発現プロファイリングに頼っている。

 

Manasanch医師は、疾患進行の速度をより適切に理解し、そうした進行の分子マーカーを同定するために、MGUS患者とくすぶりの骨髄腫患者を3年間の観察研究(番号PA150575)に登録している。 患者の疾患は、ベースライン時、1年後、2年後および3年後のフォローアップ時の骨格X線写真、ベースライン時および3年間のフォローアップ後の骨髄穿刺と生検、 6カ月ごとの標準的な血液検査と尿検査によってモニターされる。 多発性骨髄腫への移行の徴候が見られる場合には、臨床的に必要な検査を追加することもある。

 

「観察研究と、ぺムブロリズマブおよびisatuximabの試験では、MGUSとくすぶり型骨髄腫を分類するために使われたマーカーに関するデータを収集しています」とManasanch医師は話した。 「この情報が臨床で使えるより適切な基準につながることを願っています。 患者の状態が良性から、健康を害する可能性を示す状態に移行する際のマーカーを見つけたいのです」。

 

【写真キャプション訳】

Elisabet Manasanch医師と治療について話すMDアンダーソンの患者でMD Anderson patient Robert Brown (right), a physician from Alabama, discusses his treatment with Dr. Elisabet Manasanch.アラバマ州で医師をしているRobert Brown氏(右)。 Dr. Brown has been diagnosed with smoldering myeloma and receives the immunotherapy drug pembrolizumab in a clinical trial.くすぶり型骨髄腫と診断されたBrown医師は、臨床試験に参加して免疫療法剤のペムブロリズマブの投与を受けている。

 

For more information, contact Dr. Elisabet Manasanch at 713-745-5067 or eemanasanch@mdanderson.org.

FURTHER READING
Lee HC, Patel K, Kongtim P, et al. Multiple myeloma and other plasma cell dyscrasias. In: The MD Anderson Manual of Medical Oncology. 3rd ed. Kantarjian HM, Wolff RA, Eds. New York: McGraw-Hill Education; 2016:229–253.

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。
 

原文掲載日

翻訳片瀬 ケイ

監修林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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