HER2過剰発現/増幅/変異、転移肺がんへのT-DM1 | 海外がん医療情報リファレンス

HER2過剰発現/増幅/変異、転移肺がんへのT-DM1

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HER2過剰発現/増幅/変異、転移肺がんへのT-DM1

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

2017年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会臨床科学シンポジウムハイライト

トピック:トランスレーショナルリサーチ/肺他の胸部腫瘍/抗がん剤およびバイオ製剤

6月4日に米国シカゴで開催された2017年ASCO年次総会の「古い標的と新たな薬剤:HER2とMET」というタイトルの臨床科学シンポジウムでは、HER2過剰発現を有する局所進行性または転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)におけるT-DM1の臨床活性について報告する最初の研究結果が発表された。バスケット試験である次に発表された研究では、HER2活性化変異を有する肺がん患者において、T-DM1が有効で忍容性が高いことが示された。

 

HER2過剰発現を有する局所進行性または転移性NSCLCの治療歴がある患者におけるT-DM1の有効性、安全性およびバイオマーカー結果

T-DM1は、HER2陽性転移性乳がんの管理のために承認された抗体薬物複合体である。免疫組織化学検査(IHC)によって評価されるHER2過剰発現は、NSCLC(腺がん)の不良予後と関連している。乳がんおよび胃がんとは対照的に、NSCLCにおけるHER2過剰発現は、必ずしもHER2遺伝子増幅と同時に発生するとはかぎらない。 HER2遺伝子増幅およびHER2遺伝子変異は、一般に、NSCLCにおいて相互排他的である(どちらかしか起こらない)。

 

2017年ASCO年次総会では、HER2過剰発現を有する転移性NSCLCの治療歴があり、T-DM1の単剤治療を受けた患者を対象とした、第2相試験(NCT02289833)の主要な結果が報告された。この試験は患者登録を完了しており現在進行中である。

 

対象は、HER2過剰発現を有する転移性NSCLCに対してプラチナ製剤併用療法による治療歴のある患者である。3週間ごとにT-DM1 3.6mg/kgを投与し、IHC法(IHC 2+ vs IHC 3+ [10%以上の細胞をそれぞれ2+または3+の濃度で染色])を用いて、1カ所の施設で集中して判定したHER2の状態に基づいて、2つのコホートで解析を行った。ISH法を用いてHER2遺伝子増幅を評価した(HER2遺伝子比≧2.0)。

 

主要評価項目は、客観的奏効率(ORR、RECIST v1.1基準で完全奏効または部分奏効が[4週間以上経過して]確定した患者の割合)である。本解析の臨床試験カットオフ日は2016年10月26日であった。

 

393人のスクリーニング検査を受けた患者のうち102人(26%)がIHC 2+群で、31人(8%)がIHC 3+群であった。合計49人の患者(IHC 2+群n=29、 IHC 3+群n=20)にT-DM1が投与された。カットオフ時の追跡期間中央値は16.3カ月(範囲0.9* ~22.4カ月、*=打ち切り観測値)であった。 IHC 2+群患者では奏効が認められなかった(0%、95%CI 0-11.9)。4人のIHC 3+群患者では部分奏効が認められ(20%、95%CI 5.7-43.7)、奏効期間中央値は7.3カ月(範囲2.9〜8.3カ月)であった。

 

IHC 2+群およびIHC 3+群の患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は、それぞれ2.6カ月(95%CI 1.4-2.8)および2.7カ月(95%CI 1.4-8.3)であった。試験治療開始後6カ月時点で、9人の患者(IHC 2+群n=4、IHC3+群n=5)においてPFSイベントのリスクが依然として高かった。

 

全生存期間中央値は、IHC 2+群患者では12.2カ月(95%CI 3.8-推定不能[NE])で、IHC 3+群患者では12.1カ月(95%CI 9.3-推定不能)であった。

 

探索的バイオマーカー解析から、次世代シーケンサー(*数万ものDNA塩基配列を高速に解析できる装置)によりHER2 IHC 3+群でかつHER遺伝子増幅を有する患者が奏効を示す可能性が高いことが示唆された。これらの基準を満たす5人の患者のうち2人がT-DM1に客観的奏効を示した。

 

11人の患者(22%)がグレード3〜4の有害事象を経験し、2人以上の患者で報告された事象は疲労および呼吸困難のみであった(それぞれn=2)。

 

著者らは、本研究がHER2過剰発現を有する転移性NSCLCにおけるT-DM1の臨床活性について報告する最初の研究であると結論づけた。客観的奏効がIHC 3+群患者で得られた。今後の研究によりHER2遺伝子増幅および他のバイオマーカーの検出が向上することで、T-DM1の利益を受ける可能性のある患者群を精緻に選ぶことができるようになる可能性がある。

 

HER2遺伝子変異肺がん患者におけるT-DM1:第2相バスケット試験の結果

HER2遺伝子変異は、2%の肺がんで起こり、トラスツズマブに対するin vitro感受性試験では受容体二量体化およびキナーゼ活性化が認められる。

 

HER2遺伝子変異を有する肺がん患者は、HER2遺伝子増幅または変異を有するがんにおけるトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)のバスケット試験(NCT02675829)の患者群に登録され、3週間ごとに3.6mg/kgの静脈内投与の治療を受けた。主要評価項目は、RECIST v1.1基準を用いるORRであった。Simonの最適2段階デザインが用いられた。他の評価項目は、奏効期間(DoR)、PFSおよび毒性などであった。

 

HER2検査を、次世代シーケンシング(NGS)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法およびIHC法を用いて、腫瘍組織に対して行った。

 

コホートは、18人の治療患者で患者登録を完了した。年齢中央値は63歳(範囲47〜74歳)で、72%が女性、39%が非喫煙者で、全患者が腺がんであった。全身療法治療歴の中央値は2(範囲0〜4)であった。

 

本試験では、ORRは44%(8/18で確定され、95%CI 22-69%)で、主要評価項目を達成した。DoR中央値は到達せず(範囲3~7+カ月)、PFS中央値は4ヶ月(95%CI 3カ月-到達せず)であった。8人の奏効患者のうち6人が、HER2標的療法歴を含め、多くの治療歴を有していた。

 

HER2のすべての主要ドメインにおいて、エクソン20挿入が10(56%)、点突然変異および欠失変異が8(44%)であった。奏効患者は、複数の遺伝子変異サブタイプ(A775_G776insYVMA、G776delinsVC、V659E、S310F)にわたってみられた。HER2遺伝子増幅は、NGSでは全患者が陰性で、FISH法では12人の患者のうち1人が陽性であった。検査した患者10人中、IHC 3+群はいなかった。

 

HER2標的化イメージング、HER2クローン解析およびHER2機能解析ならびにPDXモデルの観点から進行中のトランスレーショナルリサーチがある。

 

毒性は、輸液反応、血小板減少症および高トランスアミナーゼ血症など、主にグレード1または2であった。用量削減または治療関連死はなかった。

 

著者らは、トラスツズマブ エムタンシンが、肺がんおよびHER2活性化突然変異を有する患者において有効で耐容性が高いと結論づけた。本研究は、その主要評価項目を達成しており、その結果は、肺がんおよびHER2活性化突然変異を有する患者を対象とする検証的多施設試験の正当性を証明している。

 

HER2陽性肺がんにおける抗体薬物複合体

 

T-DM1としても知られているトラスツズマブ エムタンシンは、トラスツズマブと抗微小管剤エムタンシンとを結合するHER2標的抗体薬物複合体である。

 

ニューヨーク大学ランゴン医療センターおよびローラ・アイザック・パールマターがんセンターのLeena Gandhi医学博士は、本研究の結果を検討した結果、HER2過剰発現が遺伝子増幅または遺伝子変異よりも多く発生していると述べた。過去の研究では、HER2過剰発現を有するNSCLCにおいてトラスツズマブまたはペルツズマブの有用性は認められなかった。しかし、本シンポジウムで発表された研究では、IHC3 陽性群の患者またはHER2遺伝子増幅を有する患者はわずかであるが、その患者においてより有用性が高いように思われた。Gandhiは全体的に見て、HER2過剰発現を標的と解釈するのは難しいと述べた。数が少ないため、遺伝子増幅および遺伝子変異と発現との関係、ならびに遺伝子増幅と奏効との関係の観点からの解釈が難しくなっている。

 

Gandhi博士は、「正しい標的を同定できたのか?」というタイトルのディスカッションの一部で、HER2遺伝子変異が、T-DM1の奏効を含むHER2標的療法の効果の最も予測可能な因子であると述べた。高レベルのHER2発現は、遺伝子増幅および効果と何らかの関連がある可能性がある。遺伝子増幅および変異は、HER2標的療法の効果の不完全な予測因子のままである。バスケット試験のHER2遺伝子増幅患者群の結果が待たれる。

 

Gandhi博士は、「正しい標的を同定できたのか?」というタイトルのディスカッションの一部で、T-DM1が有望な奏効率を示していると述べた。化学療法と比較してPFSが上回るかどうかについては依然としてわかっていない。さらに新しいキナーゼ阻害剤が試験中である(AP32788、ピロチニブ、およびポジオチニブ)。Gandhi博士はさらに複雑な標的を扱うことについて疑問を呈した。Gandhi博士は、HER2の効果の活性化が二量体化パートナーおよび下流エフェクターの変化に依存する可能性があり、併用療法が有益であるかもしれないと考えている。

 

References

Stinchcombe T, Stahel RA, Bubendorf L, et al. Efficacy, safety, and biomarker results of trastuzumab emtansine (T-DM1) in patients (pts) with previously treated HER2-overexpressing locally advanced or metastatic non-small cell lung cancer (mNSCLC).J Clin Oncol 35, 2017 (suppl; abstr 8509).

Li BT, Shen R, Buonocore D, et al. Ado-trastuzumab emtansine in patients with HER2 mutant lung cancers: Results from a phase II basket trial. J Clin Oncol 35, 2017 (suppl; abstr 8510).

原文掲載日

翻訳会津麻美

監修吉松由貴(呼吸器内科/飯塚病院)

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