B細胞性腫瘍向けに、キメラ抗原受容体を用いたナチュラルキラー細胞療法 | 海外がん医療情報リファレンス

B細胞性腫瘍向けに、キメラ抗原受容体を用いたナチュラルキラー細胞療法

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B細胞性腫瘍向けに、キメラ抗原受容体を用いたナチュラルキラー細胞療法

MDアンダーソン 月刊OncoLog誌2017年5月号

MDアンダーソン OncoLog 2017年5月号(Volume 62 / Issue 5-6)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

B細胞性腫瘍向けに、キメラ抗原受容体を用いたナチュラルキラー細胞療法

急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、その他のリンパ性がん治療に期待できる、実験段階の治療の新たな試み

B細胞性腫瘍患者に対するキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の臨床試験で、注目に値する奏効率および長期間にわたる寛解の報告が出はじめている。しかしこの有望な治療も、CAR T細胞の作製に十分なT細胞が不足している、あるいはCAR T細胞の作製に必要な期間、治療を中断できない患者にとっては、手の届かないものである。

 

こうした障壁を回避し、CARを用いた療法をB細胞性腫瘍の患者にを拡大するにあたり、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、ナチュラルキラー(NK)細胞に注目している。近く、再発性または難治性のB細胞性腫瘍患者のCAR NK細胞の臨床試験が開始される。

 

T細胞の潜在的な限界

CAR T細胞療法では、アフェレシス(体外循環で血液から特定成分を分離、処理する)により患者の血液からT細胞を採取する。研究室に運ばれたT細胞は、その表面にCARを発現するように遺伝子操作が行われる。 CARによりT細胞は、がん細胞が発現している特定の抗原を認識できるようになり、がん細胞を標的にする能力がアップする。研究室で 得られたCAR T細胞をin vitro (試験管内)で増殖させた後に患者の体内に戻し、標的抗原を発現しているがん細胞を攻撃して殺傷する。 CAR T細胞は、体内に注入された後も長く体内に残るので、再発を防ぎ、長期的な寛解につなげることができる。

 

しかしながら、CARを用いたT細胞療法には大きな欠点がある。「CAR T細胞療法の主要な問題は、自己のT細胞を使用しなければならないことです。これは、患者ごとに個別化した製品をつくる必要があることを意味します」と、幹細胞移植および細胞療法科教授のKaty Rezvani医師は述べた。同種異系T細胞は、生命を脅かす移植片対宿主病(GVHD)のリスクが高いため、CAR T細胞療法に使用することはできない。「患者自身のT細胞を採取して操作してCARを発現させ、それを増やして患者の体内に戻す作業に時間がかかり、また、常に実行可能とは限りません。その間に患者の病気が進行する場合もありますし、患者が多くの化学療法を受けていることで、生成に必要な数のT細胞が採れないこともあるのです」。

 

CAR T細胞に起こりうる制約を回避するため、Rezvani医師と、幹細胞移植および細胞療法学科教授のElizabeth Shpall医師が率いるグループは、CARを用いた細胞療法で、代わりにNK細胞を使うことを提案している。

 

NK細胞の利点

「NK細胞の素晴らしい点は、患者に同種異系NK細胞を与えても、同種異系T細胞のようにGVHDを起こさないことです」とRezvani医師は述べた。「MDアンダーソンや他の医療センターでも、多くの患者が免疫療法のために同種異系NK細胞を受けていますが、GVHDのリスクはありません」と語った。

 

この利点をCARを用いた療法に活用できれば、大きな利益につながる可能性がある。 臍帯血由来のNK細胞をCARが発現するように操作し、保存すれば、事実上、どの患者にも使える。このアプローチならば、患者ごとに腫瘍を標的とする新たな細胞をつくる必要性を排除するだけでなく、生成にかかる数週間という待ち時間もなくすことができる。

 

「NK細胞を使うことで、患者ごとに新たな製品を作らなければならないというT細胞の限界を克服することができるという考え方です」とRezvani医師は述べた。「すぐに使用できる既製品を用意することができるのです」。

 

MDアンダーソンがんセンターでは、CARを用いた療法に使うNK細胞は、Shpall医師が率いる同センターの臍帯血バンクの臍帯血から得ている。レトロウイルスベクターを使って、NK細胞のDNAに特定の機能を持つ複数の新たな遺伝子を形質導入する。 B細胞性腫瘍に特有のCD19は、この疾患に対するCAR NK細胞の特異性を増加させる。 細胞増殖および生存を促進するIL15は、体内でのCAR NK細胞の存在期間を延長する。この遺伝子がなければ、細胞は体内に注入後、2週間以上は持続しない。

 

「 IL15を追加することで持続性が増し、より良い治療効果が期待できます」とRezvani医師は語った。

 

最後に、誘導型CASP9ベースの「自殺遺伝子」も加えられる。この遺伝子は、小分子のdimerizer(量体化因子)によって活性化されるとCAR NK細胞のアポトーシスを誘導する。これは、細胞が相当な毒性をもたらした場合に、細胞を排除する手段である。

 

「遺伝子操作されていない同種異系NK細胞は、毒性があったとしても最小限ですが、操作によりNK細胞にCARを発現させ、サイトカイン受容体を持つようになると、毒性も出てくるかもしれません。そのために、自殺遺伝子が必要なのです」とDr. Rezvani医師は述べた。

 

CAR NK細胞の前臨床試験では、有望な結果が示されている。 CD19受容体のみを発現するCAR NK細胞と比べ、 CD19 、IL15 、およびCASP9ベースの自殺遺伝子が導入されたCAR NK細胞は、in vitroで有意により良好な増殖を示し、リンパ腫のマウスモデルにおいて有意に大きな腫瘍阻害能力と、より長期の生存をもたらした。 さらに自殺遺伝子を薬理学的に活性化させることにより、in vitroおよびマウスモデルの両方で、CAR NK細胞は効率的に排除された。

 

 

今後の臨床試験

有望な前臨床試験結果に基づいて、Rezvani医師、Shpall医師らは、CAR NK細胞の臨床試験に移行をはじめている。CAR NK細胞の初めての臨床試験では、CD19を発現しているB細胞性腫瘍を有する患者を登録する。これらのがんにおいては、CD19を標的としたCAR T細胞療法が成功しているからである。第1/ 2相試験では、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫を含む再発性または難治性のB細胞性腫瘍患者は、CAR NK細胞を受ける前に、シクロホスファミドおよびフルダラビンによる基本的な標準化学療法を受ける。

 

「こうした患者には、再発や、治療に反応しない疾患を根絶させる選択肢が多くないのです」とRezvani医師は話した。

 

この療法に伴う制約は管理可能なものだと、Rezvani医師は予測する。「CAR T細胞の経験から、主な制約は毒性に関連すると推定されます」と、同医師は述べた。 CAR T細胞は、活性化されたT細胞のサイトカインの大量分泌により、サイトカイン放出症候群を引き起こす可能性もある。極端な場合には、重篤な全身性炎症反応の症状に似た症状を起こす場合もある。 CAR T細胞はまた、神経毒性の影響を与える可能性もある。「良いニュースは、私達はすでにCAR T細胞の毒性を管理した経験があり、それを元に、CAR NK細胞で同様のことが起きた場合に毒性を予防し、管理するための非常に厳格なアルゴリズムをプロトロルに組み込んであります」。

 

臨床試験実施計画は、既に承認プロセスに入っているとRezvani医師は言う。同医師と Shpall医師は、MD アンダーソンの患者を対象に、近く、試験を開始できることを期待している。

 

 

大変革をもたらす可能性

Rezvani医師は、多発性骨髄腫および急性骨髄性白血病、そして骨髄異形成症候群を含む、その他の血液のがんをターゲットに、CAR NK細胞を使う計画があると述べた。 CAR NK細胞を利用して、いくつかの固形がんを標的にすることも可能であり、この領域での予備的データの蓄積も始まっている。

 

「CAR NK細胞のアプローチがうまく行けば、大変革と言えるでしょう。今現在やっているCAR T細胞療法よりもはるかに多くの患者に対して、すぐに使える効果的な既製の療法を初めて手にすることができるのです」とRezvani医師は述べた。

 

【画像キャプション訳】

Elizabeth Shpall 医師と(中央)とKaty Rezvani医師が見守るなか、操作後のNK細胞を保存するための凍結培地を準備する幹細胞移植研究室のPatrick Olivarez臨床細胞療法担当(左)。

For more information, contact Dr. Katy Rezvani at 713-794-4260 or Dr. Elizabeth Shpall at 713-745-2161.

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳片瀬 ケイ

監修吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)、

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