ナッツ類摂取と大腸がんの長期生存が関連

ASCOの見解

「基本の健康的な食事が、がんの治療中には見落とされることがよくあります。本研究は、ナッツ類を食べるという単純なことが、患者の長期生存に影響を与える可能性があることを示しています」と、ASCO会長で米国内科学会名誉上級会員(FACP)、米国臨床腫瘍学会フェロー(FASCO)のDaniel F. Hayes医師は述べた。「ナッツ摂取と健康的な食事は一般的に、大腸がんの治療法について計画する際に、臨床医と患者が注意すべき要素です」。

ステージ3の大腸がん患者826人を対象とした観察研究では、1週間に2オンス(56.7グラム)以上のナッツを摂取する患者はナッツを摂取しない患者よりも、がん再発の可能性が42%低く、死亡率が57%低いことが分かった。

二次分析では、ナッツ摂取で有益性があるのはナッツ類(木の実)に限ることが明らかになった。ナッツ類には、アーモンド、クルミ、ヘーゼルナッツ、カシュー、ピーカンなどがある。これらの所見は、シカゴで開催される2017年ASCO年次総会で発表される予定である。

「心疾患や糖尿病の分野において、数多くの研究がナッツ摂取の有益性を示しており、これらの有益性が大腸がん患者にも当てはまるかどうかを究明することが重要であると感じていました」と、本研究の筆頭著者でダナファーバーがん研究所の医学臨床フェローであるTemidayo Fadelu医師は述べた。「化学療法の利益を受ける進行疾患患者は、再発や死亡の可能性を減らすために他にできることは何かとよく聞いてきます。そして、私たちの研究は、食生活や身体活動の改善が有益な可能性があるという考え方に重要な貢献をしています」。

ピーナッツまたはピーナッツバターを摂取した患者では、がんの再発および死亡について減少が認められなかった。著者らによれば、ピーナッツは豆類でナッツ類とは異なる代謝成分を有していることが、その原因であると思われる。ピーナッツは米国で最も広く摂取されているナッツである。

ステージ3の大腸がん患者では、通常、外科手術と化学療法の両方またはいずれかの治療後3年間生存する可能性が最大70%である。これまで、がん予防策の一つとして食生活を調べた研究は数多くあったが、著者らによれば、本研究は、大腸がんに関してナッツ摂取の役割、ナッツ摂取が再発率や死亡率に及ぼす影響を初めて調べたものである。

試験について

研究者らは、ステージ3の大腸がん患者を対象とした1999年開始のCALGB臨床試験の質問票を分析した。質問票は、化学療法終了後に渡され、患者がナッツを摂取したかどうか、どのような種類のナッツを摂取したかなど食事の摂取について問う内容であった。

研究者らは特にナッツ摂取に関心があった。というのも、ナッツ摂取が肥満、2型糖尿病、インスリン抵抗性(こうした健康状態はエネルギー過剰の状態を表し、それぞれで大腸がんの再発および死亡のリスクが高いことが明らかになっている)の発生率低下と関連していたからである。

主要な所見

著者らは、全ナッツ摂取量と、ナッツ類のみの摂取量、がんの再発と死亡のリスクとの間の関連性を分析した。がん治療後に1週間に2オンス以上の全種類のナッツを摂取した患者(本研究の全患者の19%)は、ナッツを摂取しなかった患者よりも、がん再発の可能性が42%、死亡率が57%低かった。ナッツ摂取の有益性は、患者の年齢、体格指数、性別、および腫瘍の一般的なゲノム変異など、がんの再発に影響を与える可能性のある既知の因子とは関係なく一貫して認められた。

ナッツ類のみの摂取量に注目すると、週に少なくとも2オンスを摂取した患者は、摂取しなかった患者よりも、再発の可能性が46%、死亡率が53%低かった。ピーナッツやピーナッツバターを摂取した患者でがんの再発や死亡が有意に減少していなかったことから、本研究では、有益性があるのはナッツ類に限定されると結論付けている。ピーナッツとの関連がないと判断するためには、さらなる研究が必要である。

「研究著者らは、劇的に生存率を向上させてきた大腸がんの標準的な化学療法やその他の治療法の代替としてナッツ摂取を推奨しているわけではないことが強調されるべきです」と、Hayes医師は述べた。「大腸がん患者はむしろ楽観的であるべきで、ナッツ類を含む健康的な食事を摂取する必要があります。健康的な食事は、健康を増進するだけでなく、がんの再発をさらに減少させる可能性があります」。

次の段階

「ナッツ摂取が大腸がんの他のステージ、特にステージ4での生存に及ぼす可能性のあるプラスの影響について検討する必要があります。最終的には、ナッツがどのようにしてこの保護効果をもたらすのかを理解し、可能であれば試験開始時に食事指導を行うランダム化比較臨床試験を実施することで、ナッツ類が大腸がん治療後の再発と死亡を減少させることを証明する必要があります」と、Fadelu医師は述べた。

本試験は、米国国立がん研究所、米国国立衛生研究所およびファイザー社による資金提供を受けた。

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翻訳担当者 会津麻美

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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