腫瘍増大後の頭頸部がんへも免疫チェックポイント阻害剤が有効

ダナファーバーがん研究所および他の施設の研究者による新たな研究では、頭頸部がんの患者の一部は腫瘍が増大する徴候が認められた後も、免疫療法薬による治療の継続で利益が得られる可能性が示唆された。

研究者らは、2017年4月3日月曜日、午前10時30分からワシントンDCで開催される米国がん学会(AACR)年次総会のSection 33において、午後1時から午後5時の間ポスターセッションで研究結果を報告する。

第3相臨床試験CheckMate 141において、免疫チェックポイント阻害剤の継続使用は、初期治療で頭頸部腫瘍が増大した患者の生存期間を延長できることが初めて示された。

この試験には、免疫システムのT細胞による腫瘍細胞への攻撃を抑制する分子をブロックするFDA承認薬ニボルマブでの治療後に、がんが進行した頭頸部の再発あるいは転移性扁平上皮がん患者139人が参加した。

体調が良好でその後の治療にも十分耐えられる患者には、ニボルマブを継続して投与した。そうでない患者にはそれ以上ニボルマブの投与を行わなかった。

ニボルマブの投与を継続した患者57人の生存期間中央値が12.7カ月であったのに対して、ニボルマブの投与を継続しなかった患者82人の生存期間中央値は6.1カ月であった。

ニボルマブの投与を継続した患者のほぼ4分の1は腫瘍が縮小し、そのうち2人は腫瘍が30%以上縮小していた。

治療による有害な副作用は両群で同様であったが、腫瘍増大後にニボルマブを継続投与した患者は、皮膚や皮下組織に障害をきたした割合が高かった。

研究の結果、ニボルマブは他の免疫療法薬と同様、「腫瘍縮小の奏効率は必ずしも高いとは言えないものの、生存率の向上をしばしばもたらします」と、ダナファーバー頭頸部腫瘍治療プログラムのリーダーで筆頭著者のRobert Haddad医師は述べた。

「われわれの研究において、体調が十分に良好な頭頸部がん患者は、腫瘍増大後にニボルマブ療法を継続することで、しばしば生存期間を延長できることが示されました。

このような患者は、これらの薬物を早期にあきらめるのは間違いであり、治療を継続することが有益かどうかを見極める臨床的判断が重要になってきます」と述べた。

この研究の上級著者は、Royal Marsden NHS Foundation Trust(英国ロンドンのがん研究所)のKevin Harrington氏である。

共著者は、ピッツバーグ大学医療センターがんセンターのRobert L. Ferris医学博士、 MDアンダーソンがんセンターのGeorge Blumenschein Jr医師、フランス、リヨンにあるCentre Leon BerardのJerome Fayette氏、フランス、ニースにあるFHU OncoageのAntoine LacassagneセンターのJoel Guigay氏、スタンフォード大学のAlexander D. Colevas医師、イタリア、ミラノのFondazione IRCCS Istituto Nazionale dei Tumori Milanおよびミラノ大学のLisa Licitra医師、ドイツ、エッセン大学病院のWest German Cancer CenterのStefan Kasper氏、シカゴ大学医療センターのEverett E. Vokes医師、ミシガン大学のFrancis Worden医師、エモリー大学のWinship Cancer InstituteのNabil F. Saba医師、日本の東京にある国立がん研究センターのMakoto Tahara氏、 Bristol-Myers SquibbのManish Monga医師、Mark Lynch氏、Jin Zhu氏、James W. Shaw氏(それぞれ医学博士、薬学士、公衆衛生学士)、そしてオハイオ州立大学のMaura L. Gillison医学博士である。

この研究(コントロール番号17-LB-7877-AACR)は、進行中の第3相試験および第2相/第3相試験のポスターセッションで発表する予定である。

翻訳担当者 江澤逸子

監修 大野 智(補完代替医療/大阪大学・帝京大学)

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