転移腎細胞がんにアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法は有効

未治療の転移性腎臓がんにatezolizumab[アテゾリズマブ]とベバシズマブが、有効性および管理可能な安全性プロファイルが示される

2017年2月18日、Roche社はIMmotion150試験に関する有望な結果を発表した。第2相試験であるIMmotion150試験は未治療の局所進行または転移性の腎細胞がん(mRCC)患者を対象とし、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用投与、アテゾリズマブ単独投与、およびスニチニブ単独投与を比較した。これらの結果は2017年泌尿生殖器がんシンポジウム(2月16~18日、オーランド、米国)で発表された。IMmotion150試験は、mRCCに対し、アテゾリズマブ+ベバシズマブの併用投与を評価した最初のランダム化比較試験である。本試験は、この併用療法に関する今後の臨床開発についての情報提供のためにデザインされており、本試験結果は、未治療の局所進行または転移性腎細胞がんに対するこの併用療法の可能性を高めるものである。

血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を標的とすることでmRCC患者の転帰は改善するが、ほぼ必ず、多くの場合、治療開始後1年以内に耐性が生じることを著者らは研究背景で説明した。

IMmotion150試験は、未治療の局所進行/転移性RCC患者305人を対象とした国際多施設共同非盲検ランダム化第2相試験であり、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用投与(A群)、アテゾリズマブ単独投与(B群)、およびスニチニブ単独投与(C群)の有効性と安全性を評価するためにデザインされた。A群の患者には6週間サイクルで3週間ごとにアテゾリズマブ1,200mg+ベバシズマブ15mgの静脈内投与を疾患増悪あるいは臨床的有用性がないことを確認するまで続けた。B群の患者にはアテゾリズマブを単独で(疾患増悪あるいは臨床的有用性がないことを確認するまで)投与し、C群の患者にはスニチニブ50mgの連日経口投与を4週間行った後に2週間の休薬期間を設け、この6週間のサイクルを疾患増悪まで続けた。

複合主要評価項目は、ランダム化した患者全員(ITT集団)およびPD-L1発現陽性(IC1/2/3)を確認した患者集団における無増悪生存(PFS)とした。PFSは、独立評価機関により固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン改訂版1.1(RECIST v.1.1)の規定に基づき評価したものとした。腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上のPD-L1の発現は、Roche Tissue Diagnostics社が開発中のSP142抗体を用いた免疫組織化学法(IHC)検査を用いて評価した。副次的評価項目には、独立評価機関が評価した全奏効率(ORR)および奏効期間(DoR)、試験担当医師の評価によるPFS、ORR、DoR、および安全性、ならびに全生存期間(OS)を含めた。

本試験において、PD-L1発現陽性集団では、アテゾリズマブ+ベバシズマブの併用投与を受けた患者は、スニチニブ単独投与を受けている患者と比較した場合、疾患増悪あるいは死亡のリスクが36%低下したことが明らかになった(PFSの中央値、14.7カ月 対 7.8カ月;HR= 0.64; 95% CI 0.38, 1.08)。ITT集団では、スニチニブ単独投与と比較した場合、アテゾリズマブ+ベバシズマブの併用投与にPFS上の有益性は認められなかった(PFSの中央値、11.7カ月 対 8.4カ月; HR = 1.00; 95% CI 0.69, 1.45)。20.7カ月の追跡調査後も、全治療群でDoRの中央値に到達していなかった。

IMmotion 150試験ではクロスオーバーを予定していた。スニチニブ投与を受けた患者(C群)の3/4以上(78%)で増悪が認められ、その患者にアテゾリズマブ+ベバシズマブの併用投与(A群)を行った。

解析時に死亡例は35%しか発生しておらず、OSの結果はまだ得られなかった。

アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用投与群で認められた有害事象は、アテゾリズマブとベバシズマブそれぞれに関する先行研究で認められたものと一致していた。新たな安全性シグナルは同定されなかった。あらゆるグレードの治療に関連した有害事象の発生率は群間でほぼ同じであった。もっとも高頻度にみられ、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用投与群患者の20%超で発生し、スニチニブ投与群と比較して発生率が5%以上高かった有害事象は、関節痛(38%)、蛋白尿(36%)、鼻出血(28%)、およびそう痒(かゆみ)(22%)などであった。治療との関連性を考慮しなかった場合のグレード3/4の有害事象の発生頻度は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用投与群(63%)とスニチニブ投与群(69%)の患者間でほぼ同じであった。治療に関連したグレード3/4の有害事象は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用投与群の40%、スニチニブ投与群の57%で報告された。アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用投与群の患者1人が頭蓋内出血を発症し、それにより死亡した。アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用投与群の患者101人のうち15人(15%)が有害事象のために治療を中断した。

また、Roche社は未治療の局所進行または転移性のRCC患者を対象とした第3相試験(IMmotion151試験)においてアテゾリズマブ+ベバシズマブの併用投与とスニチニブ投与の比較評価を現在行っている。RCCに対する補助療法としてのアテゾリズマブについての試験の組み入れは2017年初めに開始した。

参考文献

McDermott DF, Atkins MB, Motzer RJ, et al.A phase II study of atezolizumab (atezo) with or without bevacizumab (bev) versus sunitinib (sun) in untreated metastatic renal cell carcinoma (mRCC) patients (pts).J Clin Oncol 35, 2017 (suppl 6S; abstract 431)

翻訳担当者 三浦 恵子

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

腎臓がんに関連する記事

腎がんを皮下注射型ニボルマブで治療、点滴より簡便になる可能性の画像

腎がんを皮下注射型ニボルマブで治療、点滴より簡便になる可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ進行した腎がんの患者にとって、皮下注射投与型ニボルマブ(販売名:オプジーボ)は、本来の静脈内投与の適切な代替方法であることが、臨床試験の初期...
進行腎がんに対する免疫療法薬+グアデシタビン新治療の可能性を示す研究の画像

進行腎がんに対する免疫療法薬+グアデシタビン新治療の可能性を示す研究

オハイオ州立大学総合がんセンター進行淡明型腎細胞がん(ccRCC)の一部の患者に対する2剤併用療法はさらなる研究に値することが、Big Ten Cancer Research Cons...
腎がん術後キイトルーダの延命効果が初めて試験で示されたの画像

腎がん術後キイトルーダの延命効果が初めて試験で示された

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「KEYNOTE-564試験の最新結果は、腎臓がんの術後療法におけるペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の有効性に焦点を当て...
体幹部定位放射線治療(SBRT)が早期腎臓がんの重要な治療法となる可能性の画像

体幹部定位放射線治療(SBRT)が早期腎臓がんの重要な治療法となる可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ一部の腎臓がん患者にとって、体幹部定位放射線治療(SBRT)と呼ばれる治療法は、手術が選択できない場合に非常に有効な治療法と考えられることが...