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卵管切除で卵巣がんリスクが減少する可能性

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卵管切除で卵巣がんリスクが減少する可能性

MDアンダーソンがんセンター月刊OncoLog誌2月号

MDアンダーソン OncoLog 2017年2月号(Volume 62 / Issue 2)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

卵管切除で卵巣がんリスクが減少する可能性

BRCA変異を有する女性の予防的手術の別アプローチで早発閉経を回避

 

卵巣がんの発生源についての新知見を受け、BRCA1またはBRCA2変異が陽性の女性に対して卵管のみを切除することにより早発閉経を予防し、生活の質を維持しつつ卵巣がんリスクを下げられるか研究が進められてきた。

 

「われわれは、遺伝性の卵巣がんの多くが卵管に端を発するらしいことをつきとめました。卵管を切除することでリスクを大きく下げられるかもしれません」。テキサス大学MDアンダーソンがんセンター婦人科腫瘍学・生殖医療部門准教授のDenise Nebgen医学博士はこのように述べた。

 

BRCA1または2の変異があり、卵巣がんリスク低減のための予防的手術を希望する女性に対し、卵管のみを切除して卵巣切除は後回しにすることで、早発閉経の弊害を回避できるかもしれないことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの医師が行った最近の臨床試験で示された。

 

完全なリスク管理法なし

 

卵巣がんの60%以上は転移するまで発見されず、転移した卵巣がん患者の5年生存率は50%未満である。一般集団女性における卵巣がんリスクは1.4%にすぎないが、BRCA1変異またはBRCA2変異を有する場合のリスクはそれぞれ46%および27%になる。

 

BRCA1または2の変異を有する女性における卵巣がんリスクを低減する方法としては、定期的なスクリーニングや、経口避妊薬、両側卵管卵巣切除術などがある。しかし、いずれも理想的な方法とは言えない。

 

BRCA1/2変異陽性の女性における経口避妊薬での卵巣がんリスク減少は50%にすぎない。経腟超音波検査とCA125(糖タンパク抗原125)の血液検査による卵巣がんスクリーニングは、初期の卵巣がんの検出感度や特異度が低い。このため、卵巣がんリスクの高いグループに属する女性に対するスクリーニングのガイドラインはものによってまちまちとなっている。

 

BRCA1/2変異陽性で40~45歳の女性に対し両側卵管卵巣切除術を行うと卵巣がんリスクが80~90%、乳がんリスクが50%低下する。しかし卵巣の切除は早発閉経の原因となり、心血管疾患や骨粗鬆症、その他生活の質を下げる症状(顔面紅潮や性機能および認知機能の障害)のリスクが高くなる。また、これらの症状を緩和する目的でこの一群の患者にホルモン補充療法を実施することについては、乳がんリスクが高くなる可能性があることから意見が分かれている。

 

代替アプローチ

 

卵巣がんの発生に関する知見はここ5年で大きく変化した。以前は、卵巣がんはもっぱら卵巣上皮細胞に由来すると考えられていたが、最近の研究で多くの卵巣がんは卵管由来であることが示されている。このことは、永久避妊のため行われることが多い両側卵管結紮術で卵巣がんリスクが50%低減するという事実によっても支持されている。また研究者らは、予防的な両側卵管卵巣切除術を実施したBRCA1/2変異陽性の女性において、卵管に漿液性上皮内がんおよび潜在する漿液性浸潤がんが発見される一方、卵巣には何も病巣が見当たらないことも指摘している。

 

卵巣がんの起源に関する学説が変わったため、BRCA1/2変異陽性の30~40歳女性に対する卵管卵巣切除術の代替法として両側卵管のみの切除術が急に注目されることとなった。卵管切除術は、何年か卵巣を残しつつ卵巣がんのリスクを下げることができる。卵巣を残すことにより生活の質を維持し、早発閉経によって引き起こされる健康上のリスクを避けられる。「ただ、卵管切除術によってどの程度卵巣がんのリスクを下げられるのかはわかりません」。Nebgen医師はこう述べている。

 

卵管切除術のデメリットとしては、卵巣がんおよび乳がんリスクをさらに下げるため、後に2回目の手術として卵巣切除術を受けなければならないということがある。米国のガイドラインに従うなら、BRCA1変異陽性患者には40歳時点、BRCA2変異陽性患者には45歳時点で卵巣切除術を実施する。

 

「BRCA陽性の女性の方々には、卵管切除術は暫定的な措置であると説明しています」とNebgen医師は言う。「最終的には、彼女たちは卵巣がんだけでなく乳がんのリスクも下げたいということで卵巣の切除も希望されます。卵管を先に切除して、卵巣を後に回すのは、この時期における早発閉経のリスクを下げるための一時しのぎなのです」。

 

2014年から、Nebgen医師を臨床試験責任医師として、BRCA1/2変異陽性の女性に対して卵管切除術の選択肢も提供する初めての臨床試験(No.2013-0340)を米国で開始し、これらの女性がこの選択肢に興味を持つかを調べている。試験には44人が参加した。参加者に介入方法を選択させたところ、20人が卵管切除術、12人が6カ月ごとのスクリーニング検査、12人が卵管卵巣切除術を選択した。試験は2016年に患者登録を終了したが、卵管切除術の長期的な効果や、卵管切除術を選択した患者が後に卵巣を切除するかどうかを確認するにはまだ長い年月を要する。今のところ、卵巣切除も実施した患者は1人である。

 

初めての試験の成功を受け、婦人科腫瘍学・生殖医療部長で教授のKaren Lu医師らは臨床第2相試験としてWomen Choosing Surgical Prevention(WISP)試験(No. 2015-0814)を計画した。「Nebgen医師のコンセプト実証(POC)試験から、がんリスクを下げ閉経を避けるための卵管切除術に関心があるということが明らかになりました」とLu医師。「そこで、卵管切除術の安全性と有効性に関するデータを収集する大規模試験に向けての前段階研究を実施する用意ができました」。

 

WISP試験は2016年5月に米国の6施設で開始され、BRCA1変異、BRCA2変異、その他卵巣がんリスクを増加させる関連遺伝子が陽性の女性270人を登録する予定。現在のところ13人が参加している。参加者は卵管卵巣切除術を実施するか、卵管切除術を実施してのちの時期に卵巣切除術を実施するかのいずれかを選択する。

 

WISP試験の主要な目的は、性機能や生活の質について両群で比較することである。このほか、両群における卵巣がん発生率の比較や、卵管切除術を受ける患者がのちに卵巣切除術を受けるかどうかの確認なども試験の目的となっている。Nebgen医師は、WISP試験において、卵管切除術が卵管結紮術と同様に卵巣がんリスクを少なくとも50%は減少させるものと確信している。

 

高リスク患者への推奨事項

 

Nebgen医師は、近親者(姉妹、母、おば、祖母など)に若年期の乳がんまたは卵巣がんの家族歴を有する女性に対し、遺伝子カウンセリングおよびスクリーニングに参加するよう強く推奨している。また、BRCA1/2変異またはリンチ症候群と確認された女性に対しては、高リスク患者のスクリーニング経験がある医療機関においてがんのスクリーニングを受け、予防的外科手術を検討するようアドバイスしている。

 

「女性とその主治医は、卵巣がんを予防する方法がいくつかあることを知っておくべきですが、それらをいつ行うかが重要なのです」。Nebgen医師はこのように話す。「卵巣がんリスクを減少させる卵管卵巣切除術の実施が早すぎる例もあり、他の健康問題の原因となっています。卵管切除術は閉経を遅らせる一方で卵巣がんリスクを減らすことができます」。Nebgen医師はまた、卵管切除術の実施を選択した患者にはがんスクリーニングの継続と最終的な卵巣切除を指導すべきと述べている。

 

For more information, call Dr. Karen Lu at 713-745-8902 or Dr. Denise Nebgen at 713-792-8507. To learn more about the WISP trial, visit www.clinicaltrials.org.

 

【上段写真キャプション】

卵管切除術中、卵管は鉗子(矢印)でで把持されつつ、超音波メス(harmonic scalpel)が下部の卵巣から卵管を切り離し、切除断端組織を焼灼する。この手術は卵巣を残しつつがんのリスクを下げることができ、早発閉経を避けることができる。画像はDenise Nebgen医師の厚意による。

 

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳橋本 仁

監修喜多川 亮(産婦人科/東北医科薬科大学病院)

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