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遺伝子検査が骨髄異形成症候群への移植の指針となる

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遺伝子検査が骨髄異形成症候群への移植の指針となる

ダナファーバーがん研究所

骨髄異形成症候群(MDS)患者への造血幹細胞移植において、1回の血液検査と医学的状態の基本情報があれば、効果が期待できる患者、および化学療法や放射線治療による最適な移植前処置の強度を判別できることが、ダナ・ファーバーがん研究所とブリガム・アンド・ウィメンズ病院の新たな研究で明らかになった。

 

New England Journal of Medicine誌に発表された本研究によると、血液の遺伝子プロファイルに年齢などの因子を考慮に加えることで、その患者に対する造血幹細胞移植の効果が予測でき、医師が効果的な移植前処置の組合せを選択する際の助けとなり得ることが報告された。この結果は、造血細胞移植センターと共同で行われた、6カ月から70歳過ぎまでのさまざまな年齢のMDS 患者1,514人から得られた血液試料の分析に基づく。

 

MDSは骨髄で健康な血液細胞が十分に産生されない疾患群である。治療法は MDSの個別の疾患種に応じて異なり、標準治療で死亡リスクが高い患者には一般的に同種ドナーからの幹細胞移植が用いられる。

 

「MDSでは同種幹細胞移植が唯一の根治療法ですが、移植後に死亡する患者も多く、その原因は主に疾患の再発または移植自体の合併症です。」本研究の筆頭著者であるダナ・ファーバーのR. Coleman Lindsley医学博士は述べる。「医師として取り組むべき重要な課題は、移植の効果が最も期待できる患者を予測することです。再発を起こしやすい患者や移植により生命を脅かす合併症が発現しやすい患者を特定する力が向上すれば、より効果的な移植前処置や再発防止策を講じることができます」。

 

MDS患者の血液細胞に認められるある種の遺伝子変異が疾患の経過と密接に関連していることが以前からわかっていた。本研究では、同種幹細胞移植後の転帰予測にも変異の有無が有用であるかどうか検討された。

 

データ解析により、MDSにおける最も重要な特性は、血液細胞のTP53遺伝子変異の有無であることが示された。遺伝子変異を有する患者は、変異のない患者と比較して移植後の生存期間が短く再発も早い。この結果は患者が移植前に標準的な「移植前」前処置(化学療法や放射線治療)を受けたか、または強度を落とした前処置を受けたかにかかわらず同様であった。この結果に基づき、ダナ・ファーバーの医師らは現在、 MDSにおけるTP53変異がもたらす難問を克服するための新しい治療戦略に取り組んでいる。

 

40歳以上で TP53変異がないMDS患者では、RAS経路の遺伝子やJAK2遺伝子に変異がある場合に、変異がない場合と比較して生存期間が短い傾向にある。TP53変異とは対照的に、RAS遺伝子変異を有すると生存および再発リスクが高いというエビデンスは、強度を落とした前処置を受けた場合に限られている。この結果より、RAS遺伝子変異のある患者では高用量の前処置で効果が得られる可能性が示唆されると研究者らは述べている。

 

本研究では、特定の患者群におけるMDSの生物学に関する重要な見識も得られた。驚くことに、18~40歳のMDS 患者25人中1人はシュワッハマン・ダイアモンド症候群(まれな遺伝疾患で、骨髄、膵臓、骨格系に障害が及ぶことが多い)に関連する変異を有するが、そのほとんどはシュワッハマン・ダイアモンド症候群と診断されたことがないことが判明した。各症例では血液細胞がTP53変異を獲得しており、シュワッハマン・ダイアモンド症候群患者におけるMDS発症の機序のみならず、移植後の予後不良の原因も示唆された。

 

先のがん治療が原因でMDSを発症した患者(治療関連MDS)についても解析された。治療関連MDS患者では、TP53の変異およびTP53機能を制御する遺伝子であるPPM1Dの変異が、がん治療歴がなくMDSを発症した患者と比較してはるかに多いことが判明した。

 

「MDS患者に造血幹細胞移植の適否を判断する際には、常に効果と合併症のリスクを比較する必要があります。」と、Lindsley医師は述べる。「我々の研究結果は、疾患の遺伝子プロファイルと特定の臨床因子に基づき、移植に適した患者および移植前処置の最適な強度を特定する際の指針となるでしょう」。

 

本研究の上席著者はブリガム・アンド・ウィメン病院(BWH)Benjamin Ebert医学博士であり、共同著者は以下のとおり。Brenton Mar, MD, PhD, Robert Redd, MS, Corey Cutler, MD, MPH, Joseph Antin, MD, and Donna Neuberg, ScD, of Dana-Farber and BWH; Wael Saber, MD, MS, Zhenhuan Hu, MPH, and Tao Wang, PhD, of the Center for International Blood and Marrow Transplant Research (CIBMTR) at the Medical College of Wisconsin; Michael Haagenson, MS, and Stephen Spellman, MBS, of CIBMTR, National Marrow Donor Program/Be The Match®, Minneapolis, Minn.; Peter Grauman, of BWH; Stephanie Lee, MD, of Fred Hutchinson Cancer Research Center; Michael Verneris, MD, of the University of Minnesota; Katharine Hsu, MD, PhD, of Memorial Sloan-Kettering Cancer Center; and Katharina Fleischhauer, MD, of University Hospital Essen, Essen, Germany

 

本研究は Edward P. Evans基金、Harvard Catalyst KL2–CMeRIT賞、米国骨髄ドナープログラム免疫生物学研究基金、米国国立衛生研究所( R01HL082945、R24DK099808および5P30 CA006516)、並びに白血病・リンパ腫学会の助成を受けた。

原文掲載日

翻訳石岡優子

監修林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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