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がん診断支援システムIBM Watson for Oncologyが医師の推奨と高い一致度を示す

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がん診断支援システムIBM Watson for Oncologyが医師の推奨と高い一致度を示す

米国がん学会(AACR) サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)2016

人工知能診断支援システムWatson for Oncology*(「ワトソン・フォー・オンコロジー」、WFO)が、二重盲検安全性確認試験において、腫瘍医らによる委員会の推奨と高い一致度を示したとの結果が、12月6~10日に開催された2016年サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

 

Watson for Oncologyは、スローンケタリング記念がんセンター協力のもとIBMによって開発されたコンピューターシステムで、がんの治療選択肢を提供するため、自然言語処理および機械学習によって医療記録から膨大な構造化および非構造化データを抽出し、評価することができる。

 

本試験の筆頭著者で、インドのバンガロールにあるManipal総合がんセンター、Manipal病院理事長の、S.P. Somashekhar氏(MBBS、MS、MCH、FRCS)の話によると、Watson for Oncologyは、乳がん、肺がんおよび大腸がんに対して推奨される治療法を提供する。

 

「Manipal病院では先日、腫瘍医が患者に対して質の高い、科学的根拠に基づいた決定を行うことを支援するツールとして、Watson for Oncologyを導入しました」とSomashekhar氏は述べた。「腫瘍医による日常診療にどのように影響を与えるのかを明らかにし、Watsonの推奨する治療選択肢がわれわれの専門家チームの決定とどのように比較されるのかを評価することが目的です」。

 

Somashekhar氏らは、Watson for Oncologyと、Manipal病院の集学的腫瘍委員会(12~15人の腫瘍医で構成され、Manipal病院での症例を審査するため週1回開催)との一致度について評価するため、Manipal病院で治療を受けた乳がん患者638人の症例について調査した。本症例に関するデータをWatson for Oncologyシステムに入力し、Watson for Oncologyの推奨と腫瘍委員会の推奨との一致度、および推奨が得られるまでにかかった両者の時間を解析した。

 

Watson for Oncologyの推奨は、推奨される標準治療(REC)、検討(FC)、推奨されない(NREC)、の3つのカテゴリーに分類された。全体として、Watson for Oncologyの推奨のうち、標準治療(REC)または検討(FC)の90%が腫瘍委員会の推奨と一致した。

 

一致度は、乳がんのタイプによって異なった。Somashekhar氏の話によると、Watson for Oncologyの推奨は、非転移がんではほぼ80%が一致したが、転移がんでは45%しか一致しなかった。トリプルネガティブ乳がんでは、Watson for Oncologyの推奨は医師の推奨と68%一致したが、HER2/neu陰性乳がんではWFOと医師の推奨は35%しか一致しなかった。

 

Somashekhar氏は、トリプルネガティブ乳がんはHER2/neu陰性乳がんよりも治療の選択肢が少ない、ということを考慮すると、一致度に差が生じるのは決して不思議なことではない、と述べた。

 

「HER2/neu陰性乳がんを含めることで、多くの治療法を切り開いたり、検討が必要な不一致を引き起こしたりするのです」と同氏は説明した。「そのため、人間の思考能力の必要性が高まります。より複雑な症例では、推奨治療についてより多くの意見の不一致を招くのです」。

 

本試験では、推奨を得るためのデータの収集や解析に要した時間も比較した。Somashekhar氏の話によると、人間が行った場合平均20分かかったが、症例について熟知した後では平均時間が約12分に短縮した。これに対し、Watson for Oncologyではデータを収集、解析し、推奨する治療を提供するのに中央値で40秒かかった。

 

人工知能は医師の業務を補完する

 

Somashekhar氏は、人工知能は個別化医療に向けた一歩ではあるが、医師の代わりにはならず、補完的なものでしかない、と注意を促した。

 

「患者の多岐にわたる非常に個人的な要素によって、できることとすべきことには常に重大な違いが存在しています」と同氏は述べた。「われわれは、人間と向き合っており、患者一人一人の背景や好み、患者と医師との関係、人間性や人情が非常に重要なのです」。

 

「患者にとって、何が本当に最良の選択肢であるのかを判断するため、治療を行う腫瘍医や患者の決定が常に行われているのです」と同氏は締めくくった。

 

本試験は研究目的であり、外部からの資金助成を受けなかった。Somashekhar氏には申告すべき利益相反はない。また、科学技術協力者のチーム、Manipal病院総合がんセンターの腫瘍研究員、IBM Watson Health社に謝意を表している。

*参考:IBM Watson for Oncology HP

原文掲載日

翻訳生田 亜以子

監修石井一夫 (ゲノム科学/東京農工大学)

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