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ベネトクラックスが急性骨髄性白血病に効果

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ベネトクラックスが急性骨髄性白血病に効果

米国がん学会(AACR)

再発または化学療法に耐性がある急性骨髄性白血病(AML)患者、もしくは化学療法に対する忍容性がないと考えられるAML患者において、選択的BCL-2阻害剤venetoclax[ベネトクラックス](商品名:Venclexta)で奏効が得られ、一部では完全寛解が認められたことが、米国がん学会(AACR)の学術誌Cancer Discovery誌に掲載された第2相臨床試験のデータによって示された。

 

「ここ数十年間、アポトーシス(細胞死)に関する研究が行われてきました。以前からこの分野の目的は、実際にがん患者の治療を改善していくことです。AMLは新たな治療法が切実に求められているがんですが、過去に発表された前臨床段階の研究によると、このタイプのがんはBCL-2阻害剤ベネトクラックスの優れた標的となりそうなことがわかりました」と、マサチューセッツ州ボストンにある、ハーバード大学医学部ダナファーバーがん研究所准教授の、Anthony Letai医学博士は述べた。

 

Letai氏によると、ベネトクラックスはBH3模倣剤に分類される小分子で、多くの血液がんに関与する抗アポトーシス性タンパク質BCL-2に強力な親和性をもって選択的に結合する。BCL-2タンパク質は、アポトーシス促進性タンパク質と結合することによりAML細胞を生かし続ける。ベネトクラックスはBCL-2に結合してアポトーシス促進性タンパク質を解放し、その結果、急速かつ不可逆的にAML細胞のアポトーシスを促す、とLetai氏は説明した。

 

2016年4月、米国食品医薬品局(FDA)は、慢性リンパ性白血病(CLL)を有する特定の患者群の治療に対してベネトクラックスを承認した。

 

「今回の臨床試験では、強化化学療法に抵抗を示した治療歴があるAML患者に対しても選択的BCL-2抑制に優れた感受性を示し、完全寛解もみられるほどでした。これはベネトクラックス1日1回の経口投与ですみ、AMLにおけるBCL-2阻害の潜在的な臨床活性を証明しました」と、Letai氏は述べた。

 

試験責任医師らはAMLを有する患者32人(年齢中央値71歳)を多施設共同単群試験に登録し、ベネトクラックスの1日800mg経口投与について評価した。26人が4週間以上治療を受けた。

 

全奏効率は19%、完全寛解(CR)が2人、血液の回復を伴わない完全寛解(CRi)が4人であった。奏効した患者において治療期間中央値は144.5日であった。CR期間の中央値は48日であった。全患者が、疾患進行、有害事象、また他の理由により治療を中止した。

 

試験責任医師らは、試験登録時に採取した患者の検体を用いて細胞遺伝学的解析、BH3プロファイリング、および次世代シーケンシングを行い、AMLに関連する遺伝子変異について調査を行った。その結果、12人にIDH遺伝子の変異がみられ、6人はBCL-2感受性タンパク質指標が高値であった。

 

CRiの4人にはがん細胞にIDH変異がみられた。ベネトクラックスに対する効果は、BCL-2タンパク質発現の指標やBH3プロファイリングなどのバイオマーカーの結果と相関性があったとLetai氏は述べた。「これはBCL-2標的阻害剤としてのベネトクラックスの作用機序をサポートするという点で重要です。さらに、BH3模倣剤を臨床で使用するための予測バイオマーカーとして、BH3プロファイリングが有用である可能性を示しました」と同氏は付け加えた。

 

有害事象は悪心、下痢、嘔吐、発熱性好中球減少症、低カリウム血症などで、予測されたとおりであった。

 

ヒューストンにある、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病科および幹細胞移植科教授であり、本研究の筆頭著者であるMarina Konopleva医学博士はこう述べた。「ベネトクラックスは近い将来、高齢AML患者に対してDNAメチル化阻害剤や、他のアプローチと併用することで標準治療の化学療法に匹敵する治療法になるでしょう。今後の試験では、ベネトクラックスは大量化学療法との併用で若年AML患者の転帰も同様に改善する可能性がある、という仮定を検証していく予定です」。

 

Letai氏は「また、このゲノミクスが多数派を占める高精度医療(precision medicine:プレシジョン・メディシン)の時代の中、(タンパク機能に基づいた)機能高精度医療(functional precision medicine)の重要性の例を示したことも注目に値します。CLLやAMLではBCL-2に関連する遺伝子異常がみられません。その代わり、機能研究によって、BCL-2阻害に対して脆弱であることがわかりました。これは、機能研究は、いかなる高精度医療プロジェクトにも組み込まれる必要があることを裏づけています」と述べた。

 

今回の研究の限界としては、患者の多くが臨床的奏効の基準を満たさず、奏効した患者でも、奏効状態は期待ほど長く続かなかったことである、とLetai氏は述べた。さらに、効果予測因子としてのバイオマーカーの評価を後ろ向きに行ったが、今後の研究では、臨床データを盲検化してバイオマーカー研究を行う必要がある、と同氏は付け加えた。

 

「数年前、Marinaと私はそれぞれAMLがBCL-2阻害の優れた標的となることを裏づける証拠を確認しましたが、2人とも同じ考えに基づいて研究していると知った時、競争するのではなく協力することを意図して決定しました」と、Letai氏は述べた。「共同研究をすることで、進展もより早くなり、AMLにおけるベネトクラックスの試験を開始するようにAbbVie社を説得するための材料も、より多く得ることができるでしょう」。

 

本試験は、Genentech社/Roche社と共同でAbbVie社から資金提供を受けた。Letai氏はAbbVie社、AstraZeneca社、Tetralogic社、およびX-Rx社の顧問であり、同氏の研究室はこれらの企業から研究資金提供を受けた。Konopleva氏は、AbbVie社、Genentech社、Stemline社、Eli Lilly and Company社、Bristol-Myers Squibb社、Calithera社、およびCellectis社の相談役であり、同氏はこれらの企業から研究の資金提供をうけた。同氏はまた、Reata Pharmaceuticals社の株主である。

原文掲載日

翻訳平沢沙枝

監修北尾章人(血液・腫瘍内科/神戸大学大学院医学研究科)

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