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2011/03/08号◆各界のトピック「ルーチンCT検査時の放射線被ばくを大幅に低減」

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2011/03/08号◆各界のトピック「ルーチンCT検査時の放射線被ばくを大幅に低減」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年3月8日号(Volume 8 / Number 5)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜 PDFはこちらからpicture_as_pdf
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各界のトピック ルーチンCT検査時の放射線被ばくを大幅に低減

1980年代以降、米国では医用画像による年間1人当たりの平均被ばく量が6倍近くにまで増大した。 この被ばくによる健康リスクに関しては,まだ議論が決着していないが、医師や研究者らは、現代の医用画像がもたらす多大な利益を維持しつつ被ばくを低減することを希望している。

2月24、25両日、米国国立生物医学画像・生物工学研究所(NIBIB)、Eunice Kennedy Shriver米国国立小児保健・人間発達研究所、米国国立心肺血液研究所、米国国立衛生研究所、および画像・生物工学研究所連合は、被ばく量低減を推進するための会議「CT被ばく線量管理サミット—1mSv以下の検査をめざして」を主催した。 (ミリシーベルト、略してmSvは、電離放射線の被ばくによる全身健康リスクを概算するために科学者が用いる単位である)。

放射線を用いる医用画像の中でも、コンピューター断層撮影(CT)装置の使用は、過去数十年間にとりわけ増加している。 目標は、CT検査総件数の95%につき、平均被ばく線量を現在の7mSvから1mSv以下に削減することである、と米国放射線医学会長Dr. James Thrall氏は述べる。

「これまでは、少しずつ、徐々に線量低減を達成することに焦点を合わせて尽力してきました」とFDAの医療機器・放射線保健センター所長であるDr. Jeffrey Shuren氏は語った。「(当)サミットは根本的に違います。つまり,CT撮影による被ばくを1mSv以下に低減するという大胆な目標を設定し、これまでのように,たった数パーセントポイントというのではなく、大きな単位で被ばく線量を減らすことを目指しています」。 「CT撮影のあらゆる側面に対するアプローチを大きく変革することによってしか、この目標を達成することはできないと確信しています」とShuren氏は続けた。

すでに診断医学の2領域で1mSv以下のCT検査の実現可能性が示されている。 発表者らはサミットで、心CTおよび小児CTから学んだ教訓について報告した。 例えば、いくつかの病院で心CTを施行する放射線科医らは、CT撮影時間を短くし、1回の検査に必要なX線管電流を低減、さらに放射線を必要としない他の付随的診断法を活用することによって、平均被ばく線量を1mSv以下に減らした。 (記事内の画像を参照) 小児科では、世界的なImage Gently(やさしく画像撮影)キャンペーンを通じて、小児の比較的小さな身体の画像は格段に少ない被ばく線量で正確に撮影できる、という意識向上に成功した。「ぴったりサイズの適正線量」というテーマがこのサミットを貫いていた。

「患者は誰もが標準(サイズ)というわけではありません」とメイヨー・クリニックのDr. Cynthia McCollough氏は述べる。 CT被ばく線量低減プログラムはいずれも、新生児から病理的肥満の成人にいたるまで、さまざまな体格の患者に対して被ばく線量を考慮する必要がある、と同氏は説明する。 ミシガン大学医学部のDr. Leslie Quint氏によれば、放射線科の医師と技師は、主治医が要求する部位に限局した検査を行えば、すぐに被ばく線量を低減できるという。

Quint氏らが検討したいくつかの胸部画像検査の研究により、CT検査による全被ばく線量の21〜57%が、検査の最初と最後の余分な部位の画像撮影によるものであることがわかった。 さらに、同氏らが自施設での全身CT検査を見直したところ、不必要な部位の画像撮影のために被ばく線量が平均で10%過剰となっていることがわかった。 検査時の過剰線量の理由の一端は、装置を操作する人々への適切な訓練が不十分で、個々の患者ごとにCT装置に入力されている撮影条件の科学的根拠を理解していないことにあるかもしれないと、複数のサミット参加者が指摘した。

いかなる検査であれ、放射線技師がリアル・タイムで下す選択は最終的な被ばく線量を左右するため、訓練の改善は肝要であるとサミット参加者らは合意した。 サミット参加者はまた、CT装置のハードウェア、ソフトウェア両面で、被ばく線量低減の新たなハイテク技術の必要性について議論した。例えば、X線源や照射野を形成する装置(コリメーター)など、現代のCT装置のハードウェア部分には、被ばく線量を低減する余地が大いにあると、ドイツErlangen-Nuremberg市のFriedrich-Alexander大学医学物理学研究所のDr. Willi Kalender氏は述べる。

また、検査過程のあらゆる段階でのコンピューターによる判断支援システムの開発も、例えば医師が重複検査を指示することを防ぎ、装置上で最適のプロトコル選択を保証することによって、線量低減に役立つ。 さらに、患者に照射する前に新たなプロトコル候補のあらゆる面を評価するために、放射線医が高度なシミュレーターを用いてノイズやコントラストを試すこともできる。 装置によって収集されたデータから画像を作る方法(画像再構成)の革新によって、画像検査の品質を維持したうえで、さらなる被ばく線量の低減が可能となるであろう。

また、この分野ではCT使用に関するエビデンスに基づく臨床ガイドラインが大いに有益であろうが、今はまだ存在しないと、スローン・ケタリング記念がんセンターのDr. Hedvig Hricak氏は述べた。

サミット2日目は、NIHを含め、将来この領域の研究資金を支給する可能性がある諸機関が優先順位を定めることによって締めくくられた。 サミット中に招集された3つの作業部会の提言が、出版準備中である。 これらの提言は「この豊富な情報をいかに膨らませ、いかに活用し、いかに保健医療企業体や国家の実用的利益と改善につなげるか」に焦点を合わせている、とNIBIB所長のDr. Roderic Pettigrew氏は結論付けた。

— Sharon Reynolds

当サミットの記録ビデオはオンラインで閲覧可能。

【右上画像下キャプション訳】わずか0.7mSvの被ばく線量を用いたカラー表示の心CT画像。 この画像は、診断目的に用いるのに十分な品質である。 (画像提供:米国国立心肺血液研究所Dr. Marcus Chen氏とDr. Andrew Arai氏)

【左下画像キャプション訳】血流塞栓を探すために撮影された冠動脈のCT画像。 この画像撮影にはわずか0.7mSvの被ばく線量が用いられた。 (画像提供:米国国立心肺血液研究所Dr. Marcus Chen氏とDr. Andrew Arai氏) [画像原文参照]

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盛井 有美子 訳
中村 光宏(医学放射線/京都大学大学院) 監修
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