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大腸がん原発腫瘍の位置は生存期間と関連

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大腸がん原発腫瘍の位置は生存期間と関連

原文掲載日:2016年5月27日

新たな研究によると、転移性大腸がんでは、結腸内の原発腫瘍位置が患者の予後に強く影響するとみられる。

 

結腸の左側(遠位結腸)に原発腫瘍のある患者では、結腸の右側(近位結腸)に原発腫瘍のある患者と比べて、初回治療後の生存期間が1年以上長いことが、NCI資金提供の大規模第3相臨床試験データのレトロスペクティブ(後ろ向き)解析によって明らかになった。

 

本研究はまた、腫瘍の位置と、大腸がん患者の治療に用いる特定の分子標的療法から利益が得られる可能性とを関連づけた。本研究により、左側に原発腫瘍のある患者はセツキシマブ(商品名:アービタックス)による分子標的療法から利益が得られる可能性が高く、右側に原発腫瘍のある患者では、ベバシズマブ(商品名:アバスチン)による治療を受けるほうが予後が良好である可能性が示唆される。

 

この試験結果は、「右に原発腫瘍がある大腸がんは、左に原発腫瘍がある大腸がんとは異なる治療をする必要があります」と述べたAlan Venook医師(カリフォルニア大学サンフランシスコ校、本試験の研究責任者)の考えを支持している。

 

しかしながら、本研究でみられた生存期間の延長を説明しうる根本的な生物学的情報がより多く得られるプロスペクティブ(前向き)研究をさらに行なうことにより裏付けられる必要がある、と他の研究者らは注意を促している。

 

医師と研究チームは、シカゴで来月前半に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会での発表に先立ち、5月18日の記者会見で研究結果を報告した。

 

これまでのエビデンスに立脚する

本研究はCALGB/SWOG 80405臨床試験のデータを過去に遡って解析したものであるが、この試験では、患者の大腸がんの一次治療として、よく用いられる2つの化学療法のうちいずれか1つ(FOLFIRIまたはFOLFOX)との併用療法にセツキシマブを投与する群と、ベバシズマブを投与する群とに患者を無作為に割り付けた。試験結果は2014年に発表されたが、両治療群の間で全生存期間および無増悪生存期間に差は認められなかった。

 

しかしながら、結腸内の腫瘍位置が、臨床上および生物学的に重要な検討事項となりうることが先行試験により示唆された、とVenook医師は会見で説明した。しかしその影響については「試験の性質上、また試験の規模が小さいために」不確実性がまだ残る、と付け加えた。

 

CALGB/SWOG 80405 試験から集められた44,000を超える生体サンプル(腫瘍組織および正常組織)は、左の大腸がんと右の大腸がんとの間に認められた差異についてさらに調査するための理想的な材料となった、とVenook医師は述べた。

 

治療法の選択が重要である

研究者らは、KRAS遺伝子が野生(正常)型の大腸がん患者971人について分析を行った(KRAS変異のある患者と比較して、KRAS野生型の大腸がん患者はセツキシマブ療法に反応する可能性が高い。KRAS変異がある場合はセツキシマブにまったく反応しない)。

 

原発腫瘍が左の大腸にある患者は、右の大腸にある患者と比べて治療後の生存期間がかなり長いが、生存期間の延長はセツキシマブを併用した患者においてより顕著に認められた。また、右側に原発腫瘍のある患者では、ベバシズマブを併用した場合のほうが転帰がより良好だった(下表を参照)。

 

腫瘍位置と治療法による全生存期間の中央値の比較

  左側に原発腫瘍 右側に原発腫瘍
全患者 33.3カ月 19.4カ月
セツキシマブ治療群 36カ月 16.7カ月
ベバシズマブ治療群 31.4カ月 24.2カ月

2つの薬剤に関連した生存期間の違いは「劇的な結果」だったとVenook医師は述べた。「研究者の多く、いや全員にとって、本当に驚くべき結果だったと思います。われわれは前もって、選択する治療薬剤によって転帰が大きく違うことはまずないだろうと考えていたのです」。

代用マーカー

また、ASCO総会で発表予定の別の試験の結果から、進行大腸がん(ステージlllおよびlV)でも、左側に原発腫瘍がある患者は右側に原発腫瘍がある患者と比べて生存期間が長い、ということがわかった。

 

両試験から得られた結果は、原発腫瘍の位置が重要だという考えを支持するものであるが、恐らく原発腫瘍の位置は、根底にある生物学的な腫瘍の差異を特定する「代用マーカー」であるだろう、とVenook医師は述べた。

 

いくつかの他の研究が、大腸がんは「どれも同じで一様な疾患というわけではない」という考えを支持している、と医師は続けた。例えば、国際的な研究共同グループは最近、数多くの研究から得たゲノムデータの分析に基づき、それぞれはっきりと異なる分子学的特徴を持つ大腸がんの4つの分子型を同定した。また、ASCO年次総会で発表予定の別の試験の結果から、右側の大腸がんでより頻繁にみられる分子学的特徴が同定された。

 

大腸の長さを考えれば、「大腸内に分子学的な差異があっても驚くにはあたらない」とAustin Duffy医師(NCIがん研究センター、胸部・消化器腫瘍科)は述べた。

 

Duffy医師は、かなり基礎的な要素であり通常は考慮されない[腫瘍の大腸内における位置]を強調したことに対して研究者らを称えた。しかしながら、治療法の選択に関する確固たる結論に至るまでには、大腸がんの位置に関連して分子学的な性質に関するデータがもっと必要である、と主張した。

 

セツキシマブ治療群でみられた今回の結果と結論は、「KRAS野生型の患者群における差異によって主として導かれたものだ」とDuffy医師は述べた。さらに、今回の分析は、より一般的なKRAS変異に限定されるものであり、セツキシマブ治療に反応しないまれなKRAS変異はもちろん、NRASおよびBRAF遺伝子なども含んだ他の変異に関する情報が、’結果に影響を及ぼしていた可能性が考えられるため、今回の全体像を完成させる’のに役立つだろう、と医師は述べた。

 

【画像訳】Venook医師によると、彼が率いる調査チームはCALGB/SWOG 80405試験から得た患者のサンプルを用いて分子生物学的分析を実施しているところで、来月中には完了する見込みである。

 

 

 

原文掲載日

翻訳下川智美 

監修畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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